「武内宿禰の正体 古代史上最もあやしい謎の存在」

著者、藤井耕一郎。河出書房新社。

久々に大きな本屋さんに寄ってみると、これが歴史コーナーに平積みになっていました。
でかでかと「武内宿禰」とあるのを見て、この人について書かれた本って今まで読んだことなかったなあと思い、ふと手にとってみたのですが、ぱらりと読んだだけで面白そうだったので即購入。
いろいろぶっ飛んでいますが、楽しい本でした。

武内宿禰(たけしうちのすくね)は古事記や日本書紀、古代史関連の本を読めば必ず出てくる古代の有名人ですが、ものすごくとらえどころのない人で、これまでの印象としてはたくさんの天皇に仕えた大臣、たくさんの豪族の祖先となった人、といったことしかありませんでした。
いろいろすごいことをやってる人なんですけどね、でもどうもつかみにくい人だったんです。
だからこっちもあまり興味を持てなくて。

本書ではその実体のつかめなさの理由に深く切り込んでいくのですが、切り込むためにいろいろ説明をしてくれるその説明が、なぜかとってもスピーディ。
大学の先生の本だと解説が事細かで、その分文章ものろのろしたりするんだけど、この人は先生じゃないからか、どんどんどんどん先に進んでいって、詳しい説明もなしに「~と言われている」と誰がどこで言っているのかこっちはわからないのにそれを踏み台にしてまた先に進んでいって、もうついていくのが大変(笑)。
日本中をあちこち動いて、「誰かー、紙とペンと地図持ってきてー」と言いたくなるくらい自由気ままな展開でしたね。

内容も本当に常識と違っていたのだけど、でもイヤな感じは受けませんでした。奇をてらったのか?と言いたくなるような変わった説を披露してる本って、気分が悪くなるようなものもあるけど、本書はそんなことなくて、すごく変わってたけど、なんだか妙に爽やかでした。

王朝が交代するというより外戚が交代して体制に変化が起こるというのは、日本ならその方がありえるなあという印象で、それが瀬戸内海の航路と結びついているというのは面白かったです。
そうなんですよ。愛媛って宇都宮姓が多いんですよね。で、対岸の広島はほとんどいなくて、でも住吉神社はあるんですよ。
住吉神社って私が知ってるお宮も船が着くところのすぐそばにあるんですが、本書では「すみよし」の語源まで説明してくれて、長年の疑問だった分「すみよし」の「す」の意味とかホントかどうかわかんないけど「へー」って感じで、なんかそんな風に海関係・水関係の言葉を全国各地でつながっているのをひろっていって、そこから当時の海人族の行動ルートを辿っていくとか、なんかねえ、スケールが大きかったですねえ。

書かれてあることがホントかどうかはともかく、ロマンはありますね。
日本人って農耕民族だけど、バリバリ海洋民族じゃないですか。で、その海洋民族ってどういう風に海洋民族だったんだろうという、そんな疑問がちょっと具体的になったというか、いろいろ気付かせてくれたというか、そういえば本書で指摘されて改めて「そういやそうだったな」と思い出したんだけど、スサノオって「海を治めなさい」ってイザナギから言われてたんだよね。海の神様のはずだったんだよ、ホントは。
そういうことすっかり忘れてましたね、スサノオの行動があまりにヘンすぎて、そっちに目が行きすぎて。
でも確かに本書に書かれてあることには「なるほどー」ということも多くて、「宇治」の語源とか、唐突に思えるけどいろいろなことが関係しあってて、ホント面白かったですね。

でも論の進みが早過ぎて、もう一回くらい読まないとちゃんと頭に入らないかも。
地図もいるな。川と名水のある場所と、遺跡に神社、古い港がある町、そんなのが諸々載ってる地図。

古代の豪族研究は面白そうですね。
以前はなんだかよくわからない長生きの人って感じの武内宿禰でしたが、今は俄然興味が出てきました。

やっぱり古代は楽しいな。
大きな本屋さんにもマメに行かねば。
こいうのはネットじゃなかなか買えませんからね。




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by teri-kan | 2013-01-23 14:41 | | Comments(0)
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