「ルパンの冒険」

アルセーヌ・ルパンが活躍する痛快冒険物語。
持っているのは東京創元社版で「リュパンの冒険」というタイトルなんですが、「ルパン」の方が通りがいいのでそれでいきます。


事件はとある日の夕方、パリから遠く離れた地方の、豪勢なお屋敷から始まります。
屋敷の所有者である美術コレクターの大富豪とその令嬢、彼女の婚約者の青年公爵、令嬢の侍女、屋敷に仕える召使……彼らが集う中、ルパンの「泥棒予告」の知らせが入ってきたからさあ大変。
明朝パリの大富豪本邸に参上すると書いてあるのだけれど、今夜は長距離電話は使えず、パリに連絡とれないなら自分達が行って阻止するしかないのに屋敷のいい車は盗まれて、残っているのは売り払いたかったボロい車が1台きり。仕方ないので列車を使うという富豪父娘と侍女を残し、公爵がそのボロ車を夜通し運転してパリに向かうのですが、警察と共に本邸に踏みこんだ時は時すでに遅し。多くのコレクションが盗まれてしまった後でした。
しかも邸内を捜査中「盗み損ねた宝冠を今夜いただきに参上する」という連絡がまたまたルパンから入ったものだから富豪を筆頭に皆がてんやわんやに。
さあ、ルパンの予告は達成されるのか、それとも敏腕刑事がそれを阻止するのか。

とても楽しい、いかにもルパンものって感じのお話です。







本作のオススメはまず、カッコいい男その1、シャルムラース公爵の存在があること。
主要登場人物の一人である青年公爵はスタイルが良くスポーツマンで、南極探検に出掛けていくほどの冒険好き。大貴族らしく鷹揚で朗らか、慈悲もあって、非の打ちどころがないほど素敵な男性なのです。
彼の恋愛ドラマは本作の見せ所の一つなのですが、スタイルのよさや動きのしなやかさが読んでいて手にとるように伝わってきて、読者が女なら絶対好きになるだろうというような人なのです。

そしてもう一つのオススメが人間味あふれる可愛いルパン。
まだ28歳と若い彼は、調子こきの失敗のせいで夜通し警官隊に追いかけられる羽目に陥いるのだけど、命からがら逃げ切って、やっとのことで自宅に戻り、自身の乳母にどれほど過酷な夜だったかを切々と述べるのです。
「恐かったんだ恐かったんだ、もうダメかと思ったよー」と。(台詞は翻訳を更に意訳。)

ここのルパンは最高で、可愛い坊ちゃん丸出しなんですが、乳母がこれまた坊ちゃんが大好きで、二人のやりとりがとても面白いのです。
乳母のいつまでも続く愚痴と説教に、「お風呂入りたい」とか「コーヒーおかわり」とか適当にあしらっていたルパンが、ばあやLOVEを表わすところなんて最高。
「でも、ばあやはぼくの言うことをなぜかいつも聞いてくれるよね」
「そりゃあ、ぼっちゃんのことが好きですからね」
「うん。ぼくもばあやのことが大好きだよ。やさしいばあや」ニコッ。(翻訳を更に意訳。)
どうですか、この可愛いらしさ。

愛する女性に正体がバレそうになってしまう時も素敵です。
ルパンだと知られたら嫌われる、絶対絶対嫌われる、と思い込んでいる彼は、彼女の前に堂々と立つことが出来ません。まさしくこの世の終わりのように絶望しきっています。
ところが彼女の愛が変わらないとわかった途端パワー全開。護送寸前だったところを驚異の復活劇で脱出、警察を煙に巻いてめでたく乳母と恋人と再会を果たします。
愛こそ全て。愛が元気の源。愛こそルパンのユンケル。
本作のルパンは本当に愛すべき、可愛らしい、チャーミングな男性なのですよ。


この作品、実はもともと舞台用に書かれたもので、読んでいたらわかるのですが、舞台の情景がありありと浮かんでくるような書きぶりになっています。
ああ、舞台のセットはこんな感じだなとか、カッコいい動き方しているなあ彼、とか、とても想像しやすいのです。

ルパンを初めて読みたいという方がいたら「怪盗紳士」や「奇岩城」を普通は薦めますが、私は本作もいいと思います、特に女性には。
いい男の可愛い魅力が全開ですから、きっと気に入ると思うなあ。
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by teri-kan | 2009-03-29 03:37 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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