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「ニギハヤヒ 『先代旧事本紀』から探る物部氏の祖神」

戸矢学著。河出書房新社。

むーずーかーしーいー。
でも面白い。
でも理解が中途半端。
知識のある人が読んだらスラスラわかるんだろうなあ。

この著者の本を何冊か続けて読んだけど、上手く一つにまとまらないものですかねえ。
1冊1冊手に取りやすい厚さと価格ではあるんだけど、重なってる記述を整理すればもっと著者の歴史観が大きくわかりやすく読めるのではないかなあ。

最初に読んだ「三種の神器」はこれら数冊分の考察をバックに書かれていたもので、ある意味まとめみたいなものだったのかと思いました。三種の神器はヤマト建国に際して起こったあれやこれやの象徴というか、歴史そのものだったんですね。
でもその「あれやこれや」が二千年も前のことだから、特に本書なんてもうわかりづらくてたまらない。
敗れた側だから本来の名で祀れなかったとか言われちゃったら、本当に真実は藪の中。掘り起こすのは難作業です。

本書では隕石が詳しく取り上げられていますが、こないだのロシアのあれじゃないけど、ああいった現象に神を感じるのはごく自然なことだというのはわかります。それはいいんですが、その隕石の火の神様がいろいろな過程を経て現在某神社に祀られているというのが……そこに行き着くまでの過程というのが……なんかもう難しすぎて、今もって理解しきれていない。
一つ一つの考察はすごく面白いんですけどねえ。

紀伊国の「紀」と「伊」の話なんか「へえええええ」だったし(あの辺の地名の「伊」の由来は前々から疑問だった)、渡来した神々の農耕系と海人系の分け方も納得できたし(スサノオが海を統治するようイザナキから言われてるのとも合う)、そこら辺はいいのですが、ニギハヤヒさんとナガスネヒコさんとイソタケルさんとフツノミタマさんとヤタガラスさんとフルノミタマさんと、とにかく神話のお話と実際にあったことと現在祀られている神社との関係が、もう複雑すぎて整理が大変。
最後の最後で「ヒルコ」も理解が中途半端だったことがわかって、読んでる時は楽しいけど終わってみたら頭にきちんと入ってなかった状態なのを痛感しました。

自分なりの説を持っていたらかえって理解できるのかなあ。
全く知らないから読んでみたいというレベルでは難しいのかもしれません。
でも理解しきれなくても面白いのは面白いんだよね。
我ながらこの中途半端感にモヤモヤしてしまいますね。



縄文の神を祀っていた場所に、縄文の神を押しのけて弥生の神を祀る、あるいは神々を祀っていた神社を廃して、その場所に仏教のお寺を建てるという話には、「東も西も宗教事情は同じなんだな」って感じでした。
キリスト教もそうなんですよね。キリスト教会はヨーロッパにあちこち建てられていますが、古くからある教会はケルト人の聖地だった場所に上書きするように建てられていたりする。
宗教が変わるというのは支配者が変わる、政治体制が変わるということで、歴史は勝者のものなんだということを痛感するのですが、だからこそ敗者を日の当たる場所へ甦らせるのは本当に難しいです。
でも日本の神社の在り方はもう一度日の当たる場所へ引っ張りあげることができる装置かもしれないなと思うんですよね。名を変えて祀ることができたり、場所を変えても祀ることができたりしているならば。
日本人の遺伝子って超いろいろなタイプが混在していて、縄文系の遺伝子も現在まで残っていたりとか、征服者による遺伝子の支配が起こらなかったであろう証明になっているそうですが、本書で説明されている神社における神の祀られ方とそれは一致しているように思うので、過去の解明は全く不可能ってことじゃない気もします。
どちらにしろいろいろな分野での研究がもっと進むのを待たなければならないのでしょうが、本書の更なる考察は楽しみですね。




Commented by かのん at 2013-03-29 17:06 x
はじめまして。

「SWAN」の長年のファンです。
検索で目に留まり拝見していたら、戸矢学さんのお名前を発見!
著書は持ってないですが興味があり立ち読み、読み逃げしてました^^;
このようなブログでお目にかかるとは、少し驚き・・・
一度しっかりと読んでみたくなりましたわ~。

その他、漫画に挙がっている先生方の作品も好きなのが多いです~
またお邪魔しますね。
Commented by teri-kan at 2013-04-01 11:00
かのん様、はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。
返事が遅くなってすみません。

>このようなブログでお目にかかるとは、少し驚き・・・

はい、驚かれるだろうなあと思います。
とはいえ、歴史について自説を持ってるわけではないので、「へー」とか「ほー」とかの素人感想です。
コメントいただけるような内容じゃないので、こうして書き込んで下さるととっても恐縮……。

読んでみたくなったと仰っていただけたのは嬉しい限りです。
楽しさが伝わっていたならばそれが一番だと思っていますので。

漫画の記事の方も読んで下さってありがとうございます。
是非またお越し下さい。
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by teri-kan | 2013-03-25 16:32 | | Comments(2)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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