「妖婦ミレディーの秘密」

ダルタニャン物語の第2巻。
アレクサンドル・デュマ著、鈴木力衛翻訳。
講談社文庫。

第一部「三銃士」はこれで完結です。
最後は大団円。
いろいろあるけれど、とりあえず大団円。






まずはこの巻の主役とも言えるミレディですが、いやまあ、すごいというか参ったというか、すがすがしいほどのクズ(笑)。
見事な外道。
アトス、ドラマとは違い未練なんぞこれっぽっちもありませんでした。

イギリスで身の上話をつらつら喋ってたけど、「ちょっとくらいホントかも」と思った自分は甘かった。
綺麗な人だから意に反してそうなってしまったこともあるだろうと思った自分、バカバカ!
同情心を返してくれミレディ。
フェルトン君にあげるから。
これについてはものすごく損得勘定が働いてしまうぞー。
なんかもう、いろいろと返してくれミレディ。

とにかく知能の高い女性だってことはわかった。
頭の回転が早くて、人の感情を読むのに長けてる。
知識は豊富。機を見るに敏。
感情に支配されやすいけど自己コントロールできる。
とにかく有能。
でも嘘つき。
矛盾なく嘘をつき続けられるサイコパス。
ちょっとでも関わったらアウト。

もともと修道院にいたとのことだけど、おそらく親か周りの大人が放り込んだんでしょう。
男関係がふしだらだったからでしょうね。
少女時代から男絡みのトラブルが絶えなくて、しかもそれに関してウソをぺらぺらついてたんだと思う。
厄介払い&このままじゃヤバいから神様に魂を救ってもらえ、ってところかなあ。
でもこのタイプってそのままその道を突っ走るよね。
関わった人間が皆不幸だ(涙)。

あ、リシュリューは唯一利益を得たか。
バッキンガム公が死んだことに勝る利はないもんね。
ダルタニアンがミレディに狙われるのは自業自得。
もしかしたら唯一ミレディをコケにできた男かもしれないからすごいんだけど。

うん、ダルタニアン、途中までサイテー男。
女中さんをもてあそぶクズ。
ポルトスも大概だ。
ホントに結婚しちゃったのには驚いたけど。

アトスが人気があるのは納得ですね。
デュマの筆もちょっとアトス贔屓?
品があって教養があって機転もきいて能力も高い。
言うことなしじゃないか~。
しょっちゅう青ざめてるのが笑えるけど。

しょっちゅう顔を赤らめてるのはアラミスで、この人面白いわ。
ごまかしても女関係だってバレバレ。
いちいち「顔を赤らめた」って書くデュマがいい仕事してる。
秘密主義のアラミスと口数少ないアトスは顔色と表情で心情を推し量らないといけないんだけど、わかりやすく描写してくれてるんですよね。
デュマはホントにいい仕事してる。

実はこの第2巻の冒頭で三銃士の名前がどれだけ変かということが書かれてるんだけど、「珍妙な名前」ってストレートに書かれてるのもそうだけど、「羊飼いの名前」ってあったのがおかしくて、なんだかわけもなく「そうかー、羊飼いなのかー」と、彼らが棒を持って野っぱらに立ってるところを想像して、ほんわかした気分になりました。

銃士なんだから世を忍ぶ仮の名前をつけるにしても勇ましい名前にすればいいのに、なんで羊飼い風にしたんだろうね。
いざ決闘の段になって「羊飼いの名前では決闘できない」って相手に言われちゃうって情けなくないか?
しかも「それなら」ってことで三銃士は本名を明かすんだけど、それぞれの決闘相手に近づいてコソコソっと小声で打ち明けるだけ。
なんなのよこれ(笑)。
銃士のくせに、そこは「やあやあ我こそはー」じゃないんかい。
普段は傍若無人な三人なのに、なんで名前のことになったらコソコソするんだ。
これでは本名を知られたら即結婚の古い日本の女の子が恥らってるみたいじゃないか。

……なんで世を忍ぶ仮の名前が必要だったんですかねえ。
デュマも他の登場人物は皆本名で書いてるのに、なんでこの三人は仮の名だったんだろう。

ものすごく真面目に考えれば、この三人は三人とも銃士として大成する気はなく、もちろん長く続ける気もなく、仮の名前で十分ってところだったのかなあってことになるんだけど、まあその辺は今後の「二十年後」「ブラジュロンヌ子爵」を読めばわかってくるかなあ。
第一部の最後でも彼らのその後はそれぞれだし。

ただ、そうであっても羊飼いの名前なんですよねえ。
羊飼いですよ羊飼い。
やっぱりヘンだって。
今の私からすると三人ともすごくカッコいい名前だけどさ。

なんだか名前のことばかり書いてるけど、ストーリーもとても面白かったです。
特に後半は怒涛の展開。
息をもつかせぬ面白さでした。
コンスタンスさえ上手くいけば、ホントのホントにめでたしでした。



というわけで、次からは第二部の「二十年後」。
第3巻「我は王軍、友は叛軍」です。

もうね、なんというイヤなタイトル。
この二十年で彼らの関係がどうなっているのか、今からドキドキものです。



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by teri-kan | 2017-05-15 09:27 | | Comments(2)
Commented by あんどれあ at 2017-05-15 22:58 x
最近気づいたんですが、アトスってギリシャの聖地の女人禁制の山の名前なんですよね。(絶壁に修道院があって今でも山自体が女人禁制。)ミレディのトラウマでそんなに女嫌いに?!(笑)

銃士は王様のそば仕えなんで貴族だけど、あまり地位の高い人はやらないのかな、だから伯爵様のアトスは隠してるのかな(あと、ミレディのスキャンダル隠し?)、と思ってましたが、(本だとトレヴィル隊長も伯爵だけど…)、ポルトスとアラミスは確かに謎。アラミスは将来の修道士キャリアに傷が付く、見栄坊のポルトスは将来出世した時に銃士やってたってバレたくないのかな、と推測してみました。

私もシーズン3を見たら、何だか「二十年後」が読みたくなって今読んでます。原作はかなりアナクロなので、ドラマから入った方はひいちゃうんじゃないか心配だったのですが、楽しまれてるようで原作好きとしては嬉しい限りです!
Commented by teri-kan at 2017-05-16 12:15
あんどれあ様、こんにちは。

おお、女人禁制だからアトス山!
良い説ですね。
今「二十年後」を読んでるところなのですが、アトスの精神はアラミスよりも立派なお坊さんだったので、聖なる山にちなんで名前をつけたと考えて無理ないような気がしてきました。

でもアトスは身分や過去のせいで仮の名が必要だったけど、アラミスとポルトスは本当になぜだったのか。
案外アトスが仮の名前でやってることに「かっけー」ってなっただけかもしれないなあとすら思えてきました。
憧れのアトスのマネしてみました!みたいな。

>原作はかなりアナクロなので

古いお話ですもんね。
ドラマのイメージで入って「え?」って思う人は確かにいらっしゃるかも。
せっかく面白い作品なのでそういうのも含めて面白がって読めればいいんですけどね。
私は全然大丈夫なので、はまりまくりです(笑)!
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