「BASARA」その8

これまで繰り返し話題になっているようなんですが、どうやら「BASARA」最大の謎は「浅葱は誰の子なのか」ということらしい。

いろいろな説がとびかって、その数の多さに感心することしきりなのだけど、信憑性のあるものないものいろいろある中で個人的に「これだ!」と思った説について、ちょっと私見を書いておこうと思います。
その説は某掲示板を見るまで全く思いもよらなかった説なのですが、今ではそれしか考えられなくなってしまいました。

できれば浅葱の役割について書いた「BASARAその5」の後半部分を先に読んでから読んで下さい。

では、「僕は誰?僕は僕」の浅葱の出自についてです。







そこら辺から拾ってきた子、国王と妃の子、国王と銀子の子、淡路の太守と銀子の子、柊と銀子の子、柊と別の女との子、ナギの子(!)、なんかもういろいろいろいろ面白いくらいいろんな可能性があるらしいのですが、今となっては私は断然この説を推す。

「浅葱は揚羽の実の弟」

もうこれしかないでしょう。
だって彼らには共通点がありすぎるくらいある。

まずアイデンティティに悩む人物としての共通点。揚羽も浅葱も自分自身を確立するのにとてつもない苦労をしている。
同じように王族に拾われたものの、稚児趣味のある主から奴隷として虐待を受け、人間としての尊厳をメチャクチャにされた揚羽と、丁寧には育てられたけど、偽りの身分を与えられ偽りの人生を送ることしか許されなかった浅葱。
虐げられた奴隷と虐げる王子、肉体を支配された揚羽と精神を支配された浅葱。違いはあるけれど根本ではとても似ている。ただ、遊牧民の魂を持っているなら、もしかしたらより深刻なのは浅葱の方かもしれない。

次に、自分自身の根底を支える部分でそんな問題を抱えているため、他人への執着の仕方が二人とも屈折している。
愛と憎しみがないまぜになった揚羽の四道への思いと、嫌いながらも憧れてやまなかった浅葱の朱理への思いと、これまた両者は結構似てる。揚羽と違って浅葱は朱理に対して恋愛感情はないけれど、その分タタラへちょっかいを出していて、遂に至った「僕と一緒に行こうよ」というのは、四道と一緒に行きたかった揚羽にかなり通じる。

結局四道に対して奴隷だった自分と、赤の王とタタラに対して蒼の王子だった自分と、そこは二人ともどうにもならなかったって感じですね。大体浅葱が最終的に救われたのは熊野コンビのおかげだし。
男友達ができて救われたというのは、浅葱の育ちを考えると納得。揚羽が性的な部分も含めてアロに救われたのも納得できたし、ただ、結局虐げられる側にいた揚羽が選んだ道と浅葱の道が最終的に大きく違ってくるのはどうしようもないことでした。

二人の心の内はなんだかんだでシンクロするけど、「BASARA」は現状をぶち壊す事を目的としたタタラ中心の物語で、現状の中で虐げられた人生を送ってきた揚羽がタタラに夢を見たのなら、浅葱は自分を取り戻す作業をタタラと向かい合いながらしてきたわけです。
だから王朝の象徴である王城が崩壊した時、揚羽は死んで、浅葱は新たな生を得る。おそらくあの場に二人ともがいたのは偶然ではないでしょう。
辛い最期だけどそれぞれの望みが叶えられたという点で、自由な魂にとっては幸いな結末。本当に浅葱が揚羽の弟なら、読んでるこっちも少しだけ彼の死が穏やかに受け止められるというものです。



揚羽が最初から浅葱にやさしかったのは、どこか近しいものを彼に感じていたからだと考えれば、残虐な蒼の王の部下となぜ揚羽が仲が良かったのか、一応納得もできると思う。もしかしたらかなり近い身内かもしれないなあとまで揚羽は思っていたかもしれなくて、でもそれは「実は僕が本当の蒼の王」という浅葱の告白で完全に揚羽の中で「有り得ないこと」になってしまった。
皮肉なのは、浅葱が自分は素性の知れない子と白の王から聞かされた時、揚羽は既に死につつあったということで、もし王子じゃないと知った後に生きてる揚羽と会うことができていたら、浅葱は案外揚羽との血の繋がりに気付けたかもしれない。
そうなれば壮大な兄弟の再会物語です。ものすごい浪漫ですよ。
でも結局そうならなかったのが運命だったわけで。

肉体を奴隷化された揚羽は、遊牧民の魂だけは犯されず、自分に誇りをもって生ききって、一方浅葱は魂そのものを奴隷化されて、物理的に体は束縛されてないのに、白の王の言うなりになって行動するしかなかった。
そんな運命を与えられた二人が兄弟なら、ちょっとこれはなかなかすごい。もうそうであってほしいし、絶対そうあるべきじゃないか(断言)。



とまあそんなわけで、浅葱が揚羽の弟という説は、願望を大いに含んだ浪漫で、確たる根拠は実はありません。
でもあの二人の顔、かなり似てると思うんですよね。
アンケートとったら「BASARA」の美形ナンバー1とナンバー2は絶対この二人なんだから、素直にこの二人が兄弟でいいんじゃないかなあ。育ちが違うし揚羽は隻眼なんで印象もちょっと本来のものとは違うから周囲も気付かなかったということにして。

