「スペインレコンキスタ時代の王たち」

副題「中世800年の国盗り物語」。
西川和子著、彩流社。

カタルーニャ独立問題で、個人的にスペインがちょっとブーム。
でもどっちかというとカタルーニャより、スペイン中央政府に興味があります。
独立問題があるにしても、ちょっとカタルーニャに厳しすぎない?ってことで。
例えばイングランドがスコットランドに対して見せる態度とは、かなり違うような気がするのです。
もうちょっとこう、融和的な態度をとればいいんじゃないかと思うのに、国をまとめる象徴の王でさえカタルーニャに厳しい。

というわけで、ここらでちょっとスペイン史をきちんと知っておこうということで、本書を読んでみました。
近現代ではなく中世なのは、スペイン人のもっと基本のところを知りたいから。
以前読んだ西ゴート王国についての本で、スペインは西ゴートの影響を後々まで受けてると書いてあって、スペインのことを知るならそこから読み直すべきかもしれないのですが、それだとさすがに長大になってしまうので、とりあえず今回はその西ゴート王国が滅亡したところから。
イスラムに侵略され、それが故に西ゴートの後継を自認していたレコンキスタ時代のカトリックの王達の行動を、今回は見てみようというわけです。

で、じっくり読んでみたんだけど、いやー、もうね、私は腹が立ってしょうがない(笑)!







昔々若かりし頃、各国の王侯貴族の系図作りにハマってたことがあって、もちろんイベリア半島の王家の系図も作ったんだけど、ここはものすごく入り乱れてるんですね。
アストゥリアス、レオン、カスティーリャ、アラゴン、ナバラ、そしてポルトガル。
各国の王がそれぞれ兄弟同士とか、なんでこんなにあまりにも身内なんだ?ってくらい、近い血でごちゃごちゃしてるんです。

で、本書でもその通りにごちゃごちゃやってるんです。
800年間を著した本ですが、本当に800年間隣国の兄弟同士でごちゃごちゃやってるんです。
ごちゃごちゃというのは、兄弟追い落とし、兄弟の土地奪い合い、兄弟の騙し討ち、それぞれを支持する貴族の思惑も巻き込んで、ホントにずーっとごちゃごちゃやってるんです。
漫画「アルカサル」が兄弟と貴族の確執ぐちゃぐちゃな話でしたが、あれをずーっと800年間やってるんですよ。

もうね、読んでてイヤになってきます(笑)。
「アホかこいつらー」って怒鳴り倒したい気になってくる。
昔スコットランドの歴史本を読んだ時を思い出しましたよ。
あそこも貴族の足の引っ張り合いで、一人の王を中心にまとまって国を強くしていこう!なんて気概などまるでない国でした。
中世スペインもそれに近くて、読んでてはっきり言って、「お前らいい加減にせえよ」な気分にならない方がおかしいくらい。

やっぱり諸悪の根源は兄弟分割相続ですよねえ。
せっかく父王が苦労して三つの国を束ねても、三人の王子にそれぞれの国を分け与えるんだから、延々とバラバラで奪い合うことになる。

西ゴートの王位継承がどうだったか、よくわからないんだけど、ゲルマンは分割相続だと言われてますよね。
有名なところではフランク王国。
そうそう、中世スペインの王家の兄弟足引っ張り合いは、フランクのメロヴィング朝を彷彿とさせるものでした。
欲を前面に出した野蛮な骨肉の争い。
でもフランク王国は三つに分かれてからは、特にフランスなんかはきちんと祖父、父、子、孫、というふうに、綺麗に縦に王位が繋がっていく。
西暦千年過ぎても分割してごちゃごちゃやってるなんて、どんだけ遅れてんだスペインと、ちょっと言いたいな。

とまあ、そんなうんざりするほど長年まとまらなかったスペインなので、後世においてまとめようとする意識はかえってものすごく強く働くのだろうなと、想像できないこともないです。
そして、そんな兄弟同士でごちゃごちゃしてた人達ですが、なんだかんだで彼らは祖先が同じの、価値観を一つにする同族です。
いざまとまろうとなれば、まとまることもできるでしょう。
カスティーリャ、ナバラ、アラゴンは、イスラムに奪われた土地を取り戻せば、「よっしゃ!これからは一心同体だ!」と思えないこともないでしょう。

