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「グインサーガ」

作者の栗本薫氏が先日亡くなられ、未完となってしまった作品。
しかし既に覚悟は出来ていたので、そのこと自体については冷静に受け止めています。

体がお悪いことを知っていたからの覚悟でしたが、おそらくお元気でいたとしても、この作品は彼女が生きている限り未完のままだったような気がします。大往生を遂げられたとしても、彼女の手からこの物語が離れることは決してなかったと想像するので、どちらにしても永遠に完結は来なかったんじゃないかな。

それほどこの話はズルズルズルズル長引かされた作品でした。タイスでのグダグダが何巻も続いた時には、さすがの私も本を床に叩きつけたい衝動にかられたくらいで、気の長い私でさえこの有様なのですから、そうでない方々が「50巻あたりでやめた」「100巻でやめた」と口を揃えるのは当然だろうと思います。

あの方はそう簡単に人生諦める方ではなかったとお見受けするので、もしものために、なんてことは考えなかったかもしれませんが、しかし百数十冊もの本を買い続けてきたファンのために、続きのプロットを残しておくとか、そういったことをしているのかいないのか、その辺は少し気になりますね。
何も残していないのだとしたら、それはまた残念なことだと、ずっとこの作品を読み続けてきた者の一人として悲しく思います。もし何かメモなり何なりの形で残っているのだとしたら、いつかそれをどのような形態でもいいので、発表してもらえたらと思います。


「グインサーガ」の前半は本当に素晴らしい話で、あれを思うと途中からの停滞が口惜しいほどに残念なのですが、こうまで作者と一体になってしまった物語であるなら、それも仕方ないのかなと。
しかしきちんと完結させていたなら、おそらく後々まで読み継がれる作品になっていたのではないかな。

かえすがえすも残念です。




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by teri-kan | 2009-05-30 15:40 | | Comments(0)

ルパンの正しい薦め方

「ルパンを読んでみたい」という方が現れたとして、一体どれを薦めたらルパンの世界により深くハマってもらえるのか。なるべく多くの作品に手を伸ばしてもらうためにはどういう順番で読んでもらうのが一番よいのか。

実はこれは結構難しいと思います。出来れば一作目から順に読んでもらいたいけど、ルパン本は作品ごとに趣が異なるので、万人に対してそれが必ずしも最善とは言えないからです。
かといってランダムに選んでもいけません。一作ごとに事件は解決するとはいえ、どうしても外してはいけない順番というものもあるからです。

以下考察
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by teri-kan | 2009-05-29 10:20 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「エメラルドの指輪」

偕成社「ルパン最後の事件」所収の短編。

アルセーヌ・ルパン話で盛り上がる女性達の中で、やけに彼に詳しい公爵夫人が、友人達に請われて過去のルパンとのちょっとした関わりを話して聞かせるという物語。
事件絡みで知ったルパン(というかバーネットの代理探偵のデンヌリ)の人となりと、その指輪盗難事件のいきさつがとても興味深いお話です。

その過去話ではルパンの底意地の悪さが全開で、読んでて「ロクでもないな、この男」という感想を持たずにはいられないのだけれど、ではその最低男ぶりとはどんなものなのか、思ったことをつらつらと書いてみたいと思います。

恥をさらした女と恥知らずの男
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by teri-kan | 2009-05-28 11:26 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「赤い数珠」

モーリス・ルブラン作の、ルパンが出ていないけれどルパンシリーズに含まれる作品。
理由はこの事件を担当する予審判事が「カリオストロの復讐」に登場するルースランだから。
彼の一風変わったキャラクターがこの事件を上手いこと解決させていくというお話で、約1日の間に起こった出来事を、登場人物の心理状態の変化と共に描いています。


金銭目的の殺しより情痴殺人の方が好きという彼の言葉は、うん、まあ納得。私もそっちの方が好きです。あそこまで下世話じゃないけど、人の感情が織り成す悲劇の方が読んでて楽しい。
そして今回起こる事件はまさしくそういった事件。人の深層心理がふとしたはずみで暴発する衝動を描いている。

