「ダルタニャン物語」を読み終わって

無事読了。

本来なら前回までの続きで最終巻である第11巻、「剣よ、さらば」の感想を書くところなのですが、読み終わって真っ先に思ったのは四人との別れ。
旅立った彼らへの思いを吐き出さずにはストーリーを振り返ることができないので、まずは最後の最後まで愛すべきヤツラだった四人+αについて書きます。







まずアトスとラウル親子。

夢の中のラウルが美しすぎて泣けた。
アトスの死が優しすぎて泣けた。
久しぶりに本を読んで涙が止まらない経験をした。
バスとかで読んでなくて本当に良かった。

アトスの後半生がラウルあってこそだったのはわかっていたので、日々衰えていく彼の描写は胸に詰まるものがありました。
肉体よりも精神が先に生命力を失ってしまったのが寂しい限りでしたが、アトスの後半生はその精神性に代表されるようなものでしたからね。
それを尊ばれたからこそ神は彼に優しい死を与えられたのだし。
遠い場所にいてさえ愛する息子からほとんど間をおかずに天に召されたのは、神の恩寵の他ありませんでした。

ラウルは……死に憑りつかれてましたからね……
あれはどうにもなりませんでした。
むしろボーフォール公が必死で救おうとしていたのが印象的でした。
牢獄暮らしをしてた時の公はほとんどお笑い担当で、遠征前も破れかぶれなくらい陽気な人でしたが、だからこそラウルを助けるために必死だったのが強烈でした。
皆に愛された若者だったんですよね。
あまりにも可哀想な最期でした。

四人の死に様はそれぞれにふさわしいものだったと言っていいと思うけど、ポルトスは力持ちの彼にふさわしいと言うにはしんどすぎました。
腕は最後まで強かったけど、脚が弱点だったということになるのか……。
全てを目の前で見るしかできなかったアラミスが可哀想でした。

ポルトスの従者のムースクトンが私は大好きで、ムースクトンの「とにかくご主人様大事」な様子がとてもお気に入りだったのです。
素直な魂の持ち主だったご主人にピッタリの素直で善良な従者で、これまでもポルトスに何かあればムースクトンの心配をしてしまうような、例えばポルトスが謀反人になった際にはムースクトンがどれだけショックを受けるかとこっちが気に病むような、そんな読者にとって愛すべき従者でした。

なので彼が嘆く姿は心に痛かった。
ムースクトンの死は恐れていた通りというか、悲しすぎて心臓が耐えられなかったんですね……。
ポルトスの死はムースクトンと合わせてより悲しみが増した感じです。
従者も最初から最後までなくてはならない存在でしたから。

ダルタニアンの死は本当に物語の最後の最後。
不運に思える死に方でしたが、戦場なのでこういうことはあるでしょう。
元帥杖を持って、ドラマチックな終わり方でした。
誰にとっても惜しい死でしたが、でも本人的には納得なのかな。
徹底して軍人として生きたダルタニアンの、正しく軍人的な死に方でありました。
ダルタニアンの死は……読者としても四人の中では最も納得できるかなあ。

唯一本文中で死の様子が描かれてないのがアラミス。
最後の方では随分老いた風だったけど、頭は衰えてなかったし、もしかしたらこの後もかなりしぶとく生きたかもしれません。
アラミスの人生観ってよくわからないところがあって、あっさり命を投げ出しそうでもあるし、何があっても生にしがみついていそうでもあります。

なんだかんだで最後に残ったのが聖職者のアラミスなので、彼には先に逝ってしまった友の菩提を弔って余生を過ごしてもらいたい。
とことん秘密主義の人でしたが、これからは親友にも天から丸見えなので、謹んで生きてもらいたいなと。
策謀ばっかりやってちゃいけないよと。
でも彼の人生を振り返ると、策謀が生きる栄養源みたいなところがありましたよね。
そういうものを完全に失ってしまったら、彼も生きる意味をこの世に見いだせなくなるのかもしれないな……。

時が来ればアラミスも天に召されるそうです。
アラミスが友に追いついたことを示す一文で彼らの長い物語も完結。
ダルタニアンが死んだばかりだったけど、良いラストだったと思いました。
寂しいけれど温かい終わり方でした。



うー、どうしてもしんみりしてしまいます(涙)。
次回は気を取り直して明るく最終巻の感想を書きたいと思います!




