「院政の日本人 双調平家物語ノートⅡ」

橋本治の「権力の日本人」の第二弾(講談社)。
前作が武士の登場した時代から遡って奈良時代までを扱ったのに対して、本作は古代から大化の改新、そして院政期以降について書かれています。

相変わらず大変な分量です。そして大変にわかりにくい。
院政期から鎌倉幕府開幕まで、わかりにくい時代をわかりにくさそのままに、わかりにくく説明してくれている。言ってみればこんな感じでしょうか。

わかりにくい時代をわかりやすく説明しようなんて気、この人にはさらさらないんだろうな。院政期の朝廷がグダグダなら、そのグダグダ加減そのままにグダグダと語ってくれるものだから、とにかくこっちも何やら複雑だがとにかくグダグダしてたのだけはわかった、という気分になれる。
頼朝はちんたら動いていて、平家もちんたらしている。細かな成り行きがいろいろあるとしても、とりあえずあの時代は実はちんたらしていたんだということを、読んでいてもう骨身に沁みて感じられる。
なんといいますか、橋本治のあっちへ行きこっちへ行きの書きっぷりが、あの時代の空気感をそのままに伝えてくれているかの如くなのです。

それでいながら反面非常にわかりやすい。これまで不勉強なせいもあるけれど、本作のおかげであの時代の流れを私はやっと理解することができました。
源平の時代の出来事はそれなりに知ってはいたのですが、一つ一つのエピソードが独立してしまって、関連性や時代の流れの中での位置づけとなると、実はよくわからないといったものが多かったのですね。
その点がかなりクリアになって個人的にはとても充実。いいもの読ませてもらったなーという気持ちです。

院政の内実もやっと理解できました。
元々平安時代自体は好きなのだけど、院政期はどうも好きになれなくて、男色にまみれていたことをどう理解していいのかわからなかったし、待賢門院を初めて知った時なんて(高校生の時だったかな)かなりショックを受けたものですよ。あれは乱れているのにも程がありすぎる。
そんなこんなで、これまで私にとってあの時代は、立ち入る気にもなれないほど欲にまみれたグチャグチャの、わけわからん時代だったのですが、橋本治はその辺さすがで、男同士のつながり方があれしかなかった時代というものを、私なんかにもわかるように懇切丁寧に説明してくれました。文書的におおっぴらに出来ない愛を行動原理にして皆がてんでばらばらに動いていたのだから、そりゃわかりにくいはずですよ。全体像を掴もうなんて至難の業。

日本人、変な社会を作ってしまったものですねえ。



本作を読んでいて、なぜ私が日本史の中でも古代から摂関政治全盛期までが好きなのかつくづくわかったんですが、結局本のオビに書いてある通りなんですね。それ以降は歴史の表舞台に女は立てないんです。まさしく男の時代になってしまうんですよ。
娘を后にして天皇を傀儡とする制度が良いとはいわないけど、その政治システムに女は不可欠で、だからこそ平安時代は女性が賑やかでした。「枕草子」も「源氏物語」も出来たし。
女の天皇を輩出した時代は言わずもがな。やっぱり私としては女が自分で行動している時代の方が好きだなあ。

でも男は男で大変だったんだということが本作でよーくわかったんで、これを機会に中断している「双調平家物語」をまた読み始めようかと思います。
実は三分の一ほど残ってるんですよね。そこからが正真正銘「平家」の物語だというのに。

一方で最初から読み直したい気分にもなっていて困る。
実は本作での中大兄皇子の評価にカンドーしちゃって、今無性に彼に会いたいんですわ(笑)。

いやあ、天智天皇、というか中大兄皇子、すごいですよ。
「院政の日本人」というタイトルで、院政期から源平時代の人物をあんなにあれこれ書いてくれたのに、一番印象に残ったのは中大兄皇子という、なんともいえないこの状況。



うーん、まあでも先にやっぱり残り三分の一かな。
後白河法皇の変さ加減を味わわなきゃね、うん。
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by teri-kan | 2009-09-03 15:02 | | Comments(0)
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