アラミスパパとパパであるアラミス

先日第20話で一応終わりとなったドラマ「マスケティアーズ」。
シーズン3の早期放送が待ち望まれるところでありますが、今回は第9話からずーっと悩んでいたことを書きたいと思います。







第9話で出てきた葡萄と蜂蜜のブランデーのレシピ。
アラミスのお父さんからいただいたとイザベルが言ってたんですが、これ、結構問題発言なんですよね。
イザベルが修道院でブランデーを製造するために教えたと考えられるから、アラミスのお父さんはイザベルの行方を知っていたってことになるのです。
でも知っててアラミスには教えなかった。
必死でイザベルを探す息子を近くで見ていたはずなのに。

なぜ教えなかったのか、その理由は、イザベルの「アラミスから離れたい」という気持ちを汲んであげたから、ではないでしょう。
イザベルの気持ちと息子の気持ちのどちらを優先させるかとなったら、親ならば普通は我が息子の気持ち。
未婚のお嬢さんを妊娠させたバカ息子とはいえ、流産しても結婚したいと言うのです。
普通なら息子の気持ちを叶えようとしてあげるものだし、そもそも結婚自体は決まっていた話だったのですからね。

なのにその気持ちを潰しちゃった。
どうやらパパはアラミスとイザベルが結婚することを望んでなかったようです。
というより、もともと大反対だったでしょうね。
なぜなら「親は俺を司祭にしたがっていた」というアラミス自身のセリフがあるから。
聖職者にしようと思っていた息子が、「恋人が妊娠したので結婚したい」と言ってきたら、まあ激怒ですわな。許すわけないです。
結婚したら聖職者になれないじゃないですか。

多分、大大大反対したと思います。
「子供は産んでもいいけど結婚は許さない」くらいのことも言ったかもしれない。
でもそれはイザベルのお父さんにしてみれば、それこそ大激怒もの。
結婚前の娘を傷モノにしただけでアラミスは袋叩きにされても仕方ないくらいです。妊娠までさせちゃって、相手の親に責任を無理矢理とらされても文句言えない。
イザベルのお父さんは「クズ男だがしょうがない絶対結婚!」を主張したはずなんですね。

アラミスは結婚する気満々だったので、周囲の騒動をどれだけ真面目に考えていたのかわからないけど、イザベルは相当ストレスがかかったでしょう。
アラミスの父親は結婚にいい顔をせず、自分の父親は未来の婿を不真面目な女たらし扱い。
妊娠から結婚という成り行きにアラミスが後悔してるかもという不安も抱えて、これで元気に過ごせるわけない。
イザベルの流産の原因はそういったストレスが関係してたんじゃないかなあ。

そして流産前の状況がそういったものと考えるなら、流産後の推測もそこそこ可能です。
子供がなくなったから結婚しなくてもよくなったね、とはもちろんなりません。
イザベルのお父さんにしてみれば、アラミスが娘を傷モノにした事実に変わりはなく、むしろ婚約までして破談になるなど以ての外です。
二度とまともな縁談は来ないし、なんとかしてアラミスとの結婚をまとめるしかない。

でも当のイザベルが心身ともにヘトヘト。
お父さんは流産しても「結婚!」、アラミスも「結婚!」、肝心の身近な男性二人が「結婚結婚」言ってくるの、しんどかったんじゃないかなあ。
逃げ場所といえば修道院くらいしかないけど、お父さんに言っても最初は「何言ってんだ!」だったんじゃないかと思う。
修道院に入るのも持参金が必要と言われてましたからね。
アラミスは変わらず結婚したがっているのだから、結婚という形で決着をつけたいというのが、イザベルのお父さんの思いだったでしょう。

そんな時にアラミスパパから「修道院に入れば?」「修道院に入りなさい」「修道院に入りたいなら援助するよ」とか言われたら?
イザベルは「よろしくお願いします」になったりするんじゃないかなあ。
あまり妄想を突っ走らせることはしたくないんだけど、具体的に考えたらその可能性って結構ある。
だってブランデーのレシピをイザベルに与えた理由って、あんまりまともそうじゃないから。

最初私は理由を手切れ金と考えたんですね。
「息子から手を引け、このレシピは金になるからこれで手を切れ」って感じの。
どこまで真剣に息子を司祭にしたかったのかってのもあるけど、跡取り以外の次男だか三男だかの身の立て方を考えなきゃいけない親の立場とすれば、絶対聖職者!ってのはありえたかなと思う。

