「さよならドビュッシー」

中山七里著。
第8回(2009年)『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品。

機内のお供にと思って偶然買って読んだのだけど、調べてみれば来春映画が公開されるとか。
なかなか良いタイミングで読んだのかもしれません。
映画を観る観ないは別として。



ここから先は読んでない人は避けた方がいいかも。
完全なネタバレじゃないけど、察しのいい人にはわかっちゃうと思います。








音楽小説であり青春小説でありミステリー小説であることは予想できたけど、思いのほか医療小説というか、そういう意味での痛さとか辛さがキツイお話でした。
映画の写真がいくつかネット上で見れるのだけど、小説内で描かれていた肌を実際に目にするとさらに重い気分になります。
読んでて想像していた通りといえばそうなのですが、若い女の子にこの試練は辛かろう。全身火傷を負った女性の話はいくつか聞いたことがあるけど、治療は大変だし、精神的にも大変だし、強力な生きる意味をなんとかして見つけ出さなければ、身体もそうだけど心が生きていけないというのは十分有りえるんだろうと思います。

主人公にとって生きる意味は音楽で、二重にも三重にも彼女を彼女たらしめる手段でありました。
クライマックス部分でその重層構造が明かされるわけですが、うーん、音楽が魂を表現するというのは本当にそうなんだろうなあと思えるラストでしたね。というか、音楽が魂を表わすと言われていることが、むしろわかりやすくお話にされているといった感じ。
最後の演奏で父親も叔父さんも彼女の正体に気付いたのではないかと思わせるくらいの、そしてそれは彼女にとって本望なんだろうなと思えるくらいの、それくらい最後の演奏は壮絶な自己表現だったのですが、この小説は自分が自分らしく生きるとは、というのも生ぬるいくらいの、自分が自分として生きるためには、といったテーマが一貫して描かれていたお話でした。

自分らしく生きることを目指せるのはまだ幸せな気がしますね。自分として生きることを奪われるのはほとんど死のようなものだし、思えば歴史でも自由を求めて戦う人達の根本は皆ここにあるように思います。
どのような境遇にあろうと、どのような外見になろうと、魂までは侵せない。侵せないものであってほしい。これはずっと変わらなくて、で、魂を表現するには音楽が最も適したものの一つ
……ってことなのかなあって感じです。

まあ、そこまでいくのが大変なわけですが。
表現するための技術を習得することそのものが今回の主人公にとっては難儀だったし。



ミステリーとしての感想はあまり大きくないかな。
お医者の先生とピアノの先生の二人が強烈で、肉体の命と精神の命と、その二つを主人公に与えた彼らの信念が印象に残りました。
主人公のおじいちゃんもそうだけど、意志の強い人は強烈です。
主人公は大変な災難にあってしまったけれど、強烈な人が周囲にいたおかげで自分として生きていくことを捨てずにすんだのかもしれませんね。



で、映画でもピアノの椅子の高さ調整のことが出てくるのかな?
自分の過去を振り返ってみても高すぎたような気がするし、こういうのは大々的に広めないと。
確かにテレビとか見てて感じてはいたんですよねえ、ピアニストは椅子が低いなあって。
やっぱり理にかなってるんですね。
もっと早く知りたかったな。




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by teri-kan | 2012-10-31 11:56 | | Comments(0)
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