「日本神話の論点」

吉田敦彦著、青土社。

スサノオとオオクニヌシのキャラがとてもわかりやすくなったので、読んで良かった一冊。








「スサノオはなぜ罰を受けても偉大な神であり続けたのか?」というテーマは、これまであまり深く考えず、とても単純に「スサノオはスサノオだから」といった受け止め方をしていたけれど、オオクニヌシがスサノオの託宣通りに立派な国作りをしたからというのは「へえー」でした。

オオクニヌシの国作りについてはかなりページをさいて説明してくれましたが、その事業は敗者となったオオクニヌシを大きな宮にまつるほど、事業を託宣したスサノオを偉大な神と認識させるほど、素晴らしいものということなんでしょうね。
一緒に国作りを行ったスクナビコナが粟の種の神様というのにも、「なるほどー」でした。
一気にスクナビコナ像が固まって、これまた彼を理解しやすくなりました。
種の神様だと思うと妙に可愛らしいイメージになりますね。

可愛いといえば実はスサノオも。
そうなのです。言われてみれば、彼は身内の女性になぜか粘着する男。
マザコンで、シスコンで、娘激ラブのどうしようもないオヤジ。
ていうか、これまでスサノオの外見って、髭がボーボーになるまで泣いてたことからオッサンの風貌で頭に描いてたんだけど、「姉上姉上」と後々までアマテラスに精神的に寄りかかってるのを見ると、若い外見なのが正しいんでしょうね。
高天原で乱暴狼藉を働くのも、「お姉ちゃんなら許してくれる」「ボク弟なんだから許してくれるよね?」という甘えがエスカレートしていったからという解説には目から鱗でしたよ。初めてあの意味不明な乱暴狼藉の理由が理解できたかもしれん。
「ママンに会いたい!」(ダダをこね泣き喚く)、「お姉ちゃんはボクが好きだよね?」(乱暴の限りを尽くす)、「娘が結婚して家を出ていくのは許さーん!」(婿をイビリ倒す)という、スサノオってこんなの身内にいたら絶対イヤだというような男だけど、ヤマタノオロチ退治という大きなことをやってのける能力はある。
というか、力はもともとすごくある神様で、だからこそママン会いたいと泣くだけで世の中大変なことになってしまうわけだけど、にしてもこのスサノオの愛に飢えてるキャラクター、なんでこんな人物像にしたのか、不思議だ……。

愛に飢えてたスサノオとは逆に、母を始めいろんな女神から愛されまくったのはオオクニヌシ。
いやあ、ものすごい人です。フェロモン過多の精力絶倫男。
美男子だったんでしょうねえ。幼少時から女の目をとらえて離さない男の子っていますけど、おそらくそんな少年だったのではないかなあ。
比較すればするほどスサノオとオオクニヌシは正反対ですね。



出雲の神は歴史の上では敗者ですが、そんな敗者でも貶められることのない日本の特異なあり方を説明するのにもう一つ、海幸彦と山幸彦、九州の隼人と天皇家の話に本書は進んでいくのですが、個人的にはもう一つのテーマ、太陽の子供は二人の母親を持つという解説が面白かったです。
インドヨーロッパ語族の神話にも生みの母が岩、育ての母が人間というお話があるそうですが、天孫の血筋がアマテラスの腹を痛めて生まれてきた子ではないというのが共通点としてあるそうです。
勾玉が生んでアマテラスが育てるという、なるほど言われてみれば似てるという構図は、その後のコノハナサクヤヒメともう一人の母になるはずだったイワナガヒメの話とも繋がるそうで、本来ならコノハナサクヤヒメの子の山幸彦も二人の母がいるはずだったということなんですね。で、片方は岩(イワナガヒメ)という、まさしく大陸由来の神話がもとになっているという構図。勾玉も岩も鉱物だし。
で、母親の片方が醜いというのは、山幸彦の子にも受け継がれて、生みの母の醜い鮫(トヨタマヒメ)と育ての母という、母親が二人いるという話にきちんとなっている。
これ全て太陽の血をひく子供のパターンであるという、なかなか面白い説だったですね。

天岩戸から太陽が出るためのアメノウズメの裸踊りと、地上に太陽の光が届くことを意味する天孫降臨の際のアメノウズメの裸踊りも、やはりインドヨーロッパ語族の神話で似たようなものがあるらしく、太陽が出ることと女性の裸踊りは深い関係があるらしいです。
面白いですね。
女の裸踊り → 男が笑い感動する → ご来光。
正直言ってよくわからん……。

この辺は新しく取り入れられた神話とのことでしたが、今伝わってる古事記や日本書紀の内容がどういう風に加えられたり削除されたりしてきたのか、そういうのがわかったら面白いなあと思いますね。
外国由来の神話を削ぎ落としたものが日本人が語り継いできた神話や歴史になるというわけで、その辺の研究がどんどん進むことを期待したいものです。




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by teri-kan | 2014-08-04 11:42 | | Comments(0)
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