でもそれじゃあんまりな感じがして、善意の慰謝料説も考えました。
「修道院に入るのかい?うちの息子のせいで人生滅茶苦茶になって悪かったね。これは慰謝料代わりだ。修道院で役立ててくれ」って感じの。
優しいアラミスのパパですから優しい人であってくれたらいいなという思いもあって、そっちのパターンも考えたのです。

で、どっちが正しいか、しばらく判断がつかなかったのですが、先日コメント欄にアラミスマザコン説のご指摘をいただきまして、そうであるなら、もうあれは手切れ金だろうということに自分の中で落ち着きました。
アラミスのパパ、結構強権的な人だったんじゃないかなあ。
あの時代の父親ですからそうであって当然ではあるのですが、かなり「強い」人だったような気がします。

そしてアラミスのパパが責任とってイザベルの修道院行きの支度をしてくれるなら、イザベルのお父さん的にもそれでOKだったと思います。
傷モノにされた娘の居場所が手に入るなら、別にアラミスとの結婚にこだわる必要はないですから。

妄想大全開の推測ですが、レシピの謎を考えていくと、こういうことにもなるかなと。
他のパターンもありえるんだけど、アラミスとイザベルの会話の内容から察するに、大体こんな感じじゃないかなあ。
この説はイザベルの実家がアラミスの家より格が高かったり資産家だったりしたら成り立たないんだけど、もしそうならアラミス家のレシピはいらんだろと思うので、こっちのパターンはとりあえずなしと判断しました。
レシピはね、ホントに不思議なんですよ。これはホントに悩ましいー。



アラミスパパとしては、イザベルを失ってもしばらくたてばアラミスの気持ちも落ち着いてくるという思惑だったでしょうが、アラミスの傷は周囲が思っていた以上に深くて、聖職者どころか常に命を危険にさらす銃士になるという、親の希望とは全然違う道に進んでしまいました。
イザベルはアラミスのことをわかっていたけど、パパは息子を見誤ったんじゃないかなあ。
もしくは御しそこねたというか。
アラミスって基本へらへらしてて、あまり自分の心の内を深刻にさらけ出すタイプじゃないけど、「本気の愛に破れた」「親に愛する女性の行方を教えてもらえてなかった」「親に司祭になることを望まれていた」「現在銃士をやってる」を考え合わせると、かなり大きな親との確執はあったんじゃないかと思います。

マザコン説を指摘された時、9話以来レシピについてずっと考えていたので、アラミスと父親の関係には自然と思いが及びました。
エディプス・コンプレックスとまでは言わないにしても、父親の存在を克服するという課題は、もしかしたらアラミスの中にずっとあったのかもなあと思えたんですね。
イザベルの行方知れずに自分の父親が関係してることまでは知らなかったけど、妊娠させたことを責められ(まあ当然でしょう)、結婚を反対され(司祭にしたかったんだから当然)、流産というアクシデントがあったとはいえ、結局父親の言った通りの結末に自分の一世一代の恋愛が終わってしまったことは、アラミスの心にとても重いものを抱えさせてしまったんだと思います。
アラミスのことだから、お軽い感じに「俺って欲しいものが絶対手に入らないのかな」って口にするんだけど、実態は軽いものじゃ全然ないんですよね。

と考えていくと、王妃との恋はホントにすごいんです。
いやー、恐ろしいくらいですよ。
コメント欄で、マザコンであるなら王妃との恋が、国家の母としての王妃を求めるという形になってるのがすごい、という風に書きましたが、王太子の本当の父親になってることで、実は国家の父である国王を克服しそうになってることこそがすごい。
王太子が即位すればそういうことになるんです。
ドラマのネタバレでもなんでもなく、歴史的事実でこの先のストーリーはそうなるのだから、そういうことになる。
子供にとって父親は社会を象徴するものであり、現実の社会の象徴は国王。
父親の壁の前に我が子を失った彼が、国家の父である国王の実の父親になる。
究極の形で社会を乗り越えちゃうんです。
うーん、いやー、ちょっと空恐ろしいですよ。
アラミスの運命ってなんなんだ?と思う。

この脚本すごいなーと、なんかもう感心しちゃった。
アラミスって超複雑な人物なのに破綻がないので面白いなとは思ってたけど、ここまで深読みに耐えられるとは正直思ってなかった。
でもここまで深読みする自分は心底終わってると思った。
いや、ホント、我ながらおかしいわ。

レシピがいかんのだよ、レシピが。
なんであんなセリフ入れたんだ。
なんでイザベルがアラミスパパのブランデーを作ってるんだ。
どっかの文芸評論家がとある作家に「この文章はこういうことが言いたくて書いたんですね?」と聞いたら「そんな細かい事考えてない」って答えが返ってきたという話があるけど、これもきっとそうなんだ、深い意味なんてきっとないんだ。
でも見てるこっちは考えてしまうんだよー!



