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「西洋骨董洋菓子店」

よしながふみの作品。
バリバリのゲイが登場するもBL系に馴染みがない人でも読めるマンガ。
この私がそうなので、その点は完全に保証します。

舞台は男四人でやってるケーキ屋さん。四人が四人とも見栄えのいい男なため雰囲気はどこかホストクラブ。とはいえケーキ屋としては真っ当で、味もサービスも最高。

こんなケーキ屋が近くにあればマメに通ってしまうよなあ……。

四人とも少年時代に四者四様の辛い体験をしており、その克服、というかその過去とのそれぞれの折り合いのつけ方が本作のテーマといっていいでしょう。
この作品の良いところはそういったものをくどくど説明せずに、サラリと日常起こることで描写しているとこで、特に主人公の体験に関する部分については、その積み重ねが最後の感慨につながって、ある意味癒やしのようなところまでもっていってるのがすごい。

うん、まあ人生ってこんなもんなんでしょうね。過去は消せないし、体験したことをしなかったことにはできないし、後から振り返って「あれはああいうことだったのか」と解決できることもあれば、そうならないこともたくさんある。
むしろ「そうならないこと」の方が絶対に多くて、なおかつそれに気付いてないことの方が多いんでしょう。
この主人公の場合は「記憶がないということを知っている」という点で、その辺とても読んでて理解しやすいのですが、人間って「忘れてることすら忘れてる体験」に精神を支配されてるんだなと、ちょっと考えてしまいました。読み終わった後、妙に自分の過去を振り返ったりしてみたりして。

なんだかんだで過去に囚われていますもんねえ、意識的にしろ無意識的にしろ人間って。過去に囚われまいとするなら、作中に出てくるゲイの彼のように自分をある意味粗末にするしかない。でもそれは主人公には出来ない環境だったし、そもそもそんなこと出来るような性格の人でもない。

この主人公の人生はキツいな。私ならもっと弱音を吐いてると思う。真面目にこの人には幸せになってほしいと思うし、でもとても強い人だからなんとかなるのかなあとも思う。
彼の強さは好きですね。ここまでしなやかに生きていけたらいいよなあ。

ま、それもこれもお金持ちだから出来ることではあるんだけど。

このケーキ屋の実態といい、集まった四人の個性といい関係性といい、どう考えたってありえん世界ですからね。(どこかにはあるかもしれないけど普通はないだろう。)
だからある意味このマンガはファンタジー。個人的にはファンタジーに分類したいくらいのお話です。でも描かれているのはちゃんと「人間」なんで、なんていうかなあ、本当にマンガらしいマンガって感じ。

オススメの一作です。
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by teri-kan | 2010-08-09 09:55 | 漫画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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