カテゴリ:本( 130 )

「カペー朝 フランス王朝史1」

佐藤賢一著(講談社現代新書)。

タイトル通りフランス・カペー朝歴代の王について書かれた本。
王様一人一人について性格、成し遂げた事柄等が当時の状況と共にわかりやすく書かれていて、大変面白い歴史本です。

読んでてつくづく思ったのは、君主にとって何より肝心なのは長生きすること、しっかりと男系の子孫を残すこと、それに尽きるんだなあということです。
ハプスブルグ家の繁栄も結局はそれ故なのですが、そういった生命力の強さが人の上に立ち続ける家門の条件の最たるものだというのは非常に納得できますね。

とはいえカペー朝のように、こうまで見事に父から息子へと王位継承がなされているというのは、筆者によれば奇跡的なことなのだそうです。言われてみればその通りで、以前ヨーロッパの歴史の勉強をする時、人を中心に見ていった方が流れが理解しやすいからと自前で各王朝の系図を作ったことがあるのですが、確かにフランス王家はとても書きやすかったのですよ。
これがスペイン、イギリスだとそうはいきません。ドイツなんか最悪です。おかげでドイツの歴史は覚えにくい(苦笑)。対立王とか、どこの家のフリードリッヒさんかハインリヒさんか、頭の中で整理するのが大変なのです。
その点フランスはわかりやすく、勉強しやすい。ヨーロッパの歴史を知りたいと思う人は、とりあえずフランス史から入るのがやっぱりいいような気がします。


本作で一番面白いと思ったのは、後書きでフランス王国を個人商店にたとえたところ。
あれは妙にわかりやすくて笑ってしまいました。
テンプル騎士団撲滅の呪いのせいで直系男子が絶えたという噂も、いかにもな話でウケました。
ていうか、タンプル塔ってテンプル騎士団の本拠地だったんですね。「あ、そうかー、そういやタンプルかあ」って、今更ながら納得しました。



次はヴァロア朝です。戦争、陰謀、発狂、グチャグチャのドロドロ王朝。
カペー朝の王よりも既にたくさん本などに書かれている王達が出てくるので、より面白い作品を期待したいところです。




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by teri-kan | 2009-07-29 10:36 | | Comments(0)

「中世世界とは何か」

佐藤彰一著(岩波書店)。
ヨーロッパ中世初期について書かれている歴史書。発行は08年11月ですが、先月本屋で初めて見つけて購入。思ったよりも早く読み終わることができました。



面白かったー!

もー、こういう本を待っていたんですよ。ヨーロッパがヨーロッパであることの基本というか、どういう風に今のようになったのかその原点というか、それが知りたくてこの時期について書かれた本をいくつか読み続けてきたのだけど、ピンとくるものにはこれまで出会えなくて、なんとなーくモヤモヤしたものをもう何年もずっと抱えていたのですね。

でもこの本でいろいろなことを初めて知ることができました。
ゲルマン人の王の定義、貴族の成り立ち、それから修道院の成り立ち、帝政ローマ衰退からゲルマン国家形成までの混沌とした時代のあらましetc.。
ゲルマン人(というかフランク人)の歴史や思想がわかりやすく書かれていて、いやー、読んでて楽しかったですねー。


私は歴史についてはただの趣味で、専門に勉強したわけじゃないのだけど、これはそんな人間にも読みやすい本だと思います。
もちろんある程度の流れや人物名、地名はそこそこ知ってないとダメだけど、あの辺の時代に興味がある人なら絶対楽しめると思います。


あと数回は読み込んで、全部が全部は無理でもきちんと自分なりに理解できるようにしたいな。
今はまだ上っ面なぞってるだけだし、もうちょっと頑張りたいと思います。




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by teri-kan | 2009-07-08 10:31 | | Comments(0)

「グインサーガ」

作者の栗本薫氏が先日亡くなられ、未完となってしまった作品。
しかし既に覚悟は出来ていたので、そのこと自体については冷静に受け止めています。

体がお悪いことを知っていたからの覚悟でしたが、おそらくお元気でいたとしても、この作品は彼女が生きている限り未完のままだったような気がします。大往生を遂げられたとしても、彼女の手からこの物語が離れることは決してなかったと想像するので、どちらにしても永遠に完結は来なかったんじゃないかな。

