「日本史の謎は「地形」で解ける」

竹村公太郎著。PHP文庫。

面白かったです。
いろいろと突っ込みどころはあるのですが、著者の専門分野である河川の土木工事の話は初めて知ることばかりで面白かった。

家康の治水事業はすごかったんですね。
お手伝い普請と言われると、「大名気の毒に。特に外様」と思うことが多かったんですが、後世に多大なる恩恵をもたらしていると思い知らされて、家康はすごかったんだなあと思うばかりです。

個人的に面白かったのは吉原移転の話と、吉良上野介の本拠地・吉良荘に流れる矢作川の話と、毛利輝元と水軍の話。
特に中国地方に平地がない話は、日々実感していることなので面白かったですね。征夷大将軍が最後に戦った夷の総大将は輝元だったという話は、言われてみれば「なるほどー」。

飛行機で中国地方の上空を飛ぶことがあれば、是非一度窓から地形を眺めてもらいたいのですが、ホント平地がないんですよ。笑えるくらい平地がない。
ポコポコポコポコ小山が連なって、谷あいの町も超小っさいの。
広島県人はまとまりが悪いとか、意見がまとまらないとかよく言われるけど、集落が細かく分断されているこの地形を見ると納得できますよ。中央集権的な思考から離れた思考がこれなら育まれても不思議じゃない。
毛利家が合議制をとっていて、だからこそ後の長州藩は下っ端の武士の意見も通って、彼らが活躍して革新的な維新を行えたというのは、一つには土地柄ゆえだというのは確かなんだろうなあと納得できます。
瀬戸内海も海賊が跋扈するのに最適な細々した島が無数にある海で、そんな地域にあって中央に与しない勢力を「夷」と呼ぶのは、まあ外れてはいないかなあ。

ちなみに東北の地形を空から見た時は、中国地方との差にびっくりしました。
広い。デカい。
ダーッと広い田んぼ、ドーンとデカい山。
狭い日本なのにこうもこちらの地形と違うのかと感心しました。
あんなに平地があれば、確かにあちらの農民と呼ばれた方達は、本当に農民らしい農民だったのだろうと思います。
中国地方はですね、ホント田んぼの面積ちっちゃいですからね。できる範囲で米や麦を作ったとしても、案外縄文時代の狩猟採集をしっかり続けてきた狩猟民なのかもしれないなと思ったりします。あと商売と。
飢饉や子供のまびきがなかったというのは、田んぼ面積が少なかったことが良い方に転んだってことでしょうかねえ。
まあ気候が良いのが大前提ではあるんですけどね。



本書で書かれている吉良家の運命はお気の毒です。
これだけが吉良家断絶の理由ではなく、いろいろと細かい要因がいくつも絡んでるんだろうなあと思いますが、でも大きな理由なのは間違いないような気がします。
言ってしまえば名家への鬱屈した徳川の嫉妬ってとこですか。
人間の感情としてとてもわかるし、なんだかんだで人は感情に動かされるものですから、歴史的に見て道理や理屈に合わない出来事も、案外「この人はあの人のことがただ気に入らなかっただけなんだよ」といった理由って結構多いような気がしますね。

あ、遷都が物理的な必要に迫られて行われるという話は、私もそうだと思います。
理念だけで動くものじゃないというのはその通りだし、最も大きな理由が経済的な理由というのもそうでしょう。
だから首都が東京じゃなくなる時は地震で壊滅した時くらいだろうと思います。
有事にそなえて分散しようとかできるわけない。
東京はその最後の時まで集中が続くんじゃないかと思いますね。
全然バラ色の未来じゃないですけどね。




[PR]
by teri-kan | 2014-04-03 11:49 | | Comments(2)
Commented by まるさん at 2017-05-31 19:12 x
teri-kanさま、随分前の記事にコメントしてごめんなさい。この本を読む機会があったので、少し思った所を。

 理系の歴史本は面白いですね。視点や切り取り方が斬新だと思います。江戸時代以前の関東が未開の地ではあると聞いてたけど、まさに泥濘が広がった状況だったのですね。「のぼうの城」で泥田に足を取られて苦戦する秀吉軍はまさに史実だったのか~。
 利根川の治水によって、後世の江戸から東京に至る繁栄をもたらすとは! 戦国大名は誰もが大なり小なり様々な工事をやっていますが、家康は秀吉みたいに戦や築城で土木工事をするんじゃなくて、長期計画(気の遠くなる様な)で土地そのものを根本的に変革して開墾する方向で営々と動いていた…。自分の家康観が変わる様な気もしますね。凄い人だと思います。
「吉良家」と忠臣蔵の考察も面白かったです。秀吉も家康も、古い家柄の家を再興させたり、名誉職を与えて大事にしていた様ですけど、どこかで不快な思いやコンプレックスがあったのかもしれません。吉良家に関して、以前、高家という格式の高い家柄故に、様々な出費がかさむのに、僅かな石高しかないから、儀式や有職故実を教授した礼金や賄賂を貰う必要があったと聞いた事がありました。変に深読みをすれば、幕府は吉良家をわざと貧乏な状況にして、何か起こる事を期待してたって事なのかしら?

 鎌倉幕府の事も、目から鱗が落ちる思いでした。鎌倉は良く出掛けますが、切通しと呼ばれる狭い道が四方八方にいくつも放射線状に広がっているんです。そして狭い! 山と海に挟まれて民家や神社仏閣がひしめいています。
 こういう理由なら、本当に納得出来る。まるで島流しみたいな鎌倉政権の意味合いも、実に理に適った物として腑に落ちます!
 実は、山岸涼子の「日出処の天子」を一気読みしちゃったので、古代史関連の本などを少し読んでいました。この本は奈良の事も出ていたので図書館で借りて見たのですが、凄く面白かったですね。
この方のバレエ漫画も大好きですが、改めて、凄い才能だな、と思います。

 長々とまとまり無く書いてしまい、失礼しました。
 ムカデに刺されたお怪我、大事になさって下さいね。 
Commented by teri-kan at 2017-06-01 11:16
まるさん様、こんにちは。

>理系の歴史本は面白いですね。

本当に!
こういう視点抜きで歴史は語れないなあと思いました。

そうなんですよね。この本を読むと家康の評価がぐんと高くなるのです。
家康あっての今の日本みたいな感じ。
明治以降徳川の功績って小さなものにされてるけど、こういうことはもっと大々的に授業で教えるべきじゃないかなと思います。
今の日本のあり方にも直接関わってることですし。

鎌倉の話も「へえええ」でしたね。
京都を冷静に見てみたら「そう言われたらそうだな」ですし、鎌倉は良い場所だったんでしょうね。
自分の住んでいる地域についての記述は実感を伴って読めるので私も楽しかったです。
腑に落ちる感覚が楽しい本でした。

>山岸涼子の「日出処の天子」

おお、傑作ですね。
後から思えば思うほど「よくこんなの描けたなあ」と感心する作品です。
異才というか、ほんとすごいもの描いたなあと思います。

ムカデに刺されたところは昨晩から回復傾向に向かっています。
お気遣い下さってありがとうございます!
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< この1週間のサッカーの出来事 春ですね >>