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アレグザンドラ・バジレイエフ

ロシア出身の亡命貴族。
もしかしたらルパン作品中最も革命の過酷さを実感している人物で、その体験が人格形成に大きく影を落としていると思われる女性。

ルパンの情婦としてヴィクトールと渡り合い、彼らと共に犯行現場に同行するなど行動力のある人ですが、それも過去の体験からくる破滅志向(っぽいとこがあると思う)によるものであって、かなり深い闇を抱えている印象を受ける。

彼女が登場するたび感じる、あの諦念の雰囲気は独特ですね。男性を惹きつける要素としては、確かに十分だと思います。






さて、本作に現れる “ルパン”はあまりに情けない男で、ちょっとは頭も回るみたいだけど、もう手際は悪いわ、カッコつけなだけでカッコよくはないわ、かなり残念な男です。
そんな彼のせいで窮地に陥るアレグザンドラですが、まあルパンならやっぱりしっかり助けてあげられるわけで、最後の最後でルパンの真価を知った彼女にはなんとも幸運な結末でした。

ていうかねえ、もうまるっきり詐欺ですよね。騙される方も仕方ないとはいえもっとしっかりしてくれよと思わずにはいられません。
そして本物としては、そりゃ腹立っただろうなと思います。
ルパンの名を語って盗みを働くこともそうだけど、そんなつまらん男を「ルパン」だと思い込んで女が慕うという、その情けなさときたら。
そのあんまりな過小評価に屈辱で震える色男ルパンというのは、こっちとしてはかなり笑えるんだけど、その分偽者への仕打ちは容赦なく、そりゃ成りすました本人が悪いんだけど、ありゃプライドズタズタですねえ。警察に連れて行かれる時の彼の心はほとんどボロ雑巾だったでしょう。



アレグザンドラは、まるでアイドルに憧れるかのようにルパンに憧れてたんですね。故郷で大変な思いをした彼女には、社会を超越した存在を慕う理由が確かにあって、ルパンはまさしくそんな英雄だったのでしょう。

恐怖を感じるのが好きな彼女は、失神寸前まで怖い思いをすることに快感を覚える性癖があるのだけど、最後ルパンと付き合うようになってからもそれは変わらず、その辺ちょっとルパン的には困りものだったかもしれません。
まあルパン自身まともな人じゃないし、そう考えれば変わった組み合わせの二人といえるのかも。
あまり長続きするカップルには思えないですね、残念ながら。



本作のルパンの戦いの原動力となった女性の庇護者としての矜持については、いろいろと思うことがありました。特に最後の台詞は興味深い。
「不幸な愛情生活を強いられている貞淑な女」への優しさは格別なんですね、彼。逆に言えば不幸を女に強いている男への憤りはハンパじゃないということで、そういう正義感は面白かったです。

ただ、それを女性達に語ってしまうところが笑っちゃう。
自己満足で終わってしまいそうなそれらが、確かに彼の語った通りになっているところは人徳のなせるわざなんだけど、全然奥ゆかしくないところがやっぱりルパンだなあって感じです。
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by teri-kan | 2009-07-16 11:09 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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