「おやすみラフマニノフ」

中山七里著。
「さよならドビュッシー」の続編で、前作で活躍した先生が今作も登場。
時間的つながりもわかりやすく、だからまずは「ドビュッシー」を読んでからこちらを読むべきですね。
ラフマニノフが好きだからこっちを先に~とか、そういうのはダメです。

では、ここからはほんのりネタバレありで。








盗難事件からスタートする話だけど、もうこれはミステリーというより青春音楽小説。
音楽の話と就職の話をこれでもかって程してました。
そしてそれこそが本作のテーマにつながるものであります。

音楽家としての道を選ぶこと、選んだその先にあるもの、道が最後に辿り着くところ、その長い音楽家人生というものがどういうものか、そもそも音楽家として生きるとはどういうことか、それを問いかけている作品といっていいと思います。
「さよならドビュッシー」からまた一つ段階をあげた音楽をする人々の苦悩のお話です。

しかし、「ドビュッシー」で音楽を表現することの素晴らしさに「ホオー」といい気分になっていた後にこれを読むと一気に重い気分に。
芸術性と人間性は全くベツモノ、あの名ピアニストは人格破綻者、なんてしゃあしゃあと言われてしまったら、音楽は魂で奏でるもの~と綺麗にまとまった前作が悲しすぎる。
いや、あれもこれもどちらも音楽の真実なんだけどさ。

「ドビュッシー」で先生が言っていた「楽譜はソフト、演奏者はハード」っていうの、本作で更に教えられたような気がします。
人間性、ホントに関係ないんだな。むしろ演奏の才能の代わりに与えられないままでいるものであったりするんだな。
芸術家に変人が多いという言われ方は昔からされるけど、もともとの作られ方が全然凡人とは違うんだろうね。その狭間で生まれるのは喜びだけではないというのは、ある程度はしょうがないのでしょう。

大変だね、音楽家って。
音楽家の周囲の人達って。



学生オケの場面がたくさん出てくるんだけど、私の比較対象が「のだめ」しかないもんだから、准教授のヒドさがかえってリアルで辛かったです。
思えば「のだめ」は楽しいコメディでしたねえ。
音を楽しむと書いて音楽、ってのを気楽に味わえたマンガだったなあ。
本作はさすがにもっと生々しくて、皮膚感覚からして違うんだよね。

今回はバイオリンについての記述が多かったのですが、私にとってバイオリンは未知の世界なので、前作のピアノと比べると文章化された音楽に理解が難しいところが多かったです。
作中で出てきた曲は有名どころが多かったので助かりましたが。
タイトルのラフマニノフもそうだし、なんといっても岬先生のピアノ伴奏でのチャイコフスキー・バイオリン協奏曲。
主人公、いい経験させてもらいましたね。
先生の、この音楽家魂を刺激させてよりよい音にさせていく力ってなんだろう。
いつもすごいなあと思います。

次回作はショパンだそうですが、先生のショパン……聞くことができたらいいですね。
楽しみです。




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by teri-kan | 2012-11-12 11:31 | | Comments(0)
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