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「ルパン」(2004) その2

この作品については一度書いた事があるのですが、ルブランの原作を読み込んだ後に観たら感想も変わるかもと思い、先日BSで放送されたものを再鑑賞。
でもやっぱり変わらなかったですね。ていうか、ますます「こりゃあかん」という気持ちになりました。

致命的に暗いんですよ。なぜ暗いのかは「カリオストロ伯爵夫人」でも触れたのですが、殺人の扱いがきつすぎるのです。
21世紀の人間が観ても楽しめる映画にしようという心意気の表れではあるのでしょうが、カリオストロのあの殺人鬼ぶりは、個人的には結構ひく。あの短刀での殺し方は「813」をイメージしてるのだと思うけど、あの犯人をカリオストロに取り込んじゃうのは、ちょっとやりすぎのような感じがします。

クラリスも21世紀向けにしてるんだろうけど、本来の彼女は、それこそ「カリオストロの城」のクラリスのような女の子なんだよね。エヴァ・グリーンは売れてる女優さんだし、彼女を使いたかったというのはあるんだろうけど、キャストそのものがやっぱり違うという感は否めない。

パパはとんでもない極悪人だし(涙)、ママははっきり言ってルパンのせいで死んじゃうし、妻もルパンのせいで殺されちゃうし、息子は立派なテロリストだし、映画のルパンの人生は悲惨極まりなく、こんな目に合うほどの何を一体彼はやってしまったのだ?と問いたいくらい。

原作のパパはもっと小者で、ルパンにとっては頑丈な体を自分に与えてくれた人といった程度の人でしかなく、大事なママは最期を楽に迎えられるように子供ながらお金を工面してあげた。妻も運悪く出産で死んでしまうまでは幸せに過ごさせてあげたし、息子は一人でも立派に育った。
本来のルパンはこんな人生で、パパと息子はともかく、ママと妻には決して悲しい思いをさせないよう、それだけは最後までやり遂げたのです。
だからこその女の庇護者でもある。ていうか、これがベースにきちんとないと、その後のルパンの活躍は有り得ない。

盗みや冒険の改変はともかく、肝心要のルパンの家族背景をこんなにも変える必要があったのか、そこのところは大いに疑問。
これじゃ続編は無理だし(まあ、はなから作るつもりはないのだろうけど)、こんな人生背負ってる男じゃ恋愛だって荒んだものになるでしょう。冒険のたびに真面目な恋愛を楽しくやってるルパンなんてとても描けないと思います。言っちゃなんだがよっぽど三世の方がアルセーヌ・ルパンらしいよ。



どうしてこんな救われないお話の映画にしたのか、あまりに不思議なんで自分なりに考えてみたのですが、これは勝手な推測ですが、以前のルパンのTVドラマがあまりに明るくて軽薄だったからかもしれないなあという気が、ちょっと最近してきています。

ルパンのTVドラマ、昔スカパーで観たことがあるのですが、結構残念な作品なのですよ。あまりに残念すぎてあまり覚えてないのがこれまた残念なのですが、印象としては軽薄って感じだったんですよね。で、その反動で映画はあんな真面目な、ていうか暗いお話にしたのではないかなと。
まあ勝手な推測ですが、私としてはドラマと映画の中間くらいのルパンが良かったなあ。

でもこの映画もルパンだと思わなければ結構いけると思います。
変装の得意な違う誰かだと思えばいいのではないかと。で、小ネタはルパンシリーズから拝借、みたいな感じで。

そう考えればいいのだと思います。
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by teri-kan | 2009-10-28 10:25 | フランス映画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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