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「SWAN」モスクワ編 その22

「SWAN MAGAZINE 31号」を読みました。







さらばモスクワ。
さらばモスクワ編。
真澄、レオンと共にドイツに帰ってまいりました。

そう、あらゆる意味で帰ってきたって感じです。
今号はもうモスクワ編ではありません。モスクワが舞台ではなくなったからというのではなく、雰囲気が全くもって通常の「SWAN」に戻ったからであります。

ドイツでバレエ団の団員とお稽古してる真澄の姿に、「平常運転のSWANが戻ってきた」という感覚を覚えたの、私だけではないと思います。
今号の「SWAN」の空気こそ従来の「SWAN」。いっそのこと今から「モスクワ編」の名を取っちゃえばいいのにと思うくらいです。

真澄はさ、アウェイ感あふれる場所で一人で踊ってなんぼなんですよね。
今はレオンがいるからまるっきり一人ってわけじゃないけど、でもレオンとは横並びの立場だからやっぱり自分の前に道を作るのは自分しかいない。
で、真澄は「SWAN」の連載第一回からずっとそれをし続けてきたんです。未知の場所で、これといった味方などいないアウェイの場所で、一人で悩んで考えて、自分の踊りを見つけていく。「SWAN」ってそうやって続いてきたお話だったのです。

ところがモスクワ編は全然違ったんですよね。
まだソ連時代で、思いっきり東側で、ボリショイの団員は皆お高くて、目の肥えた観客だって「は?聖真澄?」状態で、こんな厳しい場所他にないはずなのに、なぜかそこはかとなくあふれるホーム感。
そう、ホーム感バリバリなんですよ。モスクワってなんかもうあったかいんですよ。
リリアナ一家は超ウェルカムだし、ラリサなんて超親友。先生は世界最大の理解者で、なんといってもバレエ界最強の庇護者マクシモフ氏がいる。
もうね、家ですよ、家。ホーム。安らげる心のふるさと。

だから真澄はモスクワにいちゃいけないんだな。以前NY行きを決めたのもその理由からだったけど、モスクワにいたら真澄が一人で壁にぶつかることがなくなる、イコール真澄の成長が止まる、イコール「SWAN」が「SWAN」でなくなる、ゆえに「SWAN」が終了する、ということになってしまって、いくら私が「セルゲイエフ先生が見たいなあ」と思っても、それは「SWAN」的には出来ない相談なんだ。

先生を登場させれば本来の「SWAN」ではなくなるというこの大いなる矛盾!
ううーどうすればいいのだ。もう先生の話は風の噂程度にしか触れられなくなるのだろーか。
それは悲しい。悲しすぎるぞ……。

まあそれはそれとして、久々に出てきたエドが相変わらずでした。
真澄とルシィのことを知っていてあの場でルシィの名を出すのがなんというかまあ、空気を読まないのか事実しか見ないのか、エドはエドだなあって感じです。
それを言うなら「婚約したの」とニコニコ顔のファニーの前であんなこと言うレオンもレオンだけど。

レオンと真澄は超ラブラブで、それはよござんしたとしか言いようがないんだけど、この二人の恋愛観や結婚観はかなり違うだろうし、本当の意味でのスタートってここからなんでしょうねえ。
今までもルシィのこととか封印とか、二人の間にはいろいろあったけど、今から振り返ればあれはほんのウォーミングアップで、本当の本当にここから始まるんだ。

多分ここからものすごい長い道のりなんじゃないかな。
ホント長いと思うのです。
折しも新たなキャラが登場して、連載もこれからも長く続くだろうなって感じだし、ホント先が楽しみなんですよねえ。

で、まだまだ長期連載になるなら、いっそのことソ連崩壊壁崩壊まで描いてもらって、西と旧東を自由に行き来する先生とか描いてもらえないかなあ。(私はまだ先生のその後を諦めていません!)
ソ連人としてのアイデンティティの崩壊と、芸術家としての自由を手に入れた喜びと、そこまで描いてもらえたら超うれしいかも。ていうか、ソ連のバレエダンサーを描いてて、しかもかなり革新的なことやってる芸術家描いてて、それですぐそこまで(?)きている共産主義体制の崩壊を描かないなんてありえなくない? いや、「SWAN」がそれを描くマンガじゃないのはわかってるけどさ。

