「新訳 フランス革命の省察」

副題は、「保守主義の父」かく語りき。

エドマンド・バーク著、佐藤健志編訳。
PHP研究所。
1790年出版の原書の要約版です。







今更ながらフランス革命が気になりだしたのは、今年初めのシャルリ・エブド事件のせい。
フランス人にとって自由がどれだけ大事かということを、テレビでも新聞でも繰り返し解説していたからです。

どうやらフランス人にとって自由とは自らが勝ち取った至上の権利のことであるらしい。
勝ち取ったフランス革命は、だから彼らにとって人類の勝利と言ってよいほどのものであるらしい。
しかしあれを勝利とされると、こちらとしては「うーん?」となる。
フランス革命と、それによってもたらされたナポレオン戦争で殺害された人数は膨大です。
例の恐怖政治だけで死者は60万、あるいは80万。
それだけ大量の犠牲者が出たならば、普通は人類の勝利ではなく人類の敗北と言うべきでしょう。
しかも国王を処刑しておきながら皇帝を出したり王政復活させたり、何やってんだとしか言いようがない迷走ぶり。

革命や混乱は後の世のドラマにはなるけど、当時生きてた人間にしてみればたまったもんじゃない。
彼らの犠牲のおかげで今の自由がある、よかったねー、なんて言ってる場合でもない。
自由を得るのはいいけど、そんな手段しか取りえなかった自分達の不明を恥じる方が正しくないか?
命あるものとして大事なのは何より殺し合わないことであり、そこを失敗した時点で人類として大失敗の評価を下すしかないと思うのだけど。
まあ、だからこそ自由を勝ち取ったのは自分達という自負だけでも守らなきゃと必死なのかもしれないが。
でないとホントに失敗だけになってしまうしね。
とはいえ、その自由とは他者の宗教を侮辱してもよいという、なんとも微妙なシロモノだけど。



前置きが長くなってしまいましたが、そういったわけで一月以来、一体フランス革命の評価ってどうなってるんだろうという疑問がわいていたのです。
まともに評価したら全く褒められたものではないんじゃないかと。
で、この本を読んで、「やっぱりそうだよね」ってことになったという。
フランス革命に対するモヤモヤ感とか、「自由!平等!博愛!」の裏に丸見え状態で存在する残酷さや欺瞞とか、そういった革命の本質をクリアにしてくれるものとして、この本はかなり貴重なのではないかと思います。

まあ、同時代に生きたイギリス人政治家の著ということで、当然現代の価値観と相容れない部分はあります、
しかし人類にとってある意味普遍的な考え方ではあるでしょう。
もしかしたら日本人には馴染みやすいかもしれません。
長く続く王室と皇室を持つ国民同士ということが大きいですが、自然の感情に基づき長い年月をかけて作られた慣習がまずベースにあるべきで、社会システムや法はそれを基に作られるべきという考え方は、おそらく多くの日本人に納得できるものではないかと思います。

今の日本を考える上でも参考になる内容です。
この本の言ってることは、急進主義のあまりの危険さと、素人に政治をさせるなということなのですが、採決の場でプラカードを掲げる元与党議員の姿に呆れと絶望を感じた人には、確かにオススメの一冊であります。
私達の思う素人と著者の言う素人は、時代の違いもあってかなりズレているのですが、伝統と階級を重視するイギリスのイギリスたるゆえんを知ることはできます。
サッチャーの「金持ちを貧乏にしても貧乏人は金持ちにならない」という言葉を思い出したりしたのですが、ああいう言葉が出てくるあたり、本書にあるようなイギリス人のシビアな社会認識は徹底してるのでしょうね。

そういう感じで全てを受け入れることはできない本でありますが、著者のバークはこの本をルイ16世処刑以前に出しているにも関わらず、その後のフランスの行く末を正確に予見しています。
それは社会を成り立たせているものの本質を見抜いていなければ成し得なかったことだと思うので、バークの言葉は、やはり真摯に受け止める価値のあるものではないかと思います。

英知と道徳の伴わない自由は最も醜悪なものであるという言葉は、今の世にも通じるでしょう。
英知と道徳とは何ぞやと言われたら難しいけど、それをすることで起こりうる事態を想像できる知性というのはあるかな?
政治の場では、それこそバークの言うように幅広い知識も教養も訓練も経験も必要で、だからこそその資質のない者に政治はやらせるなってことになる。
資質のない者が権力を握ったフランス革命のその後は悲惨で、フランス国内は処刑と戦争の嵐。
改革は必要だったとはいえ、やはりやり方をもっとどうにかできなかったかとは思いますね。

つーか、今でもフランスは階級社会でない?
建前としてはそうでなくても実際は。
当時からバークは階級制は必要みたいなこと言ってて、フランスは帝政やら第ナントカ共和制やらコロコロ試してもやっぱり階級は残ったままで、となるとあれだけの犠牲者を出したフランス革命って一体?ってことにやっぱりならないか?

「肉食の思想」を読んだ時も思ったけど、自由って難しいですね。
欧州の地における自由はやっぱりフィクションなのかも。
日本にある自由は……よくわかりません。




[PR]
by teri-kan | 2015-08-17 16:06 | | Comments(0)
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
<< 「愛と涙と勇気の神様ものがたり... 「VSルパン」2巻 >>