問題は今話題のカタルーニャ。
本書の時代はバルセロナ伯領として出てきますが、このバルセロナ伯がですね、なんだかとてもいいんですよ。
元々の成り立ちが違うから、ヤツらの骨肉の兄弟間の争いからは遠いのです。
ナバラかどっかが「どこそこの土地を攻めよーぜ」みたいなことを言い出しても、「まあまあ、こういうのはバランスが大事ですよ」と均衡を主張するタイプ。

比較すると、カスティーリャ・ナバラ・アラゴンの三国は、言ってはなんだが閉鎖的な田舎者って感じかな。
あの三国って、アフリカ側からイスラムに侵略されて、かろうじて拠点と出来たのがピレネー側の山岳地帯で、ホントに閉鎖された山とか内陸部が基盤の人達なのです。
延々やってる骨肉の争いも、閉鎖的な地域だからこそと考えれば、なんとなく「そうか」という気にならないでもない。

一方バルセロナを中心とするカタルーニャは、地中海に目を向けてる開放的な海洋国家。
もともとフランク王国辺境伯の土地なので、気質的にはむしろ南仏に近いくらいでしょう。
……うん、そもそも根本から合わないだろうなあと思いますよねえ。

カタルーニャはアラゴンと隣同士だったので、結婚を機に連合王国を作ったりして、地中海を股にかけて繁栄しますが、その連合王国の王がカスティーリャの女王と結婚してスペインというまとまった国になったところから、なんだか変な具合に。
多分カタルーニャの人達は、お隣のアラゴンと手を組むのはともかく、カスティーリャと同じ国になるとは、全く考えてなかったんじゃないかなあ。
しかもあっちが上になって強権を振るってくるとか、なにそれ?って感じだったんじゃなかろーか。

しかもカスティーリャ王家なら、それでも同じイベリア半島の同胞だけど、いつしか王家はハプスブルグが乗っ取ってるし、そのうちブルボン家になるし、時代が下るほどにカタルーニャとして生きていくことは難しくなってくる。
やっぱりカタルーニャにとっては、「こんなはずでは」みたいな気持ちが強くなってもしょうがないんじゃないでしょうか。

みたいなことを思った、レコンキスタ時代の王達のお話なのでした……。



本の感想という感じじゃなくなっちゃったけど、ホントにこの本の感想としては、「いい加減にせえよ」しか出て来ないんですよね。
でも内容は面白かったです。
王達が兄弟間・キリスト教国家間の争いをしつつ、イスラムに奪われた町を徐々に奪還していく流れは、平易に簡潔に書かれていました。
この時代のスペインをざっくり知りたいという方にはちょうど良いのでは。
この後スペインは地球上の各地に支配地を持ち、現地住民を弾圧することで悪評を残しますが、こんな歴史を経た上にあの残虐さがあると考えるのも、一つの手ではないかと思います。

以前読んだ西ゴートの本では、現在のスペインはドイツ的な地方分権主義と、フランス的な中央集権主義が混在していると書いてありました。
本書を読むと中世スペインは、イスラム支配による地方のバラバラ感と、西ゴートの後継としてまとめようとする力と、二つの力が働いていたことがわかりますが、統一後のドイツのハプスブルグ、フランスのブルボン、それぞれの支配者の影響もどれだけ作用したのか、気になるところではあります。

今現在やたらと中央集権的に見えるスペインですが、例えば所得税の配分は地方と中央で半々になってるらしく、州の権限が強いアメリカやドイツでさえ所得税は全て中央に行くことになってるのにスペインはおかしいと、某新聞のコラムに書かれていました。
おそらく表面に現れているよりもスペインの中央と地方の関係は複雑怪奇なのだと思われます。

確かに本書の800年間は複雑怪奇と言っていいかもしれません。
中央と地方とのバランスがあまりにもとりにくい国になってしまった原因の大部分ではあるかもしれません。
この800年間は……やっぱりげんなりさせられますもんね。
スペイン統一王国成立後より個人的には好きな時代なんですけどね。




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by teri-kan | 2017-12-06 14:22 | | Comments(0)
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