「三種の神器 〈玉・鏡・剣〉が示す天皇の起源」

著者、戸矢学。河出書房新社。

本屋さんで「武内宿禰」本の隣に積まれていたので目に留まった本。
あれの隣になければするーっと見逃していたかも。
それくらい表紙が地味で、なんというか、一般人には手に取りにくい空気が漂ってます……。

が、中身は面白い。
天皇家と三種の神器の関係は想像してたよりはるかに複雑怪奇で、これはもうミステリーなのです。日本最大のミステリー。
歴史の下に埋められた真実っていろいろあるんだろーなーってワクワクしちゃうくらい謎だらけで、いやー、本当に面白かったです。

そうですよねえ。日本人って恐ろしいものほど丁寧に神社に祀ってますよねえ。
大事にしてるってことはそれだけ恐かったってことで、そんなに八咫鏡(やたのかがみ)が恐ろしかったのかあと考えると、単純にご先祖の鏡だから厳重に祀っただけとは言えなくなりますよね。
八咫鏡について語るなら当然伊勢神宮の成り立ちにも筆は及んで、となるとこれまた伊勢神宮って謎だらけで、まあよくも現代まで謎が謎のまま残ってたなと感心するんですが、ホントにね、全国各地に神社があるおかげで文字資料に乏しくてもこれだけ古代のことを推測できるのがすごいというか、撃ち滅ぼした敵こそ魂を鎮めるために祀るというやり方万々歳ですね。

実は神器の中で最も知りたかったのは勾玉についてだったのですが、あれは魂の形だといわれれば、確かに幽霊と一緒にドロドロドロ~と出てくる人魂もそうだし、元は胎児の形からきているというのも、発想としてはありえるので納得できます。
あの形って人為的に型通りに作られているのに、なんか自然なんですよね。
人工物だけどどこかそれだけでもないように感じるのは、あの形を自然の形だと潜在的に認識しているからかな。胎児しかり魂しかり、何らかの根本だという感覚がもしかしたらあるのかもしれません。

この本は神話と真実の間の曖昧になっている部分にかなり踏み込んでいて、「ほおーそうか」と面白く思う反面、「こんなにはっきり解明しちゃっていいのかね?」という心配も出てきます。それどころか「謎が謎でなくなったらかえって面白くなくなるなあ」という思いまで起こったりします。
もちろん本作で書かれていることは数ある説の一つにすぎないのだろうし、これに反論してる本を読まないまま鵜呑みにすることはできないんだけど、しかしなんだかやけに説得力があって、なにやら決定版の如くに「大和政権の誕生これで確定!」みたいに思わされてしまいます。
いや、確定なら確定でいいんだけど、なんていうかなあ、やっぱり謎は謎のままでいてほしい気持ちがどこかにあるんですよね。国生み神話でドロドロかき混ぜたものがボトリと落ちて島が出来たとか、ああいうのにロマンを感じちゃう心のどこかが「全部わかっても面白くないよな」と感じてしまう。
でありながら「知りたい」と思う気持ちは止められないので、これ関連の本はこれからもいろいろ読むんだろうな。



ところで、本書は日本の剣を扱っているだけあって、大河ドラマ「平清盛」で清盛が使用していた剣にも話が及びました。
当然のことながらあの時代の日本人が宋剣を振るっていたことを歴史的・性能的にみてありえないと非難、それをドラマに取り込んだ製作者の意図も厳しく批判していました。
あのドラマの低視聴率の原因に剣や王家呼称問題があったのは初回から明らかだったのですが、私はドラマを観ている間はそれらは完全スルーすると決めていました。でないと絶対に楽しめないことわかってたし。
でもそれに触れないところでドラマを楽しんだとしても、その問題が存在していたことは変わりなくて、で、剣についてここまで研究されてる学者にあそこまで批判されるなんてさ、やっぱりNHKダメじゃんって感じです。

物って単に物じゃなく、歴史の積み重ね、人の思想の積み重ねの上に存在しているもので、歴史ドラマで小道具一つバカにできないのはわかってるはずなんですよね。ましてや剣のような重要品で歴史を無視した演出をするとか、「ドラマだから」で済ますにはちょっとたちが悪かったかもしれません。

本書に書かれている剣の歴史は面白いですよ。草薙剣の解説なんて「へええええ」の連続です。
鏡も剣も勾玉もそれぞれ読み応え十分で、古代大和民族の精神史の一端を知ることができます。

残念ながら装丁がちょっと地味というかマニアックなのがね……。
もう少し万人受けするようなものだったら手に取る人が増えるかも。
そうしたらもっとたくさんの人が読むと思うのに、そこだけがちょっと惜しいです。




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by teri-kan | 2013-01-29 13:48 | | Comments(0)
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