「謎の修道僧」

ダルタニャン物語の第4巻。
アレクサンドル・デュマ著、鈴木力衛翻訳。
講談社文庫。

第二部「二十年後」の中巻です。
マザランが支配する宮廷と、市民の代表のようになってる高等法院の対立が激化し、とうとうフロンドの乱が勃発します。

高等法院とは法服貴族によって構成されてる機関で、ドラマ「マスケティアーズ」ではシーズン3の第2話に出てきた判事が、おそらくその法服貴族。
捕らえた難民の死刑について王族のパリ総督と対立してた人ですね。
「総督も法に従うべき」と強硬に主張してました。

あと、第9話で摂政人事について貴族の反発を懸念してた人も。
法服貴族は官位を金で買えたので裕福な市民出身者が多く、従来の宮廷貴族とは対立傾向にありました。
王妃が評議会に怒りまくってたけど、ああいった対立の図式が悪化したなれの果てがフロンドの乱と考えれば、案外わかりやすいのではないかと思います。

といった背景を押さえたところで、「謎の修道僧」の感想。






第3巻の感想で書いた「王妃様、なんでこんな男と」ですが、4巻を読んで納得しました。
マザランとアンヌ・ドートリッシュ、お似合い。
よくもわるくも「なるほど」な二人。
よくもわるくも太后は太后で、権力者と市民は断絶の極致。
宮廷VSパリ市ですね。
ヨーロッパは支配者と街の対立がハンパないです。

そういえばミレディには子供がいたのでした。
見るからに不快感を与える顔つきをしてるようで、見る者皆が第一印象で「うっ」な反応をしてるのがなんとも(苦笑)。
面影があるらしいので造りは綺麗なんでしょうけどねえ。
散々な言い方されてましたね。

まあ顔はともかく、したたかさでは今のところお母さんに負けてる。
そこで気絶してる場合じゃないだろー。
こっちは笑わせてもらったけど。
さすがダルタニアン、年の功。
いや、ミレディにも一杯食わせることができてたから、あれは才能なんだろうな。
よくあそこまで咄嗟の判断ができるよねー。

「二十年後」は立場の違いによって四人はアトスとアラミス、ダルタニアンとポルトスという風に、二手に分かれてしまうのですが、アトス・アラミス組は観念的というか、なんだかんだでロマンチストでした。
二人の状況は全然違うけど。
アトスが満たされきった心から理想を追い求めてるのに対して、アラミスは満たされてないからこそ理想に走る、みたいな印象があります。

ダルタニアンとポルトスは即物的(笑)。
彼らには絶対的に不足しているものがあるのです。
アラミスの不足分とは違う、即物的な不足分。
全然ロマンチックじゃないけど、でもシンプルではある。
ひねくれてなくて正直。明朗快活。
ポルトスの深みのないセリフが、だから時々とても救いになる。
あ、今なんかいい風吹いた、って。
「なんという脳筋」ってことも多いですけどね。

これは前巻から感じてたことなんだけど、マスケは四人の境遇や設定がかなり変更されてるけど、性格の本質的なところは原作をきちんと踏襲してるんですね。
原作アトスの超越してる感じが、マスケでは伯爵位を捨てることで無理なく描写できてたりとか、原作ポルトスが気の利いたことを言えないところが、マスケでは出自による思慮深さ故になってたりとか、なるほどなーなところが結構ある。

アラミスの行動原理が三人と違うところも、原作とマスケでは理由が違ってて、原作はかなりヒドいヤツなんですね(笑)。あまりにもあんまりな我が道を行く人。
でもマスケアラミスはとてもいい人で、我が道を行くにしても、苦悩をしょってるが故の設定になってる。
現代風ですよね。現代人には原作より理解しやすい人物像。
でも共通部分はあるのです。
うまく作ってると思います。



巻の終盤は超面白くて、四人の行動と会話がとにかく素晴らしい。
「三銃士」の映画化って「仮面の男」を除いて青年編ばかりだけど、ここら辺こそやってくれないかと思うくらい、とにかく楽しい。
「三銃士~清教徒革命編」ですよ。
イギリスはこういうのを作りなよ。
せっかくの本場じゃないかー。
ボロクソに言われてる食事と天気だって良いネタだと思うよ?
ホントに見事にボロクソだったから!

……といった感じの「謎の修道士」でした。
うーん、これは次が待ちきれない。
第5巻は「復讐鬼」。
なんといういやんなタイトル。

きっとあいつがまたもや大活躍。
しかし四銃士がきっとそれ以上に大活躍。
四人とも若いんだよねー、あれから二十年たっても。
この巻の終盤の勢いのまま活躍する四人に大期待です!



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by teri-kan | 2017-05-22 08:58 | | Comments(0)
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