「天使と悪魔」

只今映画が公開中のダン・ブラウンの原作本。
映画を観にいくにあたって急遽原作を読みました。

本屋に置いてあったアンケート結果があざとくて、あれのせいでどうしても「ダ・ヴィンチ・コード」と比較して読まざるをえなかったのですが、一体あのアンケートは何だったんですかねえ。ああまでして「ダ・ヴィンチ・コード」を貶めないと「天使と悪魔」の映画を見に来てくれそうな人がいなかったんでしょうか。
「ダ・ヴィンチ・コード」の映画は確かにつまらなかったけど、あのアンケートはないわ。商売根性が見え透いていて不愉快の方が勝る。

で、結局本作の感想も比較した感想になってしまうのです。








アンケートで「天使と悪魔」「ダ・ヴィンチ・コード」、どちらも読んだ人の82%が「天使と悪魔」の方が面白かったと答えているのだけど、だてに「ダ・ヴィンチ・コード」はブームになったわけじゃない。ページをめくらせるスピードは「ダ・ヴィンチ・コード」の圧勝。眠らせてくれない作品はやはりブームになった方です。

まず冒頭の殺人現場が違う。一般人になじみの薄いセルンと誰もが知ってるルーブルじゃ読者の食いつき方が違う。しかもセルンは重要場所とはいえあくまで本作の舞台はバチカン。謎の拠点そのものだった「ダ・ヴィンチ・コード」のルーブルとはその重要度も違う。

本作で科学は大きな割合を占めるけど、冒頭のセルンの場面はちょっと長すぎ。あそこのスピード感のゆるさは結構致命的で、内容は面白かっただけに残念。
それならルーヴルで主人公がすぐ危機に陥ってしまう方が断然面白く、追われるスリルにハラハラドキドキして印象的だった。この辺りの出来は絶対に「ダ・ヴィンチ・コード」の方が上でしょう。

解明する謎そのものの違いもある。「天使と悪魔」では四百年前の出来事が元になっているけれど、「ダ・ヴィンチ・コード」はイエスそのものに関わる謎。大嘘だろうが大ホラだろうが、ロマンの大きさは比較にならず、多くの人が心惹かれるのは、そりゃあキリスト教二千年の謎の方でしょう。

メロヴィング朝に脈々とイエスの血が伝えられ……って、メロヴィング王家の血まみれドロドロ知ってたら「ありえん!」と誰もが叫ぶであろう展開でも、作り話としてはこれほど面白いものもなく、そういった意味で「ダ・ヴィンチ・コード」は一級のエンターテイメント作品なのです。

あれより「天使と悪魔」の方が面白いと宣伝するのは、まあ悪くはないけど無理がある。販売数はある意味正直。せっかく「天使と悪魔」も面白かったのに、あんな化け物ベストセラーとああいう比較の仕方しちゃいけないですよ。あれじゃ「天使と悪魔」が気の毒だ。私のような天邪鬼だっているんだし。


だけど映画にするなら本作の方が絶対面白いだろうなとは思う。
なぜなら犯人が非常に信念の強い人だから。その辺りの二転三転や、登場人物の思惑と立場の入れ変わりがとても巧みだから。
そして何より非常に映像的。読んでてダイナミックな画面が簡単に脳裏に浮かんでくる。
というより「ダ・ヴィンチ・コード」って映画に向いてないよね。あれはやっぱり本ならではですよ。逆に「天使と悪魔」はとても映像向き。こっちを先に映画化すれば良かったのにと思うくらい。


ところでこの主役、トム・ハンクスで大丈夫なのかね。本作のラングドンは45歳なんだけど、彼、なんかものすごいアクションやってるんですけど。

カメルレンゴがユアン・マクレガーなのは非常に楽しみ。彼の演技が一番の見所だと思うのですが、さあ、どんなサイケデリック演技を見せてくれるのか。



映画を観て、また改めて感想書きたいと思うのですが、過ぎたるは及ばざるが如しというか、究極のテロリストのお話というか、目的は手段を正当化しないんですよね、やっぱり。
何事もバランス感覚だよなあと、最後はその辺に辿りついた作品でした。

そういった部分では本作の方が深みがあります。ここに描かれている問題は今に生きる人皆に関わる問題でもあるから。
それでいながら立派なエンターテイメント作品。
確かに面白い作品です。




[PR]
by teri-kan | 2009-05-23 23:24 | | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 「ルパン最後の事件」 「謎の家」の序文とエピローグ ... >>