「インビクタス 負けざる者たち」(2009)
2010年 02月 09日
主演はモーガン・フリーマン。
マンデラ大統領を主人公に、1995年のラグビーワールドカップ南アフリカ大会での南ア代表の奮闘を描いた物語。
白人と黒人の共生を信念としたマンデラ大統領と、彼の信念の象徴となったラグビーチームが行き着いた先にあったのは、南アフリカ国民として、白人とも黒人とも喜びを分かち合える幸福でした。
ストレートに感動できる作品です。クライマックスの試合のシーンはすごかった。
映画らしいよく出来たお話と言いたいところですが、なんとこれ、実話なんですねえ。
よくここまであざとくなく感動できる映画に仕上げたものです。
南アフリカについてある程度の知識が必要な映画だと言えるかもしれません。私くらいの年代だとあの国がスポーツの国際大会から締め出されていた事をリアルタイムで知っているし、当時の南アのラグビー事情もある程度察することができます。この映画はアパルトヘイト撤廃後のお話だけど、だからこそその知識がないとわかりにくい部分もあるし、若くて当時のことをあまり知らない方は、予備知識を頭に入れた方がより楽しめるのではと思います。
個人的には、イーストウッド風ともいうべき、あの心がヒリヒリするような、なんとも言えないやるせなさがなかったことが良かったです。
そんなに多くこの人の作品を観てるわけじゃないけど、辛いんですよ、あれ。絶対ただで終わる映画じゃないと思って、観る前にものすごく身構えてしまうのです。
本作はそういうのがなくて、あきれるくらいシンプル。
でも素直に喜びに浸れる。
マンデラ元大統領への敬意の表れかな。
彼の信念を描くことが第一だったんでしょうね。
にしてもマンデラはすごい。ああいう人が出現したというのは、南アフリカにとって幸運だったのでしょうが、その分彼が引退した後の混乱もまた必然だったのでしょう。
いや、彼がいようがいまいが、今の状況は規定路線だったのかな……。
でもだからこそこの映画に描かれてるような幸福を経験できたことは大きなことのように思います。これを実現させたマンデラは、やっぱり偉大ですよ。
今年は南アフリカでサッカーのワールドカップが行われるけど、治安の悪さは多分95年の比にならないくらいだろうし、開催国として良い成績を残すというのもあるけど、何より無事に大会を終えて欲しいという気持ちがあります。
そしてラグビーでいうなら、日本もワールドカップ開催が決まってるんですよね。
実はこの映画の中でもラグビー関連で日本が話題に出るんですが、これが結構ツラくて(苦笑)、かなり不安になるのです。
人種対立や民族の対立を解決するために何が必要かを考えさせられると同時に、日本人として日本のラグビーについても考えさせられる、なんとも多重的な感慨を持たされる映画であります。スポーツと政治と人々の生活との分かちがたさを改めて思いしらされたし、英雄の必然性についても考えてしまいました。
何かを成し遂げるために必要な流れというかうねりというものは、なんとなくという中から生まれてくるもんじゃないんですね。当たり前のことだけど、それを生み出す強いパーソナリティが必要で、マンデラはその最たるもののように思えました。
あの境地に達するまでの彼の苦難を思うと、軽々しく言葉を発することはできないのですが、にしても本当にすごい。
それを見事に、あくまで自然体で演じたモーガン・フリーマンもすごい。
希望が持てる映画ってやっぱりいいですね。
良い時は長くは続かないものだけど、それを経験しているのとそうでないのとでは雲泥の差があると思うし、それは努力次第で手に入れる事が出来るのだと知ることは、やはり幸せなことなのだと思います。