「天平の三姉妹 聖武皇女の矜持と悲劇」

遠山美都男著。中公新書。

歴史的にあまりにもマイナーすぎるからでしょうか。
感想を探しても、ネット上にほとんどありません。
専門に勉強している人しか興味がない題材といえばそうなのかもしれないけど、でも面白いんですよー。三姉妹の一人・孝謙天皇はマンガにもなってるし(確か里中満智子が描いていたような……)この紹介文↓を読んだだけでそそられる人、絶対いると思います。

「天皇として権力を振るった阿倍内親王。大逆罪に処された井上内親王。息子たちの謀反に連坐し、流罪にされた不破内親王。凄惨な宮廷闘争の背景にあったのは何か?」

ね、面白そうでしょ?



ここに描かれているのは君主の権力闘争です。将軍職を争うとか関白職を争うとか、そんな国家の№2を競うんじゃなくて、権威と権力両方を持っている本当の支配者の地位をめぐる争い。
昔の天皇の力は強大なんですね。その分おびただしい血が陰謀と共に流れていく。
例えば桓武天皇は多くの業績を残した天皇ですが、それこそ彼の周囲は陰謀だらけ。怨霊に気をつかってばかりで、さぞかし大変だったろうと想像します。

読んでて面白いと思ったのは、天皇になるための資格というか、確固たる理由みたいなものを、皆それぞれの天皇が必死になって求めているところ。代々がそうやって理由づけをしていって、それに乗っかって実績を作って、その実績がまた確かな権威になるという、天皇の正統性を確立していこうとする様は興味深かったです。
そこのところの試行錯誤の中で当然無理や軋みも生まれて、この本にとりあげられた三姉妹は、まさにその軋みに翻弄された人生を送った人達なのでしょう。

やっぱり発端は草壁皇子の早世なんでしょうかねえ。
ただ一人の幼い孫を皇位につけたかった持統天皇の祖母愛が、天皇の資格云々のゴタゴタの始まりといっていいのかも。



聖武天皇はねえ、偉大か変人かどちらかというか、あんな後にも先にもない大仏を造ってるあたり、絶対フツーの人じゃなかったと思うんだけど、この作品を読んでると結構立派な人っぽい感じがしますね。
孝謙天皇(阿倍内親王)も、どうしても道鏡との恋愛のイメージが強い人なんだけど、本作ではすごく真面目な理想主義の人って感じ。

取り上げられることの少ない井上内親王と不破内親王について詳しく知ることができたのはよかったです。特に不破内親王。本作の解釈通りの人だったかどうかはともかく、大変な人生で、読んでて溜息しか出てきません。



結構面白かったです。
この時代の話は今度ドラマも放映されるけど(石原さとみが阿倍内親王)、どういった解釈のもとに物語が作られているのか、とても楽しみ。
絶対ドラマに向いてると思うんですよねーこの時代。
これからもいろいろと作ってもらいたいな。




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by teri-kan | 2010-02-10 10:57 | | Comments(0)
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