「精霊の守り人」

上橋菜穂子著、新潮文庫。

多くの文学賞を受賞している「守り人シリーズ」の第一弾。
面白いと薦められ、この度読んでみました。

以下は少々ネタバレありの感想になります。








素敵な作品でしたね。
もったいぶらず、無駄がなく、非常にわかりやすく、イキイキしている。
主人公が年くってる上に、物語世界を成り立たせる思想がえらくしっかりしていて、「これって児童文学なんだろうか?」と思いましたが、作品全体の品の良さが児童文学と思わせてくれます。
美しいお話でしたね。
書かれてあることは身も蓋もないこの世の厳しさだけど。

最も印象的だったのは雲の精霊の夢のシーン。
描写が素敵でした。
あー、綺麗だなーと、心底から思いました。
チャグムが一人で目的地に向かうところの情景描写は、ここ以外もとにかく素晴らしく、特に二つの世界の重なり方は、その文章が脳に入って映像に変換されることの無理のなさに自分でも驚くくらいでした。
児童文学者って高い文章力がないとそうそうなれるものではないんだなとしみじみ痛感。



卵を自分の体の中で育てることの重さは、ちょっと考えさせられます。
人間の女性の場合でも、望まない妊娠をした人の、体の中で成長する胎児に耐えられなくなる話があったりしますが、意志に反して母体になるというのは非常に厳しいんですよね。
ましてや本作で育てるのはアレ。
運命だと割り切るには重すぎたでしょう。

しかも卵は卵なわけで、この卵の生命力の描写がこれまたすごいのですが、教えられなくても本能で行くべきところに行くという、ここの話は感動ものです。
でありながら、食べられるために生まれてきてるのか?としか言いようがないような天敵との関係性。
ここも結構露骨に描かれます。
この辺の自然の理の描写が容赦なくて、この話ってそういう意味でとことん生命賛美の物語なんですが、食うか食われるかの命の闘いの上にそれはあるっていうのがね、なんかハードな児童文学だなあということになっちゃうんですよね。
まあ子供用の童話ってそもそも身も蓋もない話だったりするので、案外子供達はすんなりこういうのを読んじゃうんだろうけど、大人として読んだら、結構深刻に受け取らざるをえないようなお話でもあります。

とまあ、真面目に語ってみましたが、基本は女用心棒のスーパー活劇と少年の成長物語であって、終わりまでノンストップで読み進められるワクワクファンタジーです。

次は「闇の守り人」。
まだまだ先が楽しめるので嬉しいですね。
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by teri-kan | 2015-01-26 16:39 | 本(上橋菜穂子) | Comments(0)
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