「修道士ファルコ」
2009年 08月 24日
舞台は中世ドイツの修道院(注:ちょっとだけスペイン)。
日々お勤めに励む主人公と彼をとりまく修道士達という、なんだか固そうなキャストですが、ストーリーは全然堅苦しくなく、個性豊かな彼らが織り成す物語に、つい笑顔になってしまう作品です。
小心者の修道院長に功利的な副院長、精神が半分あっちの世界に行ってる老修道士、美意識丸出しのうるさいヤツに俗世の習性が抜けない元警察(?)の同僚……皆愛すべき人達なのです。
愛すべき最大の人物・主人公ファルコは、元は素晴らしい剣客で、その腕を買われて修道院をめぐって起こる難事件に幾度も最前線で対峙する羽目になります。もちろんその都度反省し懺悔するのですが、次々事件が起こってまたもや剣を取ることに。
そんなこんなで彼はいつまでたっても彼が目指す「心安らかにお勤めする」という日々からは遠いところにいて、なんだかいつも悩んでいます。でもあるがままに全てを受け入れ、きちんとそれらに向かい合う彼はとても好人物。読者だけでなく物語中でも、修道院内でも俗世でも、彼は妙に人に慕われるのです。
好いてくれる人の中で最も重要な大物は某王国の王様なんですが、実はこれがあるためこの作品はより楽しむために「アルカサル-王城-」を先に読んでいた方がいいという難点があります。
もちろん読んでなくても最高に楽しめるけど、読んでいたら倍楽しめるのは間違いない。
今もこの二つの作品は微妙にリンクしてますのでね。
「アルカサル-王城-」は長いけど大傑作なんで、「ファルコ」とセットで楽しんだら良いと思います。