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by teri-kan | 2017-07-10 16:41 | | Comments(4)
Commented by あんどれあ at 2017-07-11 00:49 x
読了、お疲れ様でした!
「鉄仮面」のコメントには書けませんでしたが、怒涛の悲劇展開なんですよね(涙)
全員、最期まで自分らしい生き方を全うするし、軍人らしく覚悟を決めて去っていくのですが、読者が覚悟ができない(笑)。なかなかダルタニャンのように、さよならを言う気にはなれませんよね。
「二十年後」で「俺に何かあったら、遺産はラウルに」なんてダルタニャンやポルトスが言ってたのに感動してたのに、まさか一番先にラウルが逝くなんて、本当に悲しすぎます。
再読で結末を知ってても、ラウルのルイズ一筋の様子が、ミレディと会ったときのアトスとだぶるようで縁起でもない、なんて思ってしまったのですが、それにしても。
Commented by teri-kan at 2017-07-11 14:24
あんどれあ様、こんにちは。

とうとう終わってしまいました~(涙)。
楽しく読んでいた私を温かく見守って(?)下さってありがとうございます。
いろいろ書きたいことがおありだったのではないかと思います。
「鉄仮面」でコメントいただきましたけど、私の感想って今から思えばツッコミどころ満載のような気が。
よく考えたら王の入れ替えなんてホントに起こったら大変ですよね。
でも私はルイがあのまま精神を壊して鉄仮面になるんだーと、割と本気で思っていました(笑)。
その場合フーケとコルベールはどうなるんだろうとか、史実は知っていても考えちゃいました。
「違う、そうじゃない」って仰りたかっただろうなと、全てを知った今は思います。

ラウル、可哀相でしたね。
思えばルイズに熱心なラウルをアトスは昔から心配していました。
危惧が現実のものになってしまったのが本当に悲しい……。
あの親子は女性運が本当になかったんだと思います。
Commented by あんどれあ at 2017-07-12 00:52 x
>「違う、そうじゃない」って仰りたかっただろうなと、
えー、そんなことないですよ!
歴史を知ってても、チャールズ1世助かるかも!って本気で思わされてしまうのがこの物語なんで。
でも、言われてみれば、バッキンガム公爵の暗殺者が史実どおりだったりして意外に?最後は史実に忠実なんですよね。当たり前か…。
鉄仮面は、ボーフォール公説もあるみたいですね。私は「二十年後」のお騒がせ男のイメージが強くて、いやーそれは彼には無理だろう、と思ってしまいます(笑)。

最初の2冊(いわゆる「三銃士」部分)は読まれる方が多いですが、全作読んでる方ってあまりいないのでお仲間が増えて嬉しいです。けっこう「ヴラジュロンヌ子爵」の宮廷絵巻部分がかったるいって挫折しちゃう人もいるようなんですよ。

実はダルタニャン以外が銃士である期間てほんの数年だって今更気がついたんですが、「マスケティアーズ」の最後で言ってたみたいに、全員銃士の心意気をもって一生を送ったという気がします。やっぱり別れがたいですね。
Commented by teri-kan at 2017-07-12 10:27
あんどれあ様、こんにちは。

>歴史を知ってても、チャールズ1世助かるかも!って本気で思わされてしまうのがこの物語なんで。

そうですね! あの時は「もしかして」と思いながら読んだものでした。
フィリップにもフーケにも同じような気持ちを抱いて、やっぱりダメだった時のショックときたら(苦笑)。
史実から外れたら変になることはわかってるんですけどねえ。

私もボーフォール公は「お騒がせ男のイメージ」です。
終始いい味出してましたよね。牢獄生活は面白かったです。

>宮廷絵巻部分がかったるいって挫折

……なんとなくわかるような気が。
私もあそこは時間がかかりました。
あれを越えると面白さが急加速するんですけどね。

>全員銃士の心意気をもって一生を送ったという気がします。

四人の人生を見てみても、若かりし頃のあの時代を特別に思っているのがよくわかります。
だから別々の人生を歩んでても、あの時代をベースにして共に戦う「二十年後」はホントに素晴らしいと思います。
「二十年後」のイギリスでの活躍、大好きなんですよー。
映画化してくれないかと結構本気で思っています。
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