というわけで、レシピの話は終わり。
でもお父さんつながりでまた思うことが出てきたので続きがある。
全然懲りない自分。
とはいえ終わってる自分を先に現実に引き戻します。
マスケの泥沼から上半身くらいは出そうと思う。




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by teri-kan | 2016-09-20 12:21 | 海外ドラマ | Comments(2)
Commented by kikuzo at 2016-09-25 23:57 x
こんばんは。
マスケレスに悩まされつつ、ブログ楽しみに拝見させていただいてます。
ちょうど後番組の戦争と平和が始まり、アトス役の方が登場したのを見ながらNHKの放送スケジュールを確認したら、戦争と平和の後はダウントンアビーの未放送分が始まる様で、マスケティアーズのS3の放送はかなり遠い未来かなーと、予測しています。後はHuluに頑張ってもらうしかない…!
今はHuluで既放送分を見ていますが、見落としていた事が沢山あったり、あれはこれの伏線だったのか!という発見がいっぱいあって、荒唐無稽ながらつくづくしっかり作られてると感心しております。これはハマる人はハマる訳ですね。

父親というのは、確かにこの作品の大きなテーマであるようですね。
銃士たちそれぞれの父親との関わり方もそうですし、王が父親としてどうであるか、トレヴィルと銃士たちの関係、その他S2、5話のろくでなしな伯爵親子(名前忘れた(^_^;)など、いろんな形で出てきますよね。国王に至っては本来なら国の父であるべきですし…。
アラミスのお父さんとか過去は本当に謎ですね。3人はS1からある程度どんな過去を送って来たか予想つくのですが、イザベルとの会話から分かるのは貧しい生活ではなかった様だが貴族でもなかったのかな、ということくらいで、あとはどんな生活で家族関係も不明。なんであんな難儀な性格になってしまったのか、考えても仕方ないですが考え込んでしまいます(^_^;)
しかしアッサリなんでもわかってしまうより妄想の余地が沢山ある作品の方が絶対楽しめるので、またつらつらといろんな事を妄想しつつS3の放送を待とうと思います。

そういえばS2、9話でアトスがアラミスにキスしていたのも驚きでしたが、最終話の最後の方でいつの間にかアトスが腰にアラミスのものらしき青いサッシュベルト巻いてた?様に見えたのですが…。
あの感動的な別れの後どうやって渡したの⁈と放送見ながらちょっと悩んでしまいました…
Commented by teri-kan at 2016-09-26 11:43
kikuzo様、こんにちは。

>後番組の戦争と平和

アトス出てましたねー、ほんのちょっと。
シーズン3はまだ影も形もなくて、NHKはどうするつもりなのかなあと、やきもきしております。

>荒唐無稽ながらつくづくしっかり作られてる

そうなんですよね。ホントうまく出来てると思います。
単純に楽しいんですよね。
これぞエンターテイメント!です。

>アッサリなんでもわかってしまうより妄想の余地が沢山ある作品の方が絶対楽しめる

本当にそうなんです。
マスケの小出し感はすごいです。
で、かなり引っ張りますしねー。
アラミスの王妃への思いなんて、最後の最後までどんなものなのか明かされなかったし。
おかげでこっちは転がされまくりでしたよ。
まんまとはまってしまいました。

>アトスが腰にアラミスのものらしき青いサッシュベルト巻いてた?

おお、これまた確認してみなければ。
アトスがアラミスにキスしたシーンは、純粋な気持ちで「ああもう素敵」って感じだったのですが(笑)、ああいうのってどういう風に演出してるんでしょうねえ。
アトスならああするはずだという、そこに至った経緯が知りたい。
中の人の意見はどこまで反映されてるのだろーか。

それをいうならアラミスが王妃のことを暴露した時、ポルトスがアラミスに掴みかかって、なぜかそのままぎゅーって抱きしめちゃう場面があるけど、あそこの演出意図も聞きたい。
あそこのポルトスは最高で、隊長に引き離される時の表情も含めて爆笑ものなんだけど(友情に感動もしてますよ!)、あそこはどうなってああなったのか、本当に知りたいですね。
抱きしめられた時のアラミスの意外そうな困ったような腕がこれまたよくて、これを作り上げたこの人達マジ最高って、本当に真面目に思いました。

ああ~、いいドラマでしたよねえ。
楽しかったなあ。
お互いいろいろ妄想しながら、頑張って続きを待ちましょう~。
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