「遅かりしシャーロック・ホームズ」

「怪盗紳士ルパン」の最後を飾る短編で、とうとうあの方がお出ましになってしまうという問題作です。
でも彼は事件そのものにはあまり関係ないので、読んでてあまり嫌な印象は受けません。タイトル通りの到着ですから、いってみれば顔見せのような感じです。

むしろ読者が驚くのは以前の作品のヒロインとルパンが出会ってしまうこと。しかも只今絶賛泥棒中の場面で。
この時の二人の気まずさは読んでて手に取るようにわかって、なんかこっちも辛いのですよね。ルパンも彼女も可哀相で、「ああ、なんて神様は意地悪なんだ」と思うくらいに。


この二人は、お互い密かに好意を持っていたのに、ルパンが泥棒のため上手く進展しなかったというケースの最たるものです。彼女は非常に真っ当なモラルをお持ちの方で、しかし情に厚く、ルパンを執拗に非難したりはしません。好ましいと思っていた男性が有名な泥棒だったことにただ胸を痛め、距離を置いてしまうという女性です。
そしてルパンは、そういう女の人が基本的に好きなんだと思います。クラリスじゃないけれど、慎ましくて普通の善悪の価値観を持っている女性が。
でもそれってどう考えたって上手くいくはずのない組み合わせなんですよねえ。
ルパンも救われない男です。



ルパンとホームズの初対面の場面は嫌いじゃありません。変装した姿ではなく、自分そのものを写し取られたと自覚するルパンがいい。天才は天才を知るってやつです。
本当に、ここで終わってくれていたら何の問題もないのになあ。

とはいえルパンがメジャーな歴史的人物(と言っていいでしょう)になった今だからそういう風に思えるだけであって、当時はホームズの手も借りたい状況だったのかもしれません。
名探偵対大泥棒の対決は、やっぱり人気があったのでしょうから。
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by teri-kan | 2009-05-14 10:01 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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