ベルトランド・ゲルサン

「バール・イ・ヴァ荘」の登場人物。
カトリーヌの姉で、夫を何者かに殺されてしまった若い未亡人。

ルパンに身辺を守ってもらっているうちに、ルパンに惹かれてしまうという女性です。






ちょっとした疑問なのですが、フランスでは初対面の女性にとりあえず「マダム」と呼びかけることが礼儀だったりするのでしょうか。
ルパンは冒頭でカトリーヌを「マダム」と呼んでいるし、「二つの微笑を持つ女」でも、初対面のアントニーヌに向かって「マダム」と声をかけているのです。二人とも子供っぽい雰囲気の女性で、ルパンもそれをわかっていたというのに。

ルパンの言う「子供っぽい」は多分色気がないってことだと思うのですが、そうはいってもやっぱり美人だからですかねえ。美人には男がいるはずだから、とりあえず「マダム」と呼ぶことにしてるのでしょうか。
まあともかく、マドモアゼルよりマダムの方が気が楽なんだろうなあと思うのは、最後ベルトランドとだけ関係を持ってしまったことからもわかるし、直後のベシューとのやり取りで「カトリーヌの純潔を守った自分は素晴らしい!」みたいな言い方してるのからして、やはりルパンも未婚女性には基本手が出しにくいのだと思います。

片方が既婚者で片方が未婚という姉妹の組み合わせは、こう考えると上手く出来ていますねえ。


で、そんな人妻、もとい未亡人ホヤホヤのベルトランドですが、ルパンと彼女との仲が急接近したのはルパンが彼女の名誉を秘密裏に守ってあげたからで、特にベルトランド側は結構ベタベタ、カトリーヌが慎ましいのと比べると、さすが未亡人って感じでした。
ただ、それは自分を助けてくれるルパンが純粋に大事だったからで、カトリーヌがただ犯人を怖がっているだけなのに対して、ベルトランドは自分の罪を自覚している分とても必死。カトリーヌは事件が解決さえしてくれれば誰がそれを行おうが基本的に構わなかったと思うけど、ベルトランドはルパンによる解決しか自分が守られないことをわかっているし、彼女のルパンへの想いはそういった「期待」やら「恩」やらいろいろなものが混じっていて、カトリーヌがルパンの言うこと何でも聞いているのとは違う種類でルパンに服従せざるをえないのです。

この三人がお互いをそれぞれ愛していながら、なんで誰も自分から行動を起こさず妙に綺麗な三角関係を作り上げてしまったのかというと、ようするに男女関係で一番フリーなベルトランドが受け身にならざるをえなかったからでしょうね。夫のいなくなった彼女が本来なら最も告白しやすいはずなのに、ルパンが事件を調査しているという今の状況を一番崩したくないのが彼女だという、このジレンマ。
カトリーヌの方はといえば一応婚約者がいるし、簡単に鞍替えする軽い女と思われるのもなんだし、姉妹二人はそんなこんなでお互い意識しないままお互いを牽制し合って、一方でルパンはといえば、とりあえず現状維持のままでいいかと、深く考えることを放棄している(笑)。

さすがに八方美人の彼も、今回は目の前に二人並んだ状態でどちらかにいい顔をするということが出来なくて、恋愛については完全に思考停止。フェロモンの発散を抑えているとしか思えない態度に終始します。
最後もベルトランドから誘われたからああいう風になったわけで、なんかねえ、どうしちゃったんでしょうか、ルパン。そんなにもどちらともが好きだったのでしょうか。


二人を同じ大きさで好きだったのか、二人セットで好きだったのか、ルパン自身は彼女達とどうなりたかったのか、そもそもどうにかなりたいと思っていたのか、よくわからないままになってしまったのは残念。
姉妹の間で悩み悶えるルパンの姿がもっと見たかったなあとどうしても思ってしまうので、綺麗に立ち去って行った彼女達には「もっと粘ってくれたらいいのに」と言いたいくらいですね。

で、結局次のように思ってしまうのです。
「バール・イ・ヴァ荘」は恋愛小説というよりも、ベシューとの男の友情小説だよなあと。

やっぱり「バール・イ・ヴァ荘」って変わった作品だと思います。
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by teri-kan | 2009-08-07 12:13 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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