「マイ・フェア・レディ」(1964)
2009年 03月 30日
……という書き方をすると洒落も色気もなさそうですが、この映画は最高に洒落たミュージカルです。
花売り娘イライザにはオードリー・ヘプバーン、言語学者ヒギンズ教授はレックス・ハリソン。
ミュージカルが嫌いという方の理由で「突然歌いだすから」というのがありますが、その理由は実はわからないでもないです。「シェルブールの雨傘」を観た時は私もそういう感想を持ちましたし。
でも楽しい時に自然と歌いたくなるというのは、一般人でも普通にあることでしょう。そういうシーンならば「突然歌いだす違和感」もあまり感じないのではないでしょうか。
イライザが「スペインでは雨は主に平野に降る」(The rain in Spain stays mainly in the plain.)の発音を必死こいて練習して、それがきちんと発音できるようになった時の喜びから「The Rain In Spain」の歌に入る場面は最高で、ああいう高揚感はやはりミュージカルならでは。
「The Rain In Spain」も、続く「I Could Have Danced All Night」(踊りあかそう)も、とにかくイライザの嬉しそうな幸せそうな、自分が生まれ変わった喜びを表している姿はとにかく素敵で、見ているだけでこちらも嬉しくなってくるのです。
この映画のミュージカルとしての一番のハイライトは、やっぱりここですよね。
もちろん後半も素晴らしいです。特にオードリーの美しさにはホレボレします。
ドレスが素敵なんですよ。アスコット競馬場での帽子スタイルがポスターなんかで有名ですが、大使館でのパーティードレスも本当に綺麗で、こういうオードリーを見ると、やっぱりイライザ役は彼女でよかったのだと思います。
舞台ではジュリー・アンドリュースが務めていて、イライザは彼女の当たり役だったそうですが、映画と舞台は違う、ということなんでしょうね。
ジュリー・アンドリュース、とても好きですが。
スクリーンに映える美貌、ファッションセンス、でも歌は吹き替え……。
この映画は人気ミュージカルを映画にする際の課題がよくわかる裏事情も持っています。
個人的には「イライザ」という名に慣れるまでに時間を費やした作品。
私にとってイライザといえば、イライザ・ラガンなんですよ。
イライザ・ラガンさんとは「キャンディ・キャンディ」の登場人物で、主人公キャンディを徹底的にいじめまくる鬼のような女の子なのですが、そのあまりのキャラの強烈さに「イライザ=底意地の悪い性悪女」のイメージが完全にこびりついてしまっているのですね。どうやったっていいイメージにはならないのです。
今でも「イライザ!」と言われれば「意地悪!」が思い浮かびます。
小学生の脳へのすり込みの恐ろしさを感じます。