それほどこの話はズルズルズルズル長引かされた作品でした。タイスでのグダグダが何巻も続いた時には、さすがの私も本を床に叩きつけたい衝動にかられたくらいで、気の長い私でさえこの有様なのですから、そうでない方々が「50巻あたりでやめた」「100巻でやめた」と口を揃えるのは当然だろうと思います。

あの方はそう簡単に人生諦める方ではなかったとお見受けするので、もしものために、なんてことは考えなかったかもしれませんが、しかし百数十冊もの本を買い続けてきたファンのために、続きのプロットを残しておくとか、そういったことをしているのかいないのか、その辺は少し気になりますね。
何も残していないのだとしたら、それはまた残念なことだと、ずっとこの作品を読み続けてきた者の一人として悲しく思います。もし何かメモなり何なりの形で残っているのだとしたら、いつかそれをどのような形態でもいいので、発表してもらえたらと思います。


「グインサーガ」の前半は本当に素晴らしい話で、あれを思うと途中からの停滞が口惜しいほどに残念なのですが、こうまで作者と一体になってしまった物語であるなら、それも仕方ないのかなと。
しかしきちんと完結させていたなら、おそらく後々まで読み継がれる作品になっていたのではないかな。

かえすがえすも残念です。




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by teri-kan | 2009-05-30 15:40 | | Comments(0)

「天使と悪魔」

只今映画が公開中のダン・ブラウンの原作本。
映画を観にいくにあたって急遽原作を読みました。

本屋に置いてあったアンケート結果があざとくて、あれのせいでどうしても「ダ・ヴィンチ・コード」と比較して読まざるをえなかったのですが、一体あのアンケートは何だったんですかねえ。ああまでして「ダ・ヴィンチ・コード」を貶めないと「天使と悪魔」の映画を見に来てくれそうな人がいなかったんでしょうか。
「ダ・ヴィンチ・コード」の映画は確かにつまらなかったけど、あのアンケートはないわ。商売根性が見え透いていて不愉快の方が勝る。

で、結局本作の感想も比較した感想になってしまうのです。





ほんのりネタバレあり
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by teri-kan | 2009-05-23 23:24 | | Comments(0)

「ブルボンの封印」

藤本ひとみの「鉄化面」物語。
ルイ14世双子説は楽しいですね。どのようにでもストーリーを膨らませられます。

内容は主人公の女性の出自の謎と恋愛を軸に繰り広げられるフランス王朝絵巻……って感じだったかな。ぐいぐい読めるし、彼女の作品らしくいい男がたくさん出てくるので、歴史物好きな乙女にはオススメだと思います。(宝塚で上演したくらいだから雰囲気は想像できると思います。)

最後の辻褄合わせが上手いこと出来ていて、「おおっ、こういう風にまとめたか」と感心しました。これは仕方ないと思えるというか、少なくとも本人の苦しみは小さくてすむかなと。
とはいえ酷い話ではあります。鉄仮面が存在していたという前提での話なので、どうしても誰かを仮面の中に押し込めなきゃならないから仕方ないんですが。


当時これを読んだ後「鉄仮面って知ってる?」と後輩に尋ねたところ、「鉄仮面は知らないけど銀仮面なら知っている」という答えが返ってきました。
銀仮面など初耳だったので詳しく聞いてみると、ある小説の登場人物なのだがとにかく面白い、恋愛ものではないが銀仮面もいい顔だからおそらく気に入るはずだ、少しだけでも読んでみたらどうか、みたいなことを言われて、彼女の薦めるままにその「銀仮面が登場する本」というものを借りてみました。

それが田中芳樹の「アルスラーン戦記」。


確かに仮面ものといえば仮面ものですが、さすがに鉄化面とは違うし、かといって話は確かに面白いし、結局「アルスラーン」はその後自分でも購入して新刊が出る度買い続けているのですが、時々こうして「ブルボンの封印」を思い出しては、変な気分になるのです。

