「古代研究 列島の神話・文化・言語」

三浦祐之著。青土社。

評論集? 論文集?
専門に勉強・研究している人向けだと思いますが、古事記イヤーの今年ならば、氏の古事記関連の本を読んだ一般読者が手に取ることもあるでしょう。
私自身がそれで、なわけで不勉強な部分もかなりあって難しかったりしたのですが、とりあえずなんとかついていくことはできたのではないかと。
理解度はともかく、自分はいたって楽しく読みました。

古代というくくりの中でいろいろな題材がテーマにされているのですが、特に大きく扱っているのが「いけにえ」「人柱」あるいは「殉死」。
古代の日本にいけにえの風習はあったのか、というテーマで、無いとは絶対に言えないが、かといって頻繁に行われていたのかと言われると、さて……、といったことの考察について、かなり詳しくなされていました。

しょっぱなの馬の殉死についても興味深く読みました。
馬がものすごく古代人に身近だったことを思い知らされたというか、今でも土地によっては馬の神事とかお祭りで活躍する馬とか、馬を大切にしているところはあるけれど、運搬や長距離移動や人の仕事の手伝いだけじゃないところで、馬って人間の営みに密着してたんですねえ。

とはいえ読んでて疑問に思うことも出てきて、特にこれは最大の謎なんだけど、養蚕の起源に馬が関わってるのって、一体なんで?
東北のおしら様の詳しいお話ってこれまで知らなかったんですが、この話(馬と人間の娘さんとの悲恋が養蚕の始まりになったという話)の原型は大陸にあるそうで、あちらでは娘さんに馬の皮が巻きついて蚕になったっていうのが養蚕起源の伝説なんだそうです。

なぜ蚕に馬?
なにがどうなってこの二つが結びつくのけ?
養蚕関係で女性が起源伝説に絡むのは理解できるんだけど、なぜに馬?
中国の方の話でも馬は娘さんに恋しちゃってるので、男性を馬にたとえてる部分はあるのかもしれないけど、にしてもなぜ馬? そしてそれがなぜ蚕に?
さっぱりわからんわー。

ただ、このことから「へえええー」と目からウロコだったのが、古事記でスサノオが神衣を縫っていた女の神様の部屋に馬の皮を投げ入れる場面。
あれはだから養蚕の起源を表わしている場面なんだそうですよ。
へえええええええ。

実は前々から思ってたんですよねえ、なんでいきなり馬の皮なんだろうって。
でも養蚕起源を表わしてるって言われたらすごい納得。
古事記のあの辺りは五穀の起源も説明してるし、なんかね、ものすごい農耕民族バリバリな神話ですね、古事記って。

と同時にバリバリ海洋民族な神話にも触れられていて、西のワニ(サメとかフカとか)と東のサケの論文もあって、ここの説明も面白かったです。
一族の始祖をそういったお魚になぞらえてるの、海に生きてる民族なら当然あるだろうと思うし、いやほんと、読んでて面白かったですよ。こうやって自分達の源流を探索するのは楽しいです。



本書に書かれてることはこんなもんじゃないんですが、わかりやすくて面白かったのは上に書いたことかな。
これらが正しいのか正しくないのか、どの程度正しいことなのか、これからもっといろいろ考察されていくのでしょうが、霧の中だった古代の実像が手にとれるようになった気がしたのは確かで、読んでてとても面白かったです。




[PR]
by teri-kan | 2012-11-09 10:02 | | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 「おやすみラフマニノフ」 流罪もいろいろ、死に様もいろいろ >>