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ヴァンヌから広島へ

「ダルタニャン物語」の第三部「ブラジュロンヌ子爵」を読んでるところなのですが、若い頃聖職者志望だったアラミスは、第8巻現在でヴァンヌの司教を務めております。
只今「地図と物語の照らし合わせ」にハマっているワタクシは、そんなわけでヴァンヌについてちょっと調べてみたのでした。







ヴァンヌは第7巻で問題になるベル・イル・アン・メール島の近くにある街で、地域としてはブルターニュ圏。
昔々ケルト系のブルトン人が多く住みついて、言語も文化も独自のものが現在も残ってる、ちょっとフランスでも異質な地域。
465年にはキリスト教の公会議が行われ、同時に司教座と修道会も設置されてます。
由緒ある古い街なんですね。
でも地理的に戦乱が絶えなくて、町のシンボルである大聖堂も建てたり壊されたりを繰り返したよう。
現在のゴシック様式の大聖堂は15世紀から19世紀にかけて建設されたとのことなので、この大聖堂でアラミスはお務めしてたということになりますね。

ヴァンヌ出身の有名人を見てみたら、映画監督のアラン・レネの名前がありました。
「去年マリエンバートで」の監督だと言われたら、わかる方が多いかもしれません。
私はタイトルしか知りませんが、この映画は有名ですよね。
「へー、名作をたくさん撮ってる監督さんなんだー」と、代表作の名をつらつらと見たのですが、「おお!」と個人的に思ったのは、「ヒロシマ・モナムール」の監督だったということ。
こんなところで広島につながるかと、ビックリしました。

Wikiには「ヒロシマ・モナムール」ではなく、公開時の邦題「二十四時間の情事」で載ってますが、実は主演を務めた女優のエマニュエル・リヴァが2008年に広島に来てるんですよね。
50年前にロケで広島に来た時に撮った写真が複数発見されたということで、写真展が開かれたり、映画もリバイバル上映されたり、結構話題になったのです。
私はこういう映画があったということをその時知ったのですが、1959年という時期にフランス人が原爆を扱った映画を撮っていたというのは驚きでした。

写真で見る限りでは、若きエマニュエル・リヴァは美しくて、相手役の岡田英次もそれに負けずに美しかったです。
広島の町は、まだまだこんなものだったのかあといった印象。
繁華街や街中ではなく普通の人の暮らしぶりがうかがえる写真を見ると、平和そうではあるけど復興からはまだ遠い感じに見えます。
リヴァの写真はホントに何気ない路地や子供が写ってるので、当時を知る資料としても貴重なのではと思います。

この映画、なんと脚本がマルグリット・デュラスでした。
結構それで納得というか、邦題もそうだし、ストーリーもそんな感じ。
あらすじをあちこちから拝借して、ざっくり書かせてもらいますと、

「広島に反戦映画の撮影に来ていたフランス人女優が、日本人の建築技師の男と出会い、一夜の情事に身を委ねる。愛を覚えた男は一日限りで日本を発たねばならないという女の後を追い、二人は再び身を重ねあう。
二人はともに第二次世界大戦で戦争による悲劇的な体験を有していた。
日本人男性は米軍の原爆投下によって家族を全て失っており、フランス女性はナチスの将校と恋仲だったが、戦後に周囲から糾弾や迫害を受けた過去を持っていた」

うーん……。
ナチスと情を交わしたフランス女性が解放後酷い目にあったという話は、今も言われてることですね。
公衆の面前で丸刈りにされて市内を引きまわされたというやつ。
個々の事例はいろいろあるんだろうけど、これについては欺瞞も感じられて嫌な気分にしかなりません。
ナチスに大なり小なり協力し、あるいは簡単に言いなりになったやましさが、彼女達への過度の暴力に転化されたような気がしてならないです。

ナチスの愛人といえばココ・シャネル。
シャネルには「ナチスのスパイだった説」なんてものもありますが、有名人の彼女は助かって、市井の女性達は壮絶なリンチにかけられたというのは、なんとも辛い話です。
他国に支配されると国内で深刻な断絶を生み出すという例ですね。
フランスはドイツにホントいろいろヒドいことされてるなあ。

そういえばドイツって、フランス語ではアルマーニュっていうのです。
自分達の東隣に住んでいた民族がゲルマン系のアラマンニ人だったから、アラマンニ人のいる土地、すなわちアラマーニュ。

なんで突然こんな話になるのかというと、「ダルタニャン物語」にアンリエット・ダングルテールなる人物が出てくるからです。
今読んでる第8巻で大活躍してる女性で、ルイ14世の弟に嫁いできたイングランド王女。
で、「ダングルテール」って一体なんや?ってことになって、フランス語だから「ド・アングルテール」で、要するに「アングルテール」ってなんや?ってことなんだけど、これもなんのことはない、アングル人の国ということで、イングランドそのもののことなのでした。
イングランドの語源であり、アングロサクソンのアングロとも同じ、ゲルマン民族に属する部族・アングル人が元。

こういった名前って歴史や語源を知るとわかりやすいですよね。
でもフランス語はやっぱりややこしい~。

ちなみにダルタニアンの故郷ガスコーニュは、バスク人の祖先のヴァスコン人がもとになってます。ヴァスコニアが語源。
あの地域の個性もこれを知ると納得。
ヴァンヌのあるブルターニュのブルトン人もそうだけど、フランスってもともと多様性に富んでるんだなあと感じます。
まあ、多様性というか、無理矢理一緒にしたというか(苦笑)。
フランスの国境地帯を有する地域の歴史は面白いですね。



ヴァンヌまで帰ってこれたのでこの辺りで終わります。
書きながらどこへ行くのか我ながらよくわからなかった(笑)。
「ダルタニャン物語」まで戻れてよかったです。
ちょっと無理やりだったけど。



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by teri-kan | 2017-06-14 14:40 | フランス映画 | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


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