「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告」

エマニュエル・トッド著、文春新書。
世界情勢を語れるような知識はありませんが、面白かったのでご紹介。








日本にとってウクライナ問題は遠い地の出来事ですが、中国の海洋進出にピリピリしている身としては、中国とドイツの仲良しぶりに穏やかではいられない。
一体ドイツってなんなの?
……ということで、手に取ってみた一冊。
日本にいてはわかりにくいドイツ一人勝ちのEUの問題が書かれており、今の世界を理解するために有益な本ではないかと思います。

エマニュエル・トッドは人口動態からソ連崩壊を予想した高名な歴史家・人類学者で、日本の新聞にも時々インタビューが載っており、これまでも興味深く読ませてもらってました。
本書もインタビュー形式で読みやすく、さくさくページが進みます。
タイトルが大仰なのでとっつきにくいですが、案外気楽に読めるのではないでしょうか。

内容はドイツがメインですが、トッドがフランス人ということで、フランスの事情も細かく書かれています。
どちらかというとフランスに対する批判の方が読んでて印象に残ったくらい。
フランス指導者に対しては容赦なくボコボコでしたね。
自国の政治家には誰も厳しいものだけど、ホントーにボコボコだった(苦笑)。



いろいろと興味深いことが書かれていましたが、この本の中で最も印象に残った言葉の一つは以下の部分でした。

「ドイツというシステム」は驚異的なエネルギーを生み出し得るのだということを認める必要がある。(略)同じことを日本についても、スウェーデンについても、あるいはまたユダヤやバスク地方やカタロニア地方の社会文化についても言うことができる。好むと好まざるとにかかわらず認めるほかない事実として、ある種の文化はそんなふうなのだ。」

ドイツはもとより日本もそうだと言っていて、ちょっと目からウロコ。
「あー、そういうことかあ」と、妙に納得できました。
何がそういうことかと問われると説明しづらいのですが、トッドが挙げた国を並べてみると、国家としてのエネルギーという意味で随分わかりやすくなります。
普通にその国のやり方で頑張るだけで、なぜだか突出した存在になるというのは、その中にいると気付かないものですよね。
日本のことを言うと手前味噌になるかもしれないけど、普通に日本のやり方で平和的に頑張っても、それが驚異的なエネルギーになってしまえば、そのエネルギー自体が文字通り他国にとって脅威となる。
ホントにただ普通に頑張ってるだけなのに。
ドイツへの指摘は、結構日本としても考えさせられるものであります。
ただ、帝国的なものを志向しているのは、ヨーロッパのドイツに対してアジアでは中国ですけどね。
大陸国家という共通点も原因としてあるのでしょうか。
どちらも形態は違うとはいえ帝国としての歴史を歩んできた国だし、比べてみると日本の大日本帝国って、名前は帝国だけど、なんか全然それっぽくないような気がしてきました。
帝国って……よくよく考えたら日本人の気質に合ってない形じゃないですかね。

で、ドイツはといえば、こうして読んでるとやっぱり帝国気質ってことなのかなー。
なんかね、こういうタイトルをつけられると、「ドイツまたなのか?」と必然的に思ってしまいますよ。
「またなのか?」というのは、また世界大戦の原因になるのか?ってことなんですが。
戦後70年であると同時に戦前でもあるような言い方をされる昨今の世界情勢ですが、物騒すぎる発想は勘弁してほしいです。
「ドイツ帝国」という言葉は恐ろしいですよ。
言葉だけのことに終わりそうになくて恐ろしい。
中華帝国についてはフザケンナって感じだけど。



収められているのはほぼ1年前のインタビューだし、こういうのって「予測が当たった」「外れた」といった読み方もできるのだろうけど、ヨーロッパ情勢に詳しくない人間にしてみれば、その各国の性質を詳しく知ることができただけで面白いと思えました。
東ヨーロッパ内の差異についての引用文なんて秀逸でした。
「1956年にハンガリー人はポーランド人のように行動した。ポーランド人はチェコ人のように行動した。チェコ人は豚のように行動した。」

1956年はハンガリー動乱が起こった年ですが、ソ連へのそれぞれの国の抵抗の仕方が身も蓋もない言い方で表現されています。
こういうのってわかりやすくていいですよね。
欧州人は例の下品な風刺画もそうだけど、表現がえげつない(苦笑)。
わかりやすさはあるけど下品だわー。

あと、しきりに「ドイツ嫌い」という言葉が出てきたところが面白かった。
エマニュエル・トッドは「ドイツ嫌い」だとさんざん言われてるみたいですね。
個性や特徴をありのまま言葉にしたら「嫌い」というレッテル貼りをされてしまうのかあ。
「ドイツ人差別だ」という批判はされてないのかね?
力のある国や人種への忌憚のない物言いは差別とは言わなくて、ただ「嫌い」という表現になるということ?
これはかなり繊細な問題なので、そこのところだけでも別に読んでみたいなあという気になりました。



とまあ、いろいろと楽しめる1冊です。
書かれてあるのは欧州のことですが、日本を考える上でもとても役に立ちます。
ロシアとのおつきあいが必要な日本にとって、ここに出てくるロシア評も参考になるかと思います。
全く信用できない国だけど、ちょっと見方が変わるかもしれません。
ホントにちょっとだけだけど。




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by teri-kan | 2015-06-10 16:33 | | Comments(0)
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