と、書いてて思ったんだけど、今は何年なんだろう。
1980年代半ばくらい? そろそろゴルバチョフが書記長になるくらいじゃないのかな。
とても大変だと思うけど、でもドラマにはなると思うんだよね。なんとかしてそういうのを真澄と絡ませられないかなあ。
そんなこと考えてると、言い方変だけどリリアナはいい時に死んだのかもしれません。
ラリサとマキシムは根性あるからボリショイの顔として時代の荒波も泳ぎきるだろうけど、リリアナは価値観の大転換についていけたかなあ。
まあ、あれくらい浮世離れしてたら大丈夫だったか……いやいや、そんな風に思われるのが嫌だったんだし、もし生きてたらソ連崩壊後どんなダンサーになっていたのか、やっぱり気になりますね。

うん、ホントにソ連がガタガタになるのはすぐそこだし、こうなったらぜひそこまで、いや、ペンが持てる限り「SWAN」を書き続けてもらいたいです。
めざせ「まいあ」、追いつけ「まいあ」。
是非是非頑張ってもらいたい。

あ、そういえば、新進気鋭で国籍不明の振付家って一体ダレ?
ファニーの言う「外国人」の捉え方が難しいんだけど、イギリス人じゃないってことでいいのかな。
なんとなく馴染みのあるダンスっぽいので、「実は!」って展開なんだろうけど、真澄につながりがあって振付家になりそうな人で正体不明な人って誰がいるだろう。
今はさっぱりわかりません。
Commented by swan大好き at 2013-03-19 22:34 x
いつもながらに、的を的確に得たコメント、素晴らしいです!
そうなんですね、アウェーで磨かれてきた「私ってダメな子」の気持ちが真澄の芸を磨いてきたんですものね。
ここから次のステップにいくには、やっぱり足りないものを自分で見つけ、自分で補完する上限のない志が必要ですね。
一体、謎の人物はだれなんでしょう?!
セルジェかなあ???
Commented by fuu at 2013-03-20 20:56 x
はじめまして! 長年のSWANファンです。こちらのブログを見つけて楽しく読ませて頂きました!
すごい洞察力とスルドイ感想に頷きっぱなしです。
今回のモスクワ編、たしかに新しいステージに入ったなという感じがしますね。これからはドイツ編??
真澄は覚醒して長年閉ざしていた心の扉を開いたけど、次はいよいよレオンが心の扉を開くのかしら?などと勝手に想像してます。先生が言っていた「大切な人に大切なことを伝えない」というのがとても気になって・・・
ニューキャラも気になりますね。ダンススタイル、ひょっとしてルシィに似ているのでしょうか?
これからも感想、楽しみにしています♪
Commented by teri-kan at 2013-03-21 15:51
swan大好きさん、こんにちは。

的を得ていましたか? 良かったです!
上限のない志……(笑)。ホントに向上心に終わりが見えないですよね。真澄はすごいなあと感心します。
セルジェ、と言うとラブロフスキーさんでしょうか。
新進気鋭というにはお年を召していらっしゃるかなあ。
正体不明というのは正にその通りですけどね。国籍も確かに不明っていえば不明だし。
Commented by teri-kan at 2013-03-21 15:53
fuuさん、はじめまして、こんにちは。

長々しい感想を読んでくださってありがとうございます。楽しんでいただけていたら何よりです。
そうそう、いい加減レオンの心の扉も開けてほしいところですよね。
結婚するということは結局開くってことなんでしょうが、妊娠の方がよりレオンを変えたのかなと想像するので、そこら辺は是非じっくりと描いてもらいたいです。
ダンススタイルがルシィに似ているというの、もしそうだったら面白そうですね。
新キャラはやたら意味ありげなので、これから何をやってくれるのか楽しみです。
Commented by swan大好き at 2013-03-22 21:44 x
そうですよね~ラブロフスキーさんじゃ、新進気鋭とは言えないですね(--;)
新たな登場人物ってところかもしれません。
はあーーまた3ヶ月待ち遠しいですね。
Commented by choko at 2013-03-23 23:40 x
こんにちは。またまた読みの深さに感動しました。
もうモスクワ編ではありませんよね。連載の終わりが近いのかと思いましたが、まだまだ続きそう。平常運転のSWAN、確かに。時代背景すっかり忘れてましたが80年代でしたよね。ドイツに戻ったらもうモスクワには触れない気もしますが、先生はきっと出てきてくれそうです。

