「富士山、2200年の秘密」

著者、戸矢学。かざひの文庫。
副題は「なぜ日本最大の霊山は古事記に無視されたのか」。
富士山と、その霊力の恩恵にあずかっている関東について考察した本です。



西日本の中でも都から離れた地域に住んでいると、実は富士山って遠い存在なのです。
富士信仰と言われても、正直あまりピンとこない。
だから記紀に富士山のことが載ってなくても、そんなものかとしか思わない。
姿の美しさにはホレボレしてるんですけどねえ。

本書を読んで、東京から埼玉に向かう電車の中で富士山を窓の外に見た時のことを思い出しました。
東京タワーなどから見るのとは違った感覚で、「関東人にとって富士山は日常なんだな」としみじみ思ったものでした。
西の人間が「日本のシンボル」と観念的に捉えるのとは違って、東の人にとって富士山はまさしく生活に溶け込んだオラが山。
だからこの本は富士山が身近な関東の人こそ読んだらいいかもしれません。
発見された古墳から関東にはかなり高度な王国があったのではないかと言われていますが、それについての考察も面白かったし。








ただ、ページ数の割に書かれている内容の範囲が広すぎて、面白いけどところどころ大雑把といった印象を受けます。
最後に著者が明かしている通り、カットされた部分が多いのでしょう。
特に富士山と天皇家との関わりの解説は、もっとしっかり書いて別口にでも発表してほしいと感じました。
強奪と言われる国譲りで得た王国と霊山富士をヤマト朝廷はどう扱ったのか、やっぱり知りたいですよねえ。

伊勢神宮内宮と富士山の関係の微妙さを読んでると、天皇家は富士山を嫌がったり後ろめたく思いこそすれ、大切にしようという気はほとんどなかったかのようだし、強奪してまで欲した王国の力の源泉である富士山をどう考えていたのか、いろいろ疑問に感じます。
八咫鏡(アマテラス)を安置する場所選定にあれだけ長い年月がかかった理由も、この説でいくなら次のようなことになるんですよね。
「絶対に富士山と関わりのない場所にしたかったけど、そうもいかないことがようやくわかったので、富士の霊威を感じる場所にしつつも、富士山そのものを見ることのできない所に八咫鏡を置くことに決めた」ってことに。
となると、八咫鏡が宮中から出なければならなかったそもそもの理由、崇神天皇の時の疫病の裏事情も知りたくなるし、とにかく伊勢神宮内宮が富士山から隠れるように立っている事実があるのなら、藤原氏にとってではなく天皇家にとってこそ富士山はタブーだったのでは?という気もしてきます。
富士の記述を日本書紀に載せたくなかったのは、天皇も同様だったのではないですかねえ。
特に天武天皇は富士山をどう捉えていたのか、陰陽道に詳しかった天皇だし、斎宮制度を確立させた天皇だし、いろいろ気になることが出てきますね。

本書には疑問点と共になるほどーと思えるところもたくさんあって、例えば中臣氏と物部氏の出自の近さについては、神事・祭祀を重んじてるところを思えば大いにありえるし、石上神宮の祭神フツノミタマの正体なんて、「そうだったのか!ホントにそうかも!」としか言いようがないです。
初めてフツノミタマを実体を持って感じることができました。
これが本当なら面白すぎますね。

ただ、いよいよ風水について真面目に勉強しないといけないかなあって感じ。
それなくしては家康の埋葬の仕方の理由も語れませんものねえ。
知らなかったらただ単に「昔の人は大仰で無駄なことが好きだったんだな」にしかならないし、西洋を理解するのにキリスト教の知識が必要なのと同じで、少なくとも江戸時代より前の日本を知るには風水は必須の知識ってことなんでしょう。

でも「陰陽道」ならなんとなく立派な科学のイメージなのに、「風水」と言われると、迷信深いおばちゃんが家相を気にしてアタフタするというイメージになってしまうのがなんとも……。
風水=トイレの場所、というのがこびりついちゃってるんだよなー。
いや、そういうのをバカにする気は全くないんですが、風水という言葉のイメージってイマイチだよなあとは思います。



ちなみに富士山の8合目から上は、私にとって地獄にも近い苦しみの場所でした。
血の巡りの遅い人、肺活量の小さい人にはあそこは向いていません。
最後の辺りは5メートル進むのに10分はかかってた。
頂上を目にしながら進めない苦しさ。
しんどい記憶しかありませんよ。

登山が趣味の知人によると、富士山は他の山に比べて圧倒的に登っても楽しくない山だそうですが(景色がずっと同じだかららしい)、私も富士山は「全体を見る山」だと思います。
外から見るのとその場所に立つのとでは全く違う山ですよね。
富士山って美しいけど超厳しい。
基本的に怖い山だと思います。
(ていうか、山は本来怖いものだよね。)




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by teri-kan | 2014-10-17 11:51 | | Comments(0)
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