「オオクニヌシ 出雲に封じられた神」

戸矢学著、河出書房新社。
日本古代史最大の謎であり、最大の事件である「国譲り」について解明を試みた本。
出雲に深く切り込んでます。
とても刺激に満ちてる内容です。







はい、確かに刺激に満ち満ちているんだけど、いつもに増して内容を頭の中で構築していくのが難しい文章(苦笑)。

論の進め方が、なんていうんでしょうか、建築物で例えるなら、土台を作って、骨組みを作って、壁を作って、一つの大きなビルを作り上げる、といった感じじゃなくて、個性ある戸建ての家を一つずつ何個も建てるって感じ。
で、その家々の集まりを集まりとして見なければ結論に辿りつけない。
なのでそのために家々を見渡せる見晴らし台に上らないといけないのだけど、上るためには自力で歩く努力が必要で、それには相応の知識も持ってないといけないという、とてもややこしいことになってるんですね。
なんか我ながらよくわからん説明だけど。

しかも出来上がってるのはデカいビルではないから、パッと見派手ではなく、いまいちカタルシスに乏しい(笑)。
家々の集まりを見て、思わぬ光景に気付かされるというのはあるけど、そこを気付けるかどうかは、それこそ持ってる知識によるというか。
読了後よくわかったようなわからんようなわけわからん感覚になるのは、多分その辺りが原因ではないかな。

ただ、「謎の解答はこれです!」といった、古代史本によくある謎解きミステリー風ではない分、一見荒唐無稽な内容でも地に足着いてる印象は強い。
「ほんまかいな」なところもあるんだけど、それでも誠実な印象を受けるのは、結局はそういった書き方のせいかもしれません。
とはいえ、もうちょっと一冊の単行本として整理してまとめてくれたら、読む方としては助かりますよねえ……。



とまあ、そんな本書なのですが、肝心の内容についてはおもしろかったです。
出雲神話の「いずも」の語源が熊襲(くまそ)などと同じヤマト側からの蔑称だという説には大いに頷けました。
それならば筋が通りますしね。
出雲風土記と古事記には両方とも出雲神話が出てきますが、その二つの内容が全く重なっていないことの理由も、本書の説は筋が通っています。
オオクニヌシが国を作った英雄として古事記で全然有能に描かれていない理由も「なるほどー」。
武勇でならした王ではなく祭祀に長けた王と言われれば、確かに古事記の内容もそれをうかがわせるものになってるような気がします。
そうであるからこそ強い祟りを恐れたというのもあるかもしれません。

出雲をどう捉えるか、というのが、現代に通じる古代史最大の課題といっていいんでしょうね。
正直ヒミコの国がどこにあったかというのは、現代日本にそこまで関わりないかもしれないけど、国譲りしてオオクニヌシが出雲に籠ったお話は、大和朝廷成立の経緯に大きく関わります。
蘇我氏の扱いもですね。
乙巳の変(大化の改新)は藤原氏台頭の原点として歴史上の大政変です。
ここの真実には興味津々なのですが、こここそ問題の根は深く謎が深い……。

戸矢氏は以前から蘇我氏とスサノオの関係に触れてるんだけど、いやー、正直最初は「ええっ?」だったんだけど、最近「そうかもしれないな」って思えるようになってきて(苦笑)、「そうかもしれない」というより「そうであったらいいな」といった方が気持ち的には近いんだけど、やっぱり蘇我氏の名誉回復が図られればいいなあと思ってしまいます。
心情的にそっち寄りになっちゃってるんですよねえ。

まあ、氏の説はアカデミックな方々からは嫌がられてるようだけど(そりゃそうだろうなあ)、刺激に満ちていることには変わりない。
本書も面白かったし、今後も楽しみです。
出雲神話に興味のある方には、この本は(人を選ぶかもしれないけど)オススメです。




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by teri-kan | 2017-12-13 15:59 | | Comments(0)
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