「復讐鬼」

ダルタニャン物語の第5巻。
アレクサンドル・デュマ著、鈴木力衛翻訳。
講談社文庫。

第二部「二十年後」の完結編です。
清教徒革命とフロンドの乱を背景に、三銃士+1+従者たちが大活躍。
ホントに大活躍。
イギリス脱出行なんて最高すぎる。
命かかってるのに、もはやギャグ。
あー、面白い。
デュマは素晴らしいね!

それはまあいいとして、講談社の「ダルタニャン物語」は巻頭に登場人物紹介が載ってるのですが、4巻と5巻のとある人物の紹介がモロにネタバレで、「なんでこれをここに書くんだ!?」と、シンジラレナーイ気持ちでいっぱいになっています。
これから読む方は本編を読む前に人物紹介ページを見ることは避けた方がいいですね。
そうすればラストページのポルトスの驚きとスッキリ感が共有できる。

はい、決して見てはいけません。
実はネット上でこのページを見ることができますが、絶対に見てはいけないのです……。



では第5巻「復讐鬼」&第二部「二十年後」全体の感想。






この巻は前半イギリス編、後半フランス編で、第二部全体からしてそうですが、並行して進行する清教徒革命とフロンドの乱に四人がどう対峙するのか、という内容になっています。
神権と王権に絶対的価値があった時代において、彼らがそれらをどう認識していたのか。
特にアトスはそれが彼の全ての行動の原理になっていて、とても興味深い。
絶対的であるはずの王権と現実の政治とのギャップ、神権と現実の社会の不公正さとのギャップ、それらをどう埋めるのか、自分の中でどう折り合いをつけるのか、価値観の揺らぐ時代の中で、理想と現実を追う銃士の一生懸命さが印象に残ります。

チャールズ一世の処刑シーンは生々しかったなあ。
四人ともすごい関わり方をしてしまったね。
これをフランス革命で自らの王を処刑してからまだ数十年しかたってないフランスで書いちゃうんだから、当時読んでて感情を揺さぶられた人もいたんじゃないかな。
しかも四銃士は命をかけて王を助けようとしたと描かれてるんだから、なかなか込み入ってます。

チャールズ一世ってこれまで全然イメージのよくない王様だったけど、なんだか好きになってしまいました(笑)。
このお話の王はとても立派。
逆にこれまでそこそこ良いイメージだったのに、お話ながら「ダメだこりゃ」な気持ちになったのは太后アンヌ・ドートリッシュ。
権力者はこんなもんと言われたらそうなのかもしれませんが、恩知らずな人でしたねえ。
今回ここまでゴタゴタと大変だったのは、ひとえに太后の恩知らずのせいではなかろーか。

四人の関係は相変わらず素晴らしく、それぞれのキャラが立ちに立ってる。
アトスはますます浮世離れしてるし、アラミスは相変わらず秘密主義で捉えどころがなく、ダルタニアンは精神的にも肉体的にもずーっとエネルギッシュで、ポルトスはね、ポルトスは……いいですねえ。巻が進むにつれてポルトスいい!になってます。
ダルタニアンがポルトスの扱い方を熟知してるのが笑えるんですね。
この二人は良いコンビ。
四人は従者も含めて相変わらず素敵なヤツラ。

生き方がほんとバラバラなんですね。
何に仕えて生きていくかというのが見事に四人それぞれ。
アトスは神と、神にこの世を託された王に仕える人生で、アラミスは自分自身に仕えてる人。
アラミスを聖職者に設定したのは上手いですね。彼の本性は、神ではなく自分が自分の主人でしょ、ここまで読む限りでは。近代的な人物像のように思えます。
ダルタニアンはシンプルに現世の権力者に仕える人。だから一番行動が現実的。
ポルトスが仕えてるのは、んー、本人の本能かなあ(笑)
眠い、食いたい、暴れたい、金が欲しい。
虚栄心の強さもそこから来るのだろうけど、根が善良なので健全です。
上手いこと描き分けてるなあと思います。



「二十年後」はイギリスでのお話が三分の一くらいあったかな?
ここまでイギリスが深く関わってくるとは想像してなくて、彼らがフランスに戻ってフランスのお日様にダルタニアンが「こんにちは」って挨拶してるところなんて、こっちも「やっと明るいフランスに戻ってきた~」って感じだったのだけど、なんと第三部の「ブラジュロンヌ子爵」でも彼らはイギリスに渡るそう。
忙しいね~。

第4巻で彼らがイギリスの食事と天気をボロクソに言ってたのが思い出されます。
ワインでなくビールなことにも文句たれてたなあ。
特にガスコーニュ育ちのダルタニアンのイギリス評が笑えたんだけど(クリームをかけたチーズのような月ってどんなにだらしない月なんだ)、どうやらこの先も陰気な異国で頑張る彼らが見られるようです。

次の第6巻「将軍と二つの影」からいよいよ第三部。
三部だけでこれまで以上のページ数なので、今から武者震いというか、もうワクワク。
頑張って読むぞー。
年くっても彼らは愉快で素敵なはずなので楽しみです!



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by teri-kan | 2017-05-29 08:44 | | Comments(0)
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