「モンパンシエ公爵夫人」

ラファイエット夫人作、岩波文庫。
文庫本「クレーヴの奥方」に収められている三作のうちの一作です。

「クレーヴの奥方」はアンリ2世からその子フランソワ2世の時代のお話で、今回の「モンパンシエ公爵夫人」は短命だったフランソワ2世(在位1年!)の次の王、弟シャルル9世の時代のお話。
内戦(ユグノー戦争)真っ盛りで、主人公の夫モンパンシエ公はしょちゅう戦争に行ってます。

夫人と恋愛関係になる男性はギーズ公アンリで、デュマの小説や映画で有名な「王妃マルゴ」の主人公マルグリット・ド・ヴァロワに愛された男性として知られている人物。
「マスケティアーズ」関連で言うなら、愛すべきバカ王ルイ13世の父親アンリ4世と王位を争った人物であり、第6話で起こった母后マリー・ド・メディシスのクーデター未遂事件に与した貴族の一人であるギーズ公シャルルの父親。
原作「三銃士」関連で言うなら、アラミスの恋人でアトスとも関係するシュヴルーズ公爵夫人の夫シュヴルーズ公クロードの父親。
アグレッシブな男前だったと言われてる人です。

ちなみにメアリー・スチュワートとは従姉弟の関係になります。
彼女が登場する「クレーヴの奥方」に出てくるギーズ公は本作のギーズ公アンリのお父さんで、ロレーヌ大僧正はアンリの叔父さん。
ラファイエット夫人の書いた小説でギーズ家の方々は大活躍なのですが、あの時代(ヴァロワ朝末期)のギーズ家がどれだけ力を持っていたかということでもあるのだと思います。







前書きはこの程度にして、肝心の物語の中身なのですが、まあ、普通の結婚してる女性の宮廷恋愛モノです。
でもクレーヴの奥方と違って、モンパンシエ公爵夫人は割と素直に恋愛に走るタイプ。
もともと相手とは恋人同士だったというのがあって、垣根は低かったという感じです。

でもカギとなるのは二人の間に立つ形となるシャバンヌ伯で、この人がねえ、なんかもう哀れな人で、とても良い方なんですが、超お気の毒。
でも夫人の伯に対する残酷さは、結構納得できたりもして、なんて言いますか、人の心って酷いし難しいですね。
夫人が綺麗でモテモテっていうのがそもそもの元凶なんですけど、そういう人は余程自分をしっかり持ってないと、思わぬ憂き目に合っちゃうってことなんでしょうね。

にしても、こういう関係って読みながら「なんだかなー」って気分にもなって、ここに出てくる恋愛関係って、言うなればあれですよ、「マスケティアーズ」で言うなら、第20回のアラミスとロシュフォールですよ。
王という夫が存在してるのに、「王妃に手を出すな!」「俺の女だ!」って勝手に王妃を取り合いしてるという関係。
まあアラミスの心は割と綺麗だと思うけど、でも「俺の王妃!」の気持ちが全然なかったとは言わせない。
ロシュフォールにいたっては恋のライバルは王じゃなく完全にアラミスだし、いやいや、王のこともちったあ考慮に入れようよ、なんですよね。

で、「モンパンシエ公爵夫人」のお話もそんな感じで、あれはなんなんだろう。
夫人の愛を勝ち取るための競争で、なぜ男共は夫の存在を考慮に入れないのか(苦笑)。
夫は夫、恋愛は恋愛っていうのが、もうハッキリしてるんだなー。
現代でもフランスってそうだし、例えばミッテラン大統領の愛人の話なんてのも、他の国ではおよそ考えられないことだと思います。
愛人がいるのはどこでもあるとして、バレた時に「だからなに?」で済ませてしまえる国民性というのがフランスですよねえ。

ちなみにこの作品の恋の終わり方は、ホントに普通にあり得る終わり方で、小説らしい派手さのない終わり方なのがリアルで良かった。
ホントにフツーに終わってるんですよ。
フツーに終わることの残酷さってありますよね……。



「モンパンシエ公爵夫人」は本国で映画化されていて、2010年公開ということですから、かなり今風な出来栄えの作品なのではと思います。
ただ上映時間が2時間19分もあるということで、なんでこんな短い小説がそんな長時間映画に!?なんだけど、多分政治背景とユグノー戦争を真面目に描いてるんでしょうね。
戦闘シーンを大々的に入れてるとなると、大作長編映画にもなろうかと。

ちなみにここで予告編が見れます。
雰囲気を知るだけでも本を読む助けになるかもしれません。




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by teri-kan | 2016-11-07 11:17 | | Comments(6)
Commented by あんどれあ at 2016-11-07 22:04 x
モンパンシエ侯爵夫人、もてすぎるのも悩ましいものだなあ、と読んだ時に思いました。
クレーヴの奥方でも、この作品でも文字通り「恋の病」にかかっちゃう人がいて、フランス貴族、文字通りアムールに命かけてますよね。心の想いにこれだけ一生懸命になれるって、ある意味究極の贅沢かも。

既婚女性の恋愛については「危険な関係」の小説だか映画だかで、すごい年上のおっさんに嫁ぐのを嫌がるうら若き乙女に、恋愛百戦錬磨のマダムが「あんた何言ってるの?!結婚してからの方がずっと恋愛楽しめるわよ!」みたいなことを言っていて、当時のフランスの貴族社会では、未婚女性は一人前の恋愛相手として認めらないのかなあ、と思ったのを記憶してます。

