「権力の日本人 双調平家物語ノートⅠ」

橋本治著(講談社)。

先月発売された橋本治の「院政の日本人 双調平家物語ノートⅡ」の第一弾がこれ。
数年前に一度読んだのだけど、「院政の日本人」をより楽しむためこの度急遽再読。

かなり分量があって、再読となると「院政の日本人」をかなり待たせてしまうことにもなるので気が焦りましたが、もう一度頭に入れ直しておかないともったいないと思ったのですね。
で、やっぱり読んで正解。結構忘れてたし、それに二度目でもやっぱり面白い~。


壇ノ浦で源氏に打ち滅ぼされる平家、「平家物語」で悪人と断罪される平清盛。
一体彼らは何をしたのか、清盛の罪とは何か。

その疑問を解くため、橋本治の筆は清盛を罪人としたがる当時の社会構造、当時の人々の考え方を考察し、そうなるに至ったそれまで政治状況を解明していきます。そしてその政治はどうやって作られてきたのか、源平の時代を呼び起こした院政の時代はどういうものだったのか、では院政が始まる原因となったその前代はと、考察を重ねて更にその前代へ、またその前へと、清盛の時代から摂関政治全盛の時代、平安時代初期、奈良時代……といった風にどんどんさかのぼって論が展開されるのです。
もーこれが面白いのなんの。

この人は他の作品でもそうなんですが、歴史上の人物に血を通わせる技がすごいですよね。
こういう家族構成でこういう事をしたのなら内心ではこういう葛藤があっただろうという、その筋道の立て方が人の感情として無理がなく、すんなりこちらにも理解できるのです。イキイキとして人間的で、事典や系図上の人物にすぎなかった人達の呼吸や脈打つ感じが、ありありとこちらに伝わってくるのです。

歴史は人が作る。というより、人の営みの積み重ねなんだなあと、つくづく感じられて本当に楽しい。



かくも膨大で面白いこの「権力の日本人」、副題に「双調平家物語ノート」とあるように、これは橋本治の代表作の一つ「双調平家物語」の背景をより詳しく解説している本です。だから「双調平家物語」を読んでから読んだ方がわかりやすいことは確か。
でも読んでいなくても「平家」が好きな人なら全然OKだし、「平家」に興味がなくても歴史好きで「なんで日本社会ってこんなに誰も責任をとらないんだろう」とか疑問に思ってる人もOK。

視点が一風変わっているので、もしかしたら合わない人もいるかもしれないけど、日本の歴史、日本の政治、日本の権力者に不思議を感じている人なら誰でも「おお!」と思える名著だと思います。

そして私はこれから「院政の日本人」。
楽しみだー。
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by teri-kan | 2009-08-10 11:44 | | Comments(0)
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