「マスケティアーズ」を読んでみる

読むといっても原作を、ではありません。
声に出して発音してみる、です。
そしてその言葉の意味を読む。
言葉っていろいろ面白いね、という話です。








ドラマのタイトルとなっている「The Musketeers」(マスケティアーズ)は、NHKによると次のように説明されています。
「マスケット銃と剣を華麗に操るフランス国王直属の銃士隊。国王と国家を守るという使命を負った選ばれし最強の男たちのことである。」

マスケット銃は初期は火縄式だったそうで、日本で使われてた火縄銃もマスケット銃と呼ばれるものの一つなのだそうです。
三銃士が使っているタイプはそこから進化したもので、あれってフリントロック式?
詳しくないからサッパリなんだけど、火縄式より命中度が下がるって説明されてるから、的の中心をきちんと撃ち抜けるアラミスは本当に名手なのでしょう。

銃士とはこのマスケット銃をルイ13世より支給された乗馬歩兵のことを指すそうで、つまり銃を持ってこそ銃士と呼ばれるわけですね。
チャンチャンバラバラではなくバンバン撃ってこそ銃士。
これまでなんとなく三銃士といえば剣、というイメージが強かったですが、銃士という日本語訳こそが正しかったということでした。
剣士じゃないんですよ、剣士じゃ。

というわけで、ようするにマスケティアーズとはまんま銃を使う人達のこと。
原作の「三銃士」のタイトルは、だからそのままスリーをつけて、「The Three Musketeers」。
原書のフランス語では「Les Trois Mousquetaires」(れ・とろわ・むすけてーる)。
むすけてーる。
なんだか良い響きです。

タイトルと同様、Musket(マスケット)はフランス語のMousquet(むすくえ)が英語化したもので、そのMousquet(むすくえ)も元々はイタリア語のMoschetto(モスケート)からきてるのだそうです。
モスケートは本来は石弓の一種で、その弓矢であるモスケータ(Moschetta)がそもそもの語源なんだとか。

マスケット銃も遡れば石弓の弓矢。
マスケティアーズとは「飛び道具を使う人達」と捉えるのが本来的なのでしょうね。



ところで、彼らの有名な言葉、「一人は皆の為に、皆は一人の為に」については、英語版は既に馴染みになっていて、ラグビーや映画等で耳にしてる人も多いのではと思います。
「One for All , All for One」。
ふむふむ、その通りだね、という英語です。
が、もともとのフランス語を知った時は、ちょっと妙な気持ちになりました。

「un pour tous , tous pour un」

「あん・ぷる・とぅす、とぅす・ぷる・あん」と読むのだそうですが、これをフランス語で発音されたのを想像した時、「短かっ!」と感じたのです。
「あんぷるとぅす、とぅすぷるあん」を、例えばタモリのいんちきフランス語風に読んでみてもわかると思うのだけど、サラッとして簡潔で、合言葉としてとてもふさわしく感じるのです。
決して日本語のように長々言ってない。
ていうか、改めて気づいたけど日本語バージョンは長すぎる。
合言葉としてこれってどうなんだろうか。

と思ったので調べてみたら、どうやら「三銃士」を翻訳してきた日本人翻訳者の方々も同じように、「これをそのまま日本語に訳したら長すぎる」と考えたようです。

「四人はつねに一体となって協力する」 鈴木力衛・訳
「四人は一つ、切っても切れぬ」 竹村猛・訳
「四人一体」 生島遼一・訳
「四人の心は一つ」 朝倉剛・訳

なんだか皆さん苦心してらっしゃるなあと思わされる、それぞれの訳です。

翻訳の全てが「四人」から訳されているのには理由があります。
デュマの原書が「皆は~」から始まっているからですね。
「一人は皆の為に、皆は一人の為に」じゃないんです。
元々は「Tous pour un, un pour tous」。
「皆は一人の為に、一人は皆の為に」が正しいのだそうです。

これには驚きました。
なんで入れ替わった二つの言い方があるのか?と思うし、この言葉の原典と言われている「三銃士」では「皆」から始まっているのに、巷ではどうして「一人」から始まる方がよく知られているのかと。

で、それについての答えは、ウィキの「Unus pro omnibus, omnes pro uno」の項目を見ていただくのが一番だと思うのですが(One for all, all for oneのラテン語版)、この成句は元はキリスト教徒の新旧対立の中から出てきた言葉で、どうやらデュマがそれを自著の「三銃士」に応用したようです。
元が「一人」から始まるのなら語順を入れ替えたのはデュマの方となるわけで、「三銃士」のみが違っているのもこれなら納得です。

そして、そうなると当然疑問も浮かんできます。
なぜデュマはそうしたのか。
わざわざ入れ替えているところに、もしかしたら彼の創作の意図を探ることが出来るかもしれません。

一人が皆を助けることより、皆が一人を助けることにまず重きを置く。
先にくるのは「一人の為に」。
もしかしたらこれが命を張る仕事を生業にしていた銃士に必要な精神と考えたか。
フランス人の社会観が関係しているのか。
デュマの出自(黒人奴隷の血をひく)も関わってるかもしれません。

原作を読んだら深く理解できるのでしょうが、これを知るだけでも四人の関係性を理解する助けにはなりそうです。
「マスケティアーズ」で出てくるのはサブタイトルからして第10回のようですが、ドラマでその場面がどう描かれるのか楽しみですね。

ちなみに、「一人は皆の為に、皆は一人の為に」は、むしろラグビーで有名のようですが、ラグビーには「一人は皆の為に」が先にきて正解のように思います。
ラグビー選手と銃士のミッションは違いますもんね。
一人から始めるか、皆から始めるか、そこは場面に応じて柔軟にしていけばいいってことかなと、今のところは理解しています。



それにしても、「あんぷるとぅす、とぅすぷるあん」はいいです。
とても良い音で、呪文みたい。
「らみぱす、らみぱす、るるるるる」に匹敵する良い呪文(笑)。

日本語ももっと短かくまとまればいいんですけどね。
「一人は皆の為に、皆は一人の為に」はすごく好きだけど、「あんぷるとぅす」を知ってしまうと、簡潔でいいなあと思っちゃうんですよねえ。

漢文風にしてみたらどうだろうと考えたけど、上手くいかないんです。
「一為皆、皆為一」みたいな感じに。
中国語読みしたら良い呪文になりそうなんですけどねえ。
いや、まあ、呪文じゃないんですけどね(笑)。




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by teri-kan | 2016-05-27 00:01 | 海外ドラマ | Comments(0)
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