「蒼路の旅人」

上橋菜穂子著、新潮文庫。

守り人シリーズの第五弾。
タルシュ帝国の脅威に晒される新ヨゴ皇国のために何をすべきか。
皇太子としてのチャグムの苦悩と決断が描かれています。

以下は感想と激励です。








チャグムがんばれ!超がんばれ!
もー、それしか言いようがない!

自分が新ヨゴ皇国の人間だったら、涙涙の皇子様ですよ。
「おいたわしや、皇太子殿下」ですよ。
可哀想にねえ。なんでこんなことになってしまったのか。
これはもう、本当にしんどいだろうなあ……。

ソリの合わない父子というのは普通にあるものですが、チャグムの場合はこれまたいろいろと不幸で、それもこれも例の卵を抱えさせられちゃったのが原因なんですよねえ。
おかげであらゆる垣根、境を越えられる人になっちゃって、それは異世界とこの世界の境であったり、皇族と臣下の垣根であったり、貴人と平民の垣根であったり、今回は自らの意思でなかったとはいえ大海さえ越えて、とんでもない過酷な体験をさせられてしまうわけですが、幸か不幸か例の卵の経験のおかげで、チャグムはそれらを真正面から受け入れることがなんとか出来てる。

というか、ここまでくると卵のおかげでチャグムの幅が広がったというより、チャグムの器の大きさを見越して卵は彼に産み付けられることを選んだのではないかというような気が。
チャグムが先か卵が先かみたいな話になってきたけど、もしそうであるなら、この時代にチャグムが卵に選ばれたことの意味を求めたいものです。
皇子でありながら様々な垣根を飛び越えられる人になったことが、国を救う一手になってくれればと、読み終わった時は切実に思いましたね。
バルサにすがって泣いてた姿がいまだ強烈に残っているので、それを思うこと自体が彼には申し訳ないのですが。

チャグムにとっては民衆の期待も想定外でしたよねえ。
あれのせいで元々良くない父子仲がますます険悪になっちゃった。
うーん、歌。
どう考えても歌のせいだよね。
例の花の種を持ってる風のような歌い手のせいなのですが、でもあいつはホントに風のようなもんで、風に責任は問えないのと同じように、彼が悪いとはちょっと言えない。
でも「風が吹けば桶屋が儲かる」よりは確実に因果関係がはっきりしてて、やっぱり原因は風に求めてもいいような気がしてくる。
なんかホントにいろいろなことがチャグムに不運なんだよなあ……。

なんかもうね、最初から最後までチャグムが可哀想で、器の大きな皇子に生まれ育っちゃったらこうまで大変なのかと、一般庶民としてはただただ辛いばかりでした。
自分の力だけが頼みだが究極に自由な人生を生きてきたアウトローのバルサが、究極に縛られた人生を送っているチャグムをどう思うのか、かなり気になります。
既にチャグムは精神や魂まで縛られて、死すら自由に選べないところまで来ています。
死を覚悟する彼には泣けたけど、死を許されなかったことにも泣けた。
弱冠15歳の少年がそれらを強いられてることも胸に痛い。
もう、最初から最後までチャグムが可哀想な話でしたねえ。
最後の決断なんて、ああああああー。

タイトルが「蒼路」なので、南に向かう船の描写で「ああ、そうね。青い空、青い大海原、蒼路だね」と思って読んでいたら、なんと最後の最後にとんでもない蒼路が出てきて、でもそういえば「蒼」のイメージって、太陽に照らされたキラキラした青色ではなく、月明かりに浮かび上がる深い青の方が近いんですよね。
やっぱりチャグムの旅路は大変な旅路なんですよ……。
「虚空の旅人」の時は精神的な旅って感じだったけど、今回はとうとう心身共に旅というか、旅というのも生ぬるい旅で、文字通り身一つで暗い大海原の中に漕ぎ出して、ホントにもう、なんとか頑張ってほしい……。

そういえば、タルシュ帝国は古代ローマかモンゴル帝国か、あの辺りのイメージでしょうか。
現実の歴史を振り返れば、この大きな時代の流れに抗うのは大変難しいのですが、なんとか北の大陸の三国には頑張ってもらいたいものです。
いやー、こういう時こそ「なんとかタルハマヤ」の出番ではなかろうかと考えてしまうのは、危険思想すぎて大っぴらに言えないのですが、でもタルシュの王子のえらそうな態度を見てたら、「出でよ、タルハマヤ!」と言いたくもなってきます。

タルハマヤじゃなくても何でもいいから、とにかく何か出てきてチャグムを救っておくれ。
今となってはこちらもなりふり構っていられないというか、とになく何が何でもチャグムを助けてほしいと願っています。
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by teri-kan | 2015-02-12 09:57 | 本(上橋菜穂子) | Comments(0)
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