「古代史の謎は「海路」で解ける」

長野正孝著、PHP新書。

「日本史の謎は「地形」で解ける」の著者、竹村公太郎氏も推薦!と書かれてあったので、読んでみました。
検証すべき点や「断言しすぎでしょ」と突っ込みたくなる箇所等ありましたが、港湾・運河のスペシャリストとしての視点は面白く、こういった視点無しの歴史研究はもはや片手落ちと言うべきなのではないかと感じました。
日本は古代より海人族によって発展してきた国だというのは疑いようのない事実なわけで、それならば造船技術と航海技術、海路の開発と港の造成、そういった面からの歴史の掘り起しは必須でしょう。
というか、むしろなぜ今まで大々的にそのような視点で語られることがなかったのか。
机の上で文字だけ読んで、魏志倭人伝の倭国までの日程をアレコレ考えるっていうの、よく考えたらおかしな話でしたよねえ。

で、肝心のこの本の中身の感想ですが、内容が多岐に渡りすぎていて、いちいち細かく書けないというのが正直なところです。
ただ、出雲王国の衰退については、結構マジで恐ろしいと思ってしまいました。
国譲りの神話がどこまで本当なのか、譲った地域がどこなのかという問題はさておき、出雲の繁栄が衰えてしまった理由については、本書の説はなるほどと納得できるものでした。
そして、経済が衰えることの恐ろしさも痛感しました。
経済の衰退は国の衰退なんだなと、今更ながらに感じられて、今現在でも政治に求められてるのは第一に経済政策と景気の回復だったりしますが、やっぱりそれが基本なんだよなと思ってしまいましたね。

この本の説得力はそういったところにあると言うか、言い方が正しいのかどうかわかりませんが、日本って現在はもちろんのこと、古代からバリバリの土木建築国家なんですね。
インフラ整えるのに命かけてる国というか、日本って普通に雨が降ればそれだけで川の道筋や海岸線が変わってしまう国で、今は砂防ダムがあらゆる川の上流に作られているから黙っているうちに地形が変わるってことはなくなったけど、昔は刻一刻と変わり続けていたから絶え間なくインフラ整備に精を出し続けるしかなかったんですね。
でないと物流が即アウト、経済的に立ちいかなくなってしまうのです。
インフラ整備と日本人が生きていくことはセットで、それは自然の驚異に命がさらされる以上に、経済的に死んでしまうからというのが大きくて、今も日本は景気対策と言えば箱もの作ったり高速作ったり、「そんなに急いでどこにいく」と揶揄されながらリニア開発したりもしてるのだけど、それって二千年だか三千年だかの歴史の積み重ねによる必然であって、そういうところの納得感がですね、この本にはあるのです。

出雲や丹波といった古代の王国の王をその当時の有力産業の会社の代表者のようなたとえ方をしてたのなんて、日本の最盛期に日本株式会社と言われてたのと同じですしね。
日本って古代からそうだったんだと考えたらいろいろつながるし、古代と現代もつながります。
日本という国がどういう国なのか、更に理解が深まります。

正直言って、どの天皇が誰それといった件については、この本をそのまま鵜呑みにはできないのだけど、天つ神が天皇の一族で国つ神が庶民という分け方など、賛成したくなることの多い内容でした。
例えば住吉の神の正体とか、そう言われればなるほどーです。
全国各地の記紀に載っていない神の正体については、本書の説は結構有力なのではないでしょうか。

瀬戸内海航路を開いたそのやり方がおそらく本書のメインになろうかと思いますが、これに絡めた神武東征についての研究が重ねられることを期待したいですね。
この本だけでも納得させられちゃいますが、おそらくプロの歴史学者はいろいろと受け入れられないだろうなあと思うんで、そういう方達による更なる深い研究によって新たな発見があればいいなと思います。
瀬戸内海は身近な海なので、是非是非。
もっと知りたいことたくさんあるので。



それにしても、川を道として考えれば、水の道を水道と呼ぶのがものすごくしっくりきます。
始めて尾道水道とか豊後水道などといった名称を聞いた時は、ものすごく違和感を覚えたものですが(それまで水道と言われたら蛇口から出てくる水の通り道のことしか頭になかった)、この本を読んだらそういう名付け方があまりにもピッタリきすぎて、水道管の水道の方が新しい意味だと実感しました。
ホントに道なんですよ、道。
水の道。船の通る道。
海洋民族ってこういうことかあと、いろいろな面で納得させられる本でした。
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by teri-kan | 2015-05-07 09:03 | | Comments(0)
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