「獣の奏者」 闘蛇編・王獣編 その1

上橋菜穂子著、講談社文庫。

現在「2015本屋大賞受賞作家の作品」として、近所の本屋さんで上橋菜穂子コーナーが作られています。
賞の格から言えば去年の国際アンデルセン賞受賞の方が大ニュースのはずですが、去年はこういったコーナーは(少なくともこの本屋では)作られていなかったような。

賞自体の国内での知名度の差でしょうが、今後はもしかしたら「あの上橋菜穂子が受賞していた国際アンデルセン賞」という言い方がされるようになるかもしれません。
それくらい信頼度が高い作家というか、子供から大人まで、多くの人に深い印象を残す作品を届けてくれる作家として、ずっと愛され続けるのではないかという気がしています。

この「獣の奏者」は本屋大賞受賞作「鹿の王」がどっさり積まれた横に、「守り人」シリーズと並んで文庫本が平積みになって本屋さんに置かれていました。
以前から読もうかどうしようか悩んでいたのですが、こうなっているのをみると「読め」と言われてるような気がするものですね。
有名な賞を受賞するってやっぱり大きいなあ。
で、文庫本というのがまた良い。
かさばらない文庫は庶民の味方です。



さて、「獣の奏者」は本編4巻、外伝が1巻の計5巻で発売されています。
なので少なくとも4巻分を読まなければこの話を起承転結で楽しめないような気にさせられますが、実はもともと「獣の奏者」は第1巻闘蛇編、第2巻王獣編の計2巻で完結していた物語でした。
だから、「読みたいけど長そうだなー」とためらわれたなら、とりあえず最初の2巻だけ読んでもOK。
第2巻王獣編のラストは素晴らしいです。
長編小説ならではの長い物語の締めくくりのカタルシスが味わえます。

が、私はそのカタルシスがイマイチ十分に味わえなかったのでした。
なぜなら「これは4巻のうちの真ん中で、まだ長い物語の途中経過でしかないんだ」と思い込んでいたから。
直後のあとがきを読んでビックリしましたよ。
「獣の奏者」は最初はこれで完結だったと書いてあって、「だからか!」と納得するわ、これで終わりと大感動していいのやらどうなのやらわけわからんかった読後感の理由にガッカリするわ、なんともいえない気分になったのでした。
2巻で完結すると知っていたならそれなりの読み方をしたものを、なんてもったいないことをしてしまっだのだ、なんでこうも不親切なのだ講談社文庫!と悔しく思うやら、とにかくとても微妙な気分になりました。

どういう方法でもいいので、最初の2巻、闘蛇編と王獣編で物語はとりあえず完結するということをわかるような表記にした方がいいんじゃないかと思いましたねえ。
作者が伝えたかったテーマ的にも、読者の読み方的にも。
例えば闘蛇編と王獣編を本編として、3巻探求編と4巻完結編を続編にするとか。
実は現在探求編を読んでいるところで、読みながら「これは続編という扱いでいいんじゃないか」とか思ったりもしてるわけで、とにかく2巻と3巻の間には大きな隔たりがあることを明記するべきではないかと思います。

まあ完結編まで読んだらもしかしたら感想も変わるかもしれませんが。
でも変わったとしても王獣編を読んだ後のビミョー感には変わりないわけで、なんていうか、うーん、やはり残るもったいない感。
もっと単純に感動したかった。
王獣編のラストが素晴らしかったからこそ思うわけで、作者がこのラストを究極だと考えていたというのはさもありなん。
緻密でありながら余白の大きな余韻がもたらす感動はそりゃあ大きいですよ。

この物語のテーマの壮大さにホント素直に浸りたかったなー。
王獣編の完結にとことんまで浸りたかったです。



というわけで、内容の感想は次回に。
この作者の作品は、やはりとても心地良いです。
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by teri-kan | 2015-05-18 14:51 | 本(上橋菜穂子) | Comments(0)
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