長期中断期間を抱える長期連載モノ
2014年 06月 02日
まあ書いてあることは尤もなことばかりで、具体的に評価点をつけると「そんなもんかもしれないなあ」と思いますが、個人的には続きが出るだけでOKなので、私はあそこまでボコボコには叩けないというのが正直なところです。
まあ叩くのも「アルスラーン戦記」への愛あればこそなんですが。
結局みんなこの作品が好きなんですよね。
長期連載の宿命とでも言うんでしょうか。
当初の予定通り前世紀中に書きあげておけば、少なくとも現在のようなことにはならなかったでしょうね。
十六翼将の死に方については叩かれても仕方ないですし、特に「銀河英雄伝説」を知ってる人間にしてみれば、あれとの違いを嘆かずにいられないのもわかります。
「銀英伝」もたくさんの主要人物が死にますが、皆意味のある死に方でしたもんねえ。
ストーリーの構成的にも、その人物の生き方や人生観的にも、これしかないという死を与えられていました。
それと比較すると、「アルスラーン」の十六翼将の四人は不憫です。エステルも不憫。
なんていうか、皆「都合で」殺された感がしてしょうがない。
これ以外の死に方でも構わないだろうというような説得力のない死に方というか。
それが皆ひっかかるんだろうなあ。
私もそこが大いにひっかかる。
まあ悪意を持って見れば、悪意でこういう死に方にしたのかなという見方もできる。
エステル=弱者に優しい善意の人 → 善意があだとなって負傷、それがもとで死亡。
ザラーヴァント=陽気で民衆から人気 → 陰気な地下で従兄に背中を刺され死亡。
トゥース=冷静沈着で広野の戦いが得意 → 即座に陛下を庇って建物内で大理石の下敷き。
グラーゼ=根っからの海の男 → 陸で戦ったあげく空から落とされて石畳に激突死。
なんかねえ、みんなこれってどうよって感じなんですよねえ。
唯一まともなのがジムサで、ジムサはそれなりの死に方を与えられたように思います。
物語の最初からその構想が入っていたからかな。彼の人生の描き方には1部も2部も納得でした。
なんかね、ろくな死に方を与えられないから、だからもう登場人物を殺さないでくれっていう感想にもなっちゃうんですよね。
純粋に死んでほしくないっていうのが一番だけど、13巻と14巻で書いた感想の「誰も死にませんように」という言葉には、実はそういう意味も含んでたりする。
やっぱり9巻から10巻の間が長すぎましたよねえ。
10巻を読んだ時、ああもう昔とは違うんだなと覚悟ができたので、その後どんな展開になろうと物語が進むこと自体を楽しもうと思って楽しく読んできたのですが、お話の展開はともかく、登場人物の死に方だけは「うーん……」って感じ、どうしてもしちゃいます。
まあでもしょうがない。これが長期連載、長期中断期間をはさんだ連載モノの宿命だ。長い年月、作者の気力に浮き沈みが出るのは仕方ない。若い頃と同じ筆力を望むのは酷だし、作者同様読者も年齢を重ねて素直さは失ってる。
お互い様といえばお互い様。むしろ続きを書いてくれるだけマシなんだ。
こんなのなら未完で結構という人もいるだろうけど、完結に向かって進まないなんて、個人的にはそっちの方がありえないし。
そんなもろもろを考えさせられた「アルスラーン戦記」でした。
まあ「アルスラーン」はまだマシですよ。「創竜伝」はどうにもならなくなってる。
でも小説は漫画よりはどうにかなるかな。
漫画が長期中断したら内容はともかく絵の変化は避けられないし、たいていは劣化の方向に変化するからガッカリ感がより深いんですよね。
実はとうとう「クリスタルドラゴン」が再開されるということで、ものすごく喜んでるんだけど、ちょっと怖い気持ちもなきにしもあらずなんです。
でもやっぱり描いてくれるだけで嬉しい。
ファンの心理は複雑です(笑)。
なんだかんだ文句言っても書いてくれてこその文句だし、作者には頑張ってもらいたいですね。
いろいろ大変でしょうが、長年のファンのためにも完結だけはよろしくお願いしたいです。