「銀英伝」や「創竜伝」など田中芳樹を読みまくって随分楽しませてもらったものですが、それも全て「鉄仮面」から銀仮面をイメージしてくれた彼女のおかげだったなあと、今でもおかしくもありがたい気持ちになります。




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by teri-kan | 2009-03-11 11:00 | | Comments(0)

少年探偵団

先日、本屋で江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが文庫になっているのを知りました。
結構な感動でしたね。小学生の時ハマりまくった本の表紙がそのまま文庫版の表紙になっているのだから。
挿絵も当時のままでいい雰囲気が出ています。作品中の時代と小学校の図書室の懐かしさが合わさって、一気にノスタルジックな気持ちに浸ってしまいました。

思わず買おうかと思ったけれど、いかんいかんキリがない、と思いとどまりました。
あの表紙は卑怯だ(笑)。絶対揺らいでしまうって。


文庫化は正解ですね。ハードカバーは家に置くにはかさばるのですよ。
小学生時代、図書館になかった数冊を親に買ってもらったのですが、学校図書のもう一つの定番アルセーヌ・ルパンシリーズと共に今も家の押入の奥に眠っています。もう読まないけれど捨てるに捨てられず置いてもらっているのですが、文庫なら楽だよなあと今回思ってしまいました。
全巻買っても置けるよなあとか。


久々に読んでみたくなりました。
江戸川乱歩の大人版とかもね。



「K-20怪人二十面相・伝」はとうとう観にいけないままでした。残念。




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by teri-kan | 2009-02-03 11:37 | | Comments(0)

「琥珀の望遠鏡」

「ライラの冒険」シリーズの3作目です。


読みながら高校時代の代用教員の先生を思い出しました。退職して十年は軽く過ぎてるだろうと思われるおじいちゃん先生で、わずかの間でしたが国語を教えて下さったのです。
で、その先生が授業中によく仰っていました。

「山も仏、川も仏、石も仏、葉っぱも仏、全てが仏」

私はそれを「万物全てに命は宿り、それは循環していく」というふうに捉えていたのですが、この作品に出てくる「ダスト」の正体はまさしく先生の仰っていたそれではないかと、読みながら懐かしく思ったのでした。


「黄金の羅針盤」から続く謎の一つ、未知の物体「ダスト」。その「ダスト」とは一体どういうものなのか、今作では極めてわかりやすく描かれています。死者の魂が大気へ還る情景なども大変わかりやすい。日本人にはとても身近に感じる情景で、あそこまでこと細かく描かなくてもいいんじゃないかと思うくらいに。
でももしかしたら西洋人には必要なのかもしれません。魂が大気に還るあの解放感、おそらくキリスト教とはかけ離れた感覚でしょう。死んで無に還るのは究極に自由なのだと、彼らでもちょっとは思うことがあるのでしょうか。


天使の描き方がおもしろい。キリスト教会の抗議も至極納得の描かれ方。
あまり不謹慎なことは書けませんが、確かにキリスト教は「支配」に都合のよい宗教ではありますね。神の代理人とは便利な言葉です。その代理人の、そのまた代理人も、いくらでも好きなように自分達で選べる。彼らは決して神ではないのに。


少年と少女の成長が良い。最後は甘くほろ苦く、寂しいけれども温かです。


映画になったら素晴らしいけど、満足できるものをとなるとかなり難しいでしょう。
この世界観を表現できるのか、そこんとことても微妙。




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by teri-kan | 2009-01-10 01:19 | | Comments(0)

「神秘の短剣」

「ライラの冒険」シリーズの第2作目。

3作中最も映像向きなのではないか。
せっかく「黄金の羅針盤」を映画化したのならなんとかこれも作ってもらいたい。

2作目の重要なポイントに「大気中に存在する窓」というのがあるのだが、これが映像化されたらとても面白いと思う。特にそれを駆使してある物を取り返す場面は是非映画で観たい。さぞかしハラハラドキドキ、今まで見たことない映像になるだろうに、さて、映画が作られるのかどうなのか、問題はそこなんですよねえ。