私がこの恋愛観の洗礼を受けたのは、フランス貴族の恋愛「三銃士」の続編の「ブラジュロンヌ子爵」で、当時は自分もうら若かったので(笑)、かなりびっくりしました。
Commented by teri-kan at 2016-11-08 11:32
あんどれあ様、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。

>心の想いにこれだけ一生懸命になれるって、ある意味究極の贅沢かも。

そうですね。ホントにそうです。
フランス文化が豊かなのはそのおかげのような気がします。
お城一つとってもフランスは他国のよりも優美ですが、心の贅沢さが反映されていると考えれば納得できます。
心のままに動くのは下品と隣り合わせなので、どこまで許されるかというのは問題ですけど。

>「危険な関係」

映画を見ましたが、ほとんど覚えてないんですよー(涙)。
ジェラール・フィリップのはところどころしか記憶にないし、グレン・クローズのは見たという記憶しか残っていない。
今ならよく理解できると思うので、もう一回見直してみたいです。
登場するのはろくでもない人達ですけどね。

>恋愛観の洗礼

私の場合は洗礼というか、最も驚いたのは、映画「肉体の悪魔」でした。
それまでもフランス映画はそれなりに見ましたが、あれにはホントに驚きました。
皆さんいろんなところで洗礼を受けてると思いますが、フランスってフランスなんだなーとしか言いようがない感じがしますね。

>「ブラジュロンヌ子爵」

三銃士の原作には心惹かれてるのだけど、買うとなると結構かかるし、図書館は時間の制約があるので悩ましいところです。
どちらにしろシーズン3を見終わっての話なので、まずは放送を!といつものパターンになるのですが(笑)。
早くNHKが日程を発表してくれないかなーと今も心待ちにしています。
Commented by あんどれあ at 2016-11-10 00:38 x
>心のままに動くのは下品と隣り合わせ
確かに、デカダンな感じももしますよね。微妙なバランスが醸成した文化なのでしょう。

危険な関係、よく覚えてないのですが、映画だったらグレン・クロース主演のか、コリン・ファース主演の「恋の掟」だったと思います。
「肉体の悪魔」はジェラール・フィリップが高校生やってるのですよね。今度見てみます!しかし、フランス文学の名作って本当に恋愛ものが多いですね。

マスケ、シーズン3は原作からまったく離れるらしいので、原作読むよりまず放送ですよね。1と2は続けて放送したし、英語圏では最終シーズンで盛り上がってたので余計続けて見たい。終わったら終わったでさびしくなると思いますが・・・。
Commented by teri-kan at 2016-11-10 12:28
あんどれあ様、こんにちは!

>微妙なバランスが醸成した文化

フランス文化は主にフランス映画で知りましたけど、狂気と純愛と芸術と哲学が合わさったのがフランスの恋愛映画、みたいなイメージが、なんとなくですけどあります。
モラルはなさそうに見えて、でもルールみたいなものはあって、というか。
最近の映画は観てないので昔のイメージですが。

>コリン・ファース主演の「恋の掟」

この映画は知りませんでした。
コリン・ファースがヴァルモンですかあ。ほほう。
なんだかいい人そうなヴァルモン。

>ジェラール・フィリップが高校生

すごく可愛らしいので機会があれば是非!

>英語圏では最終シーズンで盛り上がってたので

日本でも盛り上がりたいです!
1と2の熱が冷めないうちに早く放送してくれたらいいですね!
Commented by 4703 at 2016-11-10 16:47 x
マスケティアーズ熱、ぜんぜ~~ん、
冷めてません❗むしろ、アラミスの、画像を
ネットから、探しまくり、写真集が出来る位
沢山の画像で、膨れ上がってます。

少し前の、つぶやき日記に、
ミルフィーユの、ような、重なりあう、お互いの感情?でしたっけ?
あの、文章、中々、ナイスですやん👍
それと、お互いの表情、行動、アイコンタクト、
言葉は、交わさなくても意思の疎通が、出来てる

忘れもしません、あの、出来事❗
女伯爵、の、事を、思いきって、アラミスに
聞く、王妃が、これ、又、初々しくて、可愛くて恋する乙女のようで、
あれ、良かったわあ~~

ロシュフォールと、アラミスとの、決闘シーン
あれも、良かったわあ~~

やっぱり、これの、セリフだな、

ラブ


来春早々、DVD出るから、買うわ。
ノーカットで、
早く見たい、早く見たい、早く見たい
Commented by teri-kan at 2016-11-11 11:18
4703様、こんにちは!

>マスケティアーズ熱

私は熱の扱いに日々苦慮しております……。
燃えるがままに熱を発散させたいのですが、ネット上にあげられている動画を見るにしても、シーズン3は避けるようにしてるし、そういったブレーキをかけなきゃならないことにストレスがかかりまくっています。

熱を冷やすつもりはないし、そもそも全然冷えそうにないのだけど、でも火力を強火にするわけにはいかないし、かといって弱火じゃ持て余すばかりだし、中火は火加減が難しすぎるというか、空気とガスのバランス悪すぎというか、素材と燃料のバランス悪すぎというか、コンロが不完全燃焼を起こすと火の色がオレンジになったりしますが、今はそんな不安定な熱を抱えている感じです。

早く思いっきり燃えたいのですけどね。
家庭用コンロのような安定的な青い火じゃなくて。
キャンプファイアーのようにボーボーに、メラメラと。
そして燃え尽きて灰になるのです!

私も時折ふっと思い出してはアラミスの画像をボーッと眺めています~(笑)。

>あの、文章、中々、ナイスですやん👍

どうも(苦笑)。ありがとうございます!
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