「二つの微笑を持つ女」

モーリス・ルブラン作のアルセーヌ・ルパンものですが、そこまで有名ではありません。
確かにあまり印象に残らないお話で、私も読み返すたびに「どんな内容だったっけ?」と考えることがしょっちゅうでした。最後のトリックが明かされるところなんか「ああ、そうそう、そういえばそういうオチだった」と思い出してガックリするということを3回は繰り返したと思います。
でも読んでいる最中は面白いのです。謎めいた美女も出てくるし。

人気美人歌手殺害と豪華な宝石のネックレス盗難事件にまつわる人間関係が本作の見所。歌手の恋人だった男性と、彼に縁のある女性達、彼らを付け狙う悪党、それらにルパンが絡むというお話で、かなり艶っぽい作品です。

そう、女がタイトルになっているだけあって、女に翻弄されるルパンがここには描かれているのです。(いつも翻弄されてるじゃんというのはなしで。)
ルパンはやっぱり女好きで、ルパン三世を名乗れる人物は世界中に山のようにいるであろうという感想を読後に持つことうけ合いの作品なのです。
そういう伊達男を楽しむならこの作品はなかなか良い。
殺人事件のトリックには「エーッ!」「なんやねん!」って叫びたくなるかもしれないけど。




本作では3人の女性がルパンと関わっていますが、彼女らへの態度を見ていると、ルパンって結構身も蓋もないなと思います。
凛とした女性にはきちんと敬意を捧げ、軽そうな女性にはこっちも軽くイケイケ。ただの遊び相手にはマメではあるが誠意もへったくれもない態度で(その相手の身分を知って最後読者はビックリするわけだけど)、ああ、なんて勝手な男……とか読みながら思うのです。
まあカッコいいからいいんだけど。

夜中にある一室でバッタリ出会った女性への言い寄り方が、なんつーか、おフランス人といいますか、フランス映画を観ているような感じで、そういえば自分のフランス人のイメージってアルセーヌ・ルパンが原点だったよなあなんてことを思い出したのでした。
「子供向けルパン」ではこんな色っぽい場面はなかったけど、フランス男は女性に優しいというイメージは明らかにルパンから得たもの。
ルパン、結構貢献してると思うのですよね。日本の少年少女の、フランス男イメージ向上に。(もちろんその後イメージが崩れたとしてもルパンのせいではない。)


ルパンは(少なくとも母親は)ポワトゥー地方の出身らしいのだけど、ポワトゥーと言われて思い出す色男というのが、大変古い人ですが、アキテーヌ公ギョーム9世ことギョーム・ド・ポワティエ。アリエノール・ダキテーヌのおじいさん。
ウィキに出ている評伝がなかなかふるっていてよいので、ちょっとここに転載させてもらいます。

「ポワティエ伯は世界で最も上品な人物である、また最も女性を惑わすのに長けた人物であり、騎士の才能を秘め、勇ましさの出し惜しみをしない」

まんまルパン(笑)。
まあギョーム9世は公で伯で詩人で、ルパンは詐欺師で泥棒なんだけどさ。

でもこれがある意味理想的なフランス男像かもしれません。
恋多き勇気ある男。
ううーん、カッコいい。
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by teri-kan | 2009-04-09 11:21 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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