この作品には多くの戦闘シーンが描かれていますが、最も悲惨なのは旅順要塞攻撃でしょう。
無謀としか言いようのない作戦で、あれで多くの余計な戦死者を出してしまいました。 乃木大将と参謀の無能さ、愚直なまでの無能さが描かれた場面と言っていいのでしょうが、兵士一人一人の戦い様、死に様は凄まじく、戦争の凄惨さをこれでもかってくらいに出してました。 でも悲惨さを感じたと同時に、撃たれても撃たれても前に進んでいった人々には尊敬の念も覚えました。 この人達のおかげで今の日本はあるんだなあと観ていて自然に思って、なんていうか、拝まなきゃいけない気分になったというか、生まれて初めて「靖国神社に行かなきゃいけないかも」って気持ちになりました。 初めてですよ、こんなこと思うのって。 アジア諸国が軒並み欧米列強の食い物にされていたあの時代、負けたら日本はロシアに蹂躙されるか、ロシアの南下防止のためにアメリカやイギリスに居座られるかしただろうから、あそこで戦いにくじけてたらホントに日本はどうなったかわからないし、彼の地で戦った一人一人のおかげっていうのは確かにあると思うんです。 でも「拝まなきゃ」とまで思ったというのは我ながら驚きで、これまで見たことのある戦争映画や戦争ドラマでそこまで思ったことないことを考えると、日露戦争、というか「坂の上の雲」はちょっと異質かもしれません。 日露戦争が勝ち戦だったから、というのは大きいでしょう。 日本で戦争といえば太平洋戦争のことで、戦争ドラマも戦争映画も負けたことを前提に反省と平和主義の立場に立って、どれだけ愚かだったかということを描いたものが多いけど、そんな視線で描かれている兵士を見ても、国のために無駄死にさせられて可哀想と思いこそすれ、彼らの犠牲のおかげで今の日本があるとは思えない。思うのは国が馬鹿だからとか軍部が無謀だからとか、そんなことばかりなんですよ。 一方日露戦争の指導者はやり方を間違えず、勝って戦争を終わらせた。だから多くの戦死者を出したけど、その死は無駄ではなく意味のある犠牲になっている。 司馬遼太郎の危惧もなるほどというか、国のために身を犠牲にする精神が誉めそやされ、下手すりゃ「やり方が正しければ戦争やってもいいんだ」と思われかねない話ではありますね。高潔な人間が勝算を持ってるなら何をやってもOK、みたいな。 でもそういう受け止められ方をしたら不本意極まりないだろうなと思う。帝国主義の時代に現在の平和思想はないし、戦争の時代は戦争があるのが普通なわけで、「坂の上の雲」はそういった「戦争があるのが普通」という時代のスタンスそのままで日露戦争を描いているから、多くの戦争ドラマのように反戦を振りかざす作品にはどうしてもなれない。 それが気に入らない人はいるかもしれないけど、現代の反戦主義が入ってしまえば当時の人間をありのままに描くという趣旨から外れるし、下手すれば情感に訴えるだけのお涙ちょうだいドラマに成り下がる可能性もある。 決して戦争賛美ではなく、むしろ戦争の困難さを多方面からきちんと描いているんだけど、ドラマにするのは確かに難しかったのだろうなと思いますね。 秋山兄弟も軍の偉い方々も、己の仕事をただやり抜く、といった姿勢だったのが印象的でした。 戦争をしたから好戦的で主戦派とか、そういう価値観が当てはまる時代じゃないし、タイトルにある通り、坂を見上げて上ろうとする人達の使命感や責任感、その「顔を上げてる姿」そのものに感銘を受けました。 明治という時代のなせるわざなんだろうけど、若い国家の一生懸命さが好ましかったです。 で、坂を見上げて進むことそのものは、今も昔も変わっちゃいけないことなんでしょう。雲は永遠につかめないものだから、これでOKという答えを得ることは永遠にないわけだし。 今は戦争の時代じゃないから手段は戦争じゃないですね。あの時代もそれぞれの立場の人がそれぞれに頑張っていたし、今の人もそれでいいんだと思います。自分のしてることが国(今なら社会と言った方がいいかな)を成り立たせている一つだと認識して、日々頑張りたいものです。 うん、はからずも震災後の日本を考えるドラマとしてはうってつけのものになったかもしれません。年頭の心構えとしてもなかなかのものになりました(笑)。 ここまで書いておきながら原作を読むことはおそらくないと思うけど、ドラマはどこまで原作に忠実だったんだろう。それは気になる。 ほとんどの役者さんが素晴らしかったけど、特に渡辺謙の語りは最高でした。 やさしいけど感情的でないのがよかった。 「まことに小さな国」に対する深い愛情があって、あれは原作を読んでもあんな感じに受け取れるものなのかな。 渡辺謙は本当に良かったと思います。
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by teri-kan カテゴリ
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