2人の今後、できちゃったから結婚決意。は避けて欲しいです。

ルシィ似新キャラが真澄にアプローチ、またも揺れる真澄に焦ったレオンがプロポーズ?
鉄の扉開門には弱いかな〜。
または先生が再登場してくる方が、強い動機になるでしょうか?
毎回想定外の展開なので、振付師といい、ホント何だか予想つきません〜

アダージェットが見られるのは当分先になりそうですね。SWAN妄想がライフワークになりそうです。
Commented by まみ at 2013-03-25 04:04 x
感想拝読できるの、お待ちしてました。
楽しいなあ。
私も先生のその後の幸福を諦めていない一人です。

物語もまだまだ続きそうで安心。

「どうせレオンは真澄とうまくいっちゃう」のは確定だけど、
そこまでのプロセスもますますおもしろくなりそうで。

それにしても、先生、もうあんまりでないんだろうなあ(未練タラタラ)
Commented by teri-kan at 2013-03-25 12:45
swan大好きさん

予想としては、新たな登場人物ではあるけれど、かといって全く無関係でもない人って感じでしょうか。
少なくとも知り合いの知り合い程度のつながりはあるような。
完全な推測ですけどね(笑)。
Commented by teri-kan at 2013-03-25 12:46
chokoさん、こんにちは。

そうなんですよ。できちゃったから結婚っていうのはちょっとね……。
でも妊娠自体は予定外だろうし、その辺の前後関係は一体どうなるのやらって感じですね。

>またも揺れる真澄

また揺れるのか(笑)。
でも真澄が揺れないとレオンが動かないんですよねえ。レオンを変えるには真澄が何かするしかないので、そのパターンはもしかしたらありえるかもですね。
先生は真澄のことでもバレエのことでも唯一といっていいくらいレオンに影響を与えられる人なので、レオンが全然動かない時には圧倒的オーラをまとって再登場してもらいたいです。
そしてまた打ちのめされろレオン。
レオンはホントに動じない人なので、彼に対しては意地悪なことばかり考えるイヤな読者になりつつあります(笑)。
Commented by teri-kan at 2013-03-25 12:58
まみさん、こんにちは。

>私も先生のその後の幸福を諦めていない一人です。

おお、同志!(笑)

私も未練タラタラですよー。
今号の出番はあれだけだったし、思いっきり肩透かしでした。
でもあんな別れの描写だったからこそ、むしろこの先もそれなりに出てくるような気がしないでもないです。
願望が大いに入っていますが、モスクワ編で株大幅アップの先生を登場させないのはもったいなさすぎますからね。
たまには先生の近況を出してもらいたいですよね。
Commented by かのん at 2013-04-02 00:16 x
お返事ありがとうございました。
こちらにお邪魔します~

30号を買い忘れてしまって31号を読んだのでモヤモヤしますが^^;
やっと真澄とレオンがラブラブ!になるのかと思いきや・・・

レオンのパートナーとしての考え方は、サン・テグジュベリの同じ方向をめざして精神化を試みていると同じではと思うワケで、ラブ度が低いように感じてしまうんですよねー。

モスクワ編が始まって感じた違和感は何だろうと考えると、「白鳥の祈り」のなかではモスクワに行く前に帰国して二人で「ジゼル」を踊ったんですよね~
その時の表情が印象的だったからかも知れませんが・・・
二人はてっきりお互いを信頼し合い結ばれているものだと想ってましたわ^^;
やっとこれからでしょうか?! どう物語が動いていくのか楽しみ!!
Commented by teri-kan at 2013-04-02 12:51
かのん様、こんにちは。

サン・テグジュペリは詳しくないのですが、これのことでしょうか。

「愛するということは、お互いに顔を見あうことではなくて、いっしょに同じ方向を見ることだ」

確かにレオンはそうかもしれませんね。
というか、観念的にそれが理想だと思ってるって感じかも。
ラブ度が低く見えるのも納得ですね。

レオンの課題はそこのバランスってことでしょうか。
既にNYで失敗してるけど、とにかくこの人はひねくれ者なので、真澄との関係が深まれば深まるほど、またややこしさを発揮するような気がしますね。

>「白鳥の祈り」

そうなんですよねえ。あれ、モスクワへ渡る前なんですよねえ。
記憶が曖昧ですが、あの時の二人の雰囲気は信頼関係バッチリ!って感じだったような。
ちょっと確かめてみないといけませんね。
本棚の奥から引っ張り出さないと。
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by teri-kan | 2013-03-19 11:31 | 漫画(SWAN) | Comments(12)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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