やっぱり浪漫は大切ですよ。
一番素敵で一番切ないのは、やっぱり「浅葱は揚羽の弟」説。
浅葱の出生が永遠に謎のままだというなら、作者の思いはこの際どうでもよく、私はこの説をとりたいですね。
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by teri-kan | 2010-06-11 11:35 | 漫画 | Comments(6)
Commented by とら at 2011-06-09 01:59 x
こんばんは。検索でやってきました。
私も、浅葱と揚羽は兄弟だと思っています。
同じ意見の人に会えて嬉しいです。

>虐げられた奴隷と虐げる王子、肉体を支配された揚羽と精神を支配された浅葱。

浅葱は、揚羽のどれだけ支配されようと支配されない所に惹かれたのかもしれませんね。
Commented by teri-kan at 2011-06-10 01:11
こんばんは、とらさん。コメントありがとうございます。浅葱と揚羽は兄弟だと思っている方がいらっしゃって私もうれしいです。

仰る通り浅葱は揚羽に惹かれてましたよね。憧れに近いものを感じていたんじゃないかと思います。

兄弟ということを念頭に置いて二人を中心にして読み直したら、ますます兄弟説が固まるのですが、あえて兄弟と確定する描写を入れなかったことが結果として良かったんだろうなという気もしています。
あーだこーだ考えるのはやっぱり楽しいです。そういった余白を残してくれてる作品はいいですよね。

「BASARA」はそういった点でとても楽しめたので感想もやたら長々したものになりました。後から書いたものを読み直して我ながらわかりにくいと思うのですが、訪れていただいてこうしてコメントしていただいて、とてもうれしかったです。

どうもありがとうございました。
Commented by かのん at 2013-04-26 22:12 x
こんばんは。

浅葱が誰の子か?が話題になっていたとは知りませんでした~。

外伝なども読んだ感じでは、銀子と国王の子じゃないかと思っていたのですが、個人的には柊が良かったカモ・・・^^;

>「浅葱は揚羽の実の弟」

番外編・ー幕の内ーは読まれましたか?・・・

ナギは第二王子で、名も「水葱・菜葱(なぎ)」ミズアオイの異名とあり、
アオイという王の色も入ってますね。

私は、「ナギと浅葱は兄弟」じゃないかと・・・

田村先生の「浅葱はそういえばとても彼に似ているよ」という
その「彼」はナギではないかと思うのですよ。。。
Commented by teri-kan at 2013-04-30 14:46
かのんさん、こんにちは。

その番外編を読んでないので説得力ゼロですが、ナギと浅葱はあまり関係ないんじゃないかなと個人的には思ってます。
第一の理由は肝心の本編で両者の絡みがほとんどない事。
第二の理由は浅葱の精神が王家の血をひいてると考えるには平凡すぎる事です。

第一の理由は浅葱の出自を物語的にどう捉えるかで変わるので重要ではないですが、第二の理由はちょっと外せないかなと。
あの王家の血は極端で、ナギを含めた兄弟と比較したらどうしても浅葱は平凡なんですよね。
特に病んでもないし苛烈でもない。運命と共に滅びるしかない脆弱な人間でもなければ独力で運命に抗う強さを持った人間でもない。
王家の人は良くも悪くも主体性があるけど、浅葱に主体性は全くといっていい程ないですからねえ。
普通の親の子と考えるのが無難かなあと。
とはいえ浅葱も各読者の受け止め方次第なので、ナギの兄弟説も銀子の子供説も十分アリだと思います。

ナギの名の由来は初めて知りました。
てっきり凪だとばかり思ってました。穏やかな人だし。
そうか、ミズアオイだったのか。
Commented by かのん at 2013-04-30 22:30 x
こんばんは。

そうですか、私は返って番外編・幕の内を読んでしまったからなのか、
浅葱と揚羽の会話で兄弟説はナイなと思ってしまったんですよね。
だから、浪漫的な考えが出来なかったのが残念ですが・・・。

その番外編は単行本の11巻に入っているので、機会があれば是非読んでみて下さいな~^^

5月に生まれた銀子の子は一声泣いて黙ったとありますが、死んだとは書かれてませんよね。
真実は柊のみが知ることでしょうかね。

その銀子がアダムとイブが食べた”本当の禁断の実”に囚われているが為、浅葱に対しても愛情を素直に表現出来ないジレンマ。
浅葱が情緒不安になっても不思議はなく、だから、温かい場所が欲しかったのではないですか。

田村先生の漫画は名前にしても色にしても意味がありますよね。

あっ!ナギの由来は私が勝手に考えたモノですー^^;
浅葱(アサギ)のギ繋がりで考えたモノなんで、本気にしないでね^^;

語りだすと止まらなくなるのでこの辺で失礼しますね~。
Commented by teri-kan at 2013-05-02 14:47
かのんさん。

ナギの名前、了解です。
ギは確かにつながってますね。
読む人の数だけ説も出てくるということで、こういうところ面白いですよね。

11巻ですか。機会があればチェックするようにします。
忘れないないようにしないといけませんね。
11巻、11巻……。
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