「風の城砦(カスパ)」
2009年 11月 27日
この人の作品の中では地味な存在かもしれませんが、内容は華やかで勢いがあって、作者の本領発揮といえる作品です。
舞台は19世紀末のフランス領アルジェリアとパリ。
古くから続くフランスの伯爵家、アルジェリアの部族長の一族、中世のオカルトと近代の科学技術……興味深いネタ満載の作品です。
主人公が例に漏れず強烈で、主人公の家族も皆揃って強烈。バイタリティがあるというか、作品そのものもイキイキしていて、厚めの文庫本2冊の長さですが、一気に読み進められる内容になっています。
本作のテーマは、伯爵家に続く「呪い」と、それに打ち勝とうとする「人の意志」の闘いにあるのですが、何百年にもわたる呪いがテーマな分、とてもオカルト色の強いお話になっています。
個人的にはちょっと強すぎて、特に後半部分の近代とオカルトの比重は、もう少しオカルトを少なめにした方がいいような気もしました。
あまりネタバレになってもいけないので詳しくは書かないけど、人の寿命にはやっぱり限りがないか?
とはいえ話自体は大変面白い。冒頭から一気に読者を引き込む力の強さはさすが河惣益巳。
ラストはちょっと駆け足だけど外伝がちゃんと補ってるし、ページ数に見合った、いや、それ以上に充実の内容だと思います。
費用対効果というか、ページ数対充実という意味では結構いいところいっていて、実は河惣作品では「ツーリング・エキスプレス」とかよりこちらの方が人には薦めやすい。
ただオカルトのバランスがちょっと悪いのと、恋愛モノではないところが評価が分かれるかなあ。
多分その辺がいまいちこの作品が地味な理由なんでしょう。
上手くまとまってるし、とても面白いんですけどね。