「銃・病原菌・鉄(上)」

著者はジャレド・ダイアモンド。訳者は倉骨彰。
草思社文庫。

文庫本が発売されて早々に買ったはいいものの、なかなか読めずにここまできました。
下巻読了まで待ってたら上巻を忘れてしまいそうなので、とりあえず(上)のみの感想を。



本書のテーマは、なんで現在の世界はこのような世界になっているのか、です。
なぜヨーロッパが他の地域を支配することができたのか、その逆はありえなかったのか。南北アメリカ大陸の先住民が旧世界に征服されたのは、人種的にヨーロッパ人より何かが劣っていたからなのか。
……いや、そうではない、それは地形的条件、気象的条件などの自然環境がもたらしたものなのだ、というのが著者の言いたいことで、様々な分野の研究からそれを解析していくといった内容になっています。

たくさんの人間を食わせる社会を作れる環境にあったかなかったか、の違いなんですね、戦争に勝って支配者になるか隷属する側になるか、を決める条件は。
だから何千年も前から畑を作れる環境にあった方が強くなる。農業に向いてる野生植物が多く自生していた地域の方が、家畜化できる野生動物が多くいた地域の方が、そうでない地域より技術が進む。

乾期がある場所でないと農業が生まれにくいというのには「へえー」でした。
一年草でないとダメだというのも、理由を知れば「へえー」。
植物の説明のところは知らないことだらけで面白かったです。いやもうなんか、こういうことって人間として最低限勉強してないといけないことじゃないかって感じです。
現代人って漫然とスーパーで食材買って適当に料理して食事してるけど、食物は人間を社会で生きる一員として成り立たせる根本だということ、もっと肝に銘じておかないといけないんじゃないかと感じさせられましたね。

病原菌の話はすさまじかったです。
ていうか、アメリカ大陸の先住民がヨーロッパ人にやられてしまったのって病気を持ち込まれたからだったんですね。今まで武力のことしか考えてなかったです。
でも病気の方がたくさん人を殺したというはかえって悲惨な気がします。
これじゃヨーロッパ人は完全に悪魔の使いじゃないか。

実は常々疑問には思っていたんですよね。いくら武力で制圧されたといっても、あまりにあっけなく支配されすぎじゃないかって。
でも持ち込まれた病気に対する抗体が全然なかったからと言われればなるほどなあって感じで、例えば村の人間が謎の病気でバタバタと死んで生き残りが自分を含めてほんのちょっとだったりしたら、そして周囲はいつのまにかヨーロッパ人だらけになっていたとしたら、想像するだけで恐ろしすぎなのですが、もう何もかも言いなりになってしまっても仕方ないような気がします。
わけわからないうちに根底から破壊されたって感じでしょうし、気の毒極まりないですね。



欧米の白人さんって、いまだにヨーロッパ以外の地域がヨーロッパのように進化しなかったのは、その地域の住人が白人よりも劣っていたからだ、とか思ってるわけ? もしくはそういう人がまだ多くいるとか。
実はそういう人がいることを前提とした言い回しをしてる箇所が結構あって、読んでてそれが目についたんですよね。もっと事実を淡々と記述してくれるだけでいいのにって感じでした。
まあ本書の意義がまさしく「人種の優劣ではなく自然環境の違いがその差を生み出したのだ」ですから、そこのところをしつこく言うのは正しいのでしょうが、しかししつこく言わなければいけない現状が歴然としてあるということも感じさせられて、なんだかなーって気分になりました。

でも全体的には大変楽しく読めた本でした。
普通の馬は投げ縄で捕まえられるけど、シマウマは絶対に輪が首にひっかからないとか、日常レベル(?)の小ネタが、実は世界の勢力図の行方まで関わっているという、そういう一つ一つの話は面白かったですね。
確かになんで馬は家畜化されてるのにシマウマはされてないのかとか、疑問に思ってもよさそうなもんですよね。シマウマがアフリカの人達に飼い慣らされて乗りこなせるようになってたら、白人のアフリカ侵略だってそうは簡単にいかなかっただろうに……。
まあ、アフリカ先住民がシマウマ乗ってる姿を想像するのも変な感じですが。
シマウマに乗ってね、サバンナの遠くまで駈けてって、狩りも馬上から行うんですよ、手作り弓矢とか吹き矢とかで。
……んー、やっぱりピンとこないかな。



とまあ、そんな上巻でした。
下巻は文字の誕生から始まっていますが、これまた長くかかりそうです。




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by teri-kan | 2012-05-23 14:54 | | Comments(0)
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