「恋のめまい 愛の傷」

一条ゆかりはさすがに上手い漫画家なので、どの作品もとても面白いのですが、紙面から作者の顔が見えすぎる作品はちょっとなあと思う事があります。
母子ほどに年齢の違う少年との絡みとか、芸能界などの業界モノとか、最後にその漫画のストーリーが本になっちゃうオチとか、そんなパターンが目に付きすぎてしまうと、面白い分残念な気持ちも起こったりするのです。

「恋のめまい 愛の傷」は、そういうのと比べるとちょっと異色。
事の発端こそ女子大生と男子高校生の「女が年上」恋愛パターンだけど、本作のテーマはただただ「理性ではどうしようもできない感情をどうすればいいのか」だけで、これを丹念に描くために他のあらゆる設定をシンプルにしているところがかなり好印象の、とても誠実な作品。

本作の説明そのものは超簡単に出来て、過去に仲を引き裂かれた男は婚約者の弟だったという、ただそれだけで足ります。周囲の人間は皆普通にいい人で、他人の悪意などといった外部要因で主人公に変化を与えるといった安易な手法はとらず、とにかく婚約者(のちに夫)とその弟(元恋人)との関係性を時間の経過と共にじっくり描き、主人公がどのように揺れてどのように苦しむか、それだけを丁寧に丁寧に描いている。

読者が楽しむのはそういった主人公の感情の揺れ具合“だけ”であって、それに共感できない人はもしかしたらこの作品はつまんないかも。
私個人はいちいちうなずけましたが。

止められない感情って、本当に自分じゃどうしようもできないものですからねえ。ダンナに対して誠実であろうとする心も理解できるし。
でも、あれはしんどいだろうなあ。



あの展開じゃ破綻しかあり得ないとわかっていても、やっぱり破綻は悲しいものです。でも最後のスッキリ具合はとてもよくわかる。

ていうかですね、今回久々に読み返してみて思ったのは、「アンタまだ若いんだから、兄とも弟ともダメになったって全然ダイジョーブ!いくらでもやり直せる!」だったんですよね。
昔は「弟が戻ってきたら今度こそ弟と……」とかウットリ思ったはずなんだけど、改めて読み返したら、なんかオバサンみたいな感想が浮かんじゃって、我ながらそこは悲しかったりしました(笑)。

でもお話自体はやっぱり素敵です。
器用じゃない女の、理性と感情と本能のせめぎ合いの物語って感じ。
主人公も作品自体も誠実です。
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by teri-kan | 2009-11-04 10:22 | 漫画 | Comments(0)
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