物語としても「神秘の短剣」は大変面白い。
個人的に一番時間を忘れて読んだのは3作の中でこれです。




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by teri-kan | 2009-01-09 09:44 | | Comments(0)

「黄金の羅針盤」

映画「ライラの冒険」(2007)を観て本に手を伸ばした作品。
なので先に映画の話から。

予告編には心を動かされなかったのだが、シリーズ物だというので観に行ったこの映画。
でも出来は悪かった。「続編作れるのか?」と心配になるほどに。

キャストは豪華、CGも悪くない、絵自体はとても綺麗、なのに映画として全然ダメ。エピソードの羅列だけで、素材はいいのにシェフが素人の典型のよう。

こんな映画なのになぜ原作を読もうと思ったのかというと、あまりに映画が悪すぎたから。ようするに「こんなもんじゃないだろう」と思ったから。
だって原作の評判はとてもいいのである。このまま映画が打ち切りになって先のストーリーを知らないままというのはなんだかもったいない気がするのである。

なので読んでみた。「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」「琥珀の望遠鏡」のシリーズ3作とも。


で、1作目の「黄金の羅針盤」なんですが、映画、こりゃいかんでしょう。全然ダメです。
特にラストのあの出来事をカット、あるいは次に回すなんて、ちょっとどうでしょうか。
子供が主人公と言いつつ非常に「大人の事情」が鍵を握る作品なんですが、それを綺麗事ですませてしまうとつまらんことになってしまう可能性大だと思います。映画、続編を作るならちょっと性根を入れ直さないといけないでしょうね。

本はなかなか面白い。先を読ませるし、すぐに「神秘の短剣」に進みました。

映画はもったいなさすぎ。




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by teri-kan | 2009-01-08 10:36 | | Comments(0)

「蛇王再臨」 アルスラーン戦記13

ドン・リカルドさんが16翼将の最後の1人だったとは。
(いや、まあ丁寧に描かれてきた人物ではあったんだけど、いまいちそんなイメージなくて。)

ジャスワントやジムサのように、故国に帰れなくなった冒頭のチュルク人青年がアルスラーンの部下になるのかなと思ってたんだけど、彼最後は蛇王の鎖削ってるし、なんだかとってもお気の毒なことになってます。

にしても、エステルとザラーヴァントがもう死んでしまったか……。

これから先は誰が死ぬのかビクビクしながら読むしかないのかな。死ぬのは仕方ないとしても、登場人物は皆特に悩みがなさそうで、人間的成長を見せてくれそうな気配がないのがなんだかなあという感じです。

でもなんだかんだで楽しみにしているので作者には頑張って最後まで書いていただきたい。できればもう少し早いスピードで。

で、今後の自分的見所と希望です。

・ナルサスとアルフリードの行く末。できれば成就してほしい。
・ファランギースとグルガーンの因縁がどうにも不気味。
 ザラーヴァントもああいう死に方してしまったし。
・レイラとアルフリードの関係も気になる。レイラを気遣って墓穴掘りませんように。
・アンドラゴラスの娘はおそらくフィトナ。あの豪胆さはまさしく父譲り。
 その場合ヒルメスとの関係がどうなるか。
・アルスラーンの後継はどちらにしろ誰か立てるんだろうけど今のところ候補はゼロ。
 ヒルメスの子供を予想したこともあるけど、古い王家の血が今更歓迎されるとは思えない。
・パラフーダがどんな活躍をするか。唯一蛇王に会ったことのある彼が蛇王とどう戦うか。
 パリザードがもしかしたら何か関わるかも。
・ダリューンのお相手は出てこないのかな。やっぱり最後は絹の国に行くのでしょうか。
・案外ギーヴがまともに死んでしまいそうで怖い。
・ていうか1人でも死ぬ人が少なくあってほしい。でもナルサスは死んじゃうんだろうなあ(涙)。

そうそう、シャガード殺されてしまいましたね。
死んでも全然惜しくない人ですが、にしても最後の最後まで中途半端な知恵者っぷり全開で、あまりに空しい人生でした。
一体なんのために顔を焼いたんだ……。




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by teri-kan | 2008-10-21 15:34 | | Comments(0)