「エメラルドの指輪」にちょっと近い雰囲気があるかなー。あの事件をもっと複雑に悲劇的にしたような感じですかね。
自分でも思いもよらなかった行動をとるということは、人間にはままあることで、後から振り返ってみて「ああ、そうだったのか」と行動に納得はするものの、時には取り返しのつかないことになってしまうという、そういった感じ。

とても興味深い出来事で、面白い話ではあるんですが、事件の当事者が皆イマイチ魅力的じゃないのが残念。
極めて普通の人達といえばいいのかもしれないですが、なんていうんですかねえ、皆タテマエの大事な方々ばかりで、暗いものを抱えていながら気取った風なのがちょっとイヤでした。鍵になる女性が、まさにそんな感じの人なんですよねえ。

彼女にも主役ともいえる男性にもまるで共感できなかったのが、うーん、ちょっとって感じ。
読後が爽やかでないのも、そんな印象を持ってしまう原因かもしれません。
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by teri-kan | 2009-05-27 11:04 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「天使と悪魔」(2009)

上手くまとまっていた映画だと思う。
原作のサスペンス性を強調させ、省けるところはバッサリカット。「ダ・ヴィンチ・コード」が粗筋をなぞるだけになってしまったのと比較すると、十分楽しめる娯楽映画でした。

というわけで原作と比較した感想を。





原作も映画も大ネタバレあり
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by teri-kan | 2009-05-26 10:16 | アメリカ映画 | Comments(0)

「ルパン最後の事件」

「カリオストロの復讐」以後の作品です。ですのでほとんど50歳のルパンが出てきます。

原題は「アルセーヌ・ルパンの大財産」、つまり本作に出てくるお宝はルパン本人の財産のこと。
長年かけて貯め込んだお金が狙われてしまうというお話で、初期の作品と比べるとかなり現代風というか隔世の感があります。

事件はなんかわかりにくくて、物語としてもイマイチなんだけど、一つ読みながら「へえ」と感心したのが、ルパンが普通に年を取っていること。見かけじゃなくて、精神的に。

ありゃおじいさんになったら相当偏屈な頑固ジジイになるでしょうね。独善的な性格がかなりやっかいなことになりそうです。
笑ってしまったのは本人が年を取ることをかなり気にしているところ。
あれはビックリしました。
ヴィクトワールに当たらなくたっていいじゃん、ヴィクトワールこそもういい年なんだから労わってあげろよー、と言いたくなるような場面があるのですが、あそこはかなり驚きます。相手が気の置けないヴィクトワールだし、あれって素のルパンなんだろうしね。


物語の舞台が冒頭アメリカだったり、マフィアが出てきたり、かなりそれまでの作品と趣が違うのですが、その一方で前述のヴィクトワールだったり、なんとベシューまで再登場します。
懐かしいですねえ。でも彼は昔の彼ならず。いや、ベシューはやっぱりベシューか。

警察とルパンの関係はこれまでも追いつ追われつ、時に協力しつつ妥協しつつ、年月と共に変わってきているのですが、本作でも大変興味深い一件を起こしています。特にその際の警察側の言い分は一般市民からみれば「そりゃそうだよな」と思われるもので、非常に真っ当であります。今までその手のことで歯噛みした時もあったろうし、警察にしてみれば「今こそチャンス」といったところだったのでしょう。

というわけでルパン、警察に囲まれて万事休すとなってしまうのですが、驚くのはその切り抜け方で、もう既にそれは「怪盗紳士ルパン」ではないというか「なんじゃこりゃ」と呆気にとられてしまうというか、まあ読んでみてのお楽しみとしか言いようがないのですが、ありゃ一体どういうことなんでしょうね。いつまでたっても釈然としないものが残ったままですよ、私(苦笑)。


いろいろと問題の多い作品ですが、女たらしぶりだけは健在で、最後まで恋多き男なのは変わらないようです。
いつまでも精力的な人ですねえ……。


最後だと思われていたこの作品が実はそうではなく、遺作「ルパン最後の恋」が近年発見されたのですが、彼の最後の恋愛が最後の冒険になるのなら、それこそ彼にふさわしいのではなかろうかと思います。
彼の偏屈につきあってあげられる優しい女性だったら老後もまあまあ安泰だろうし、こっちも夢見ながら終われるんですけどね。
(本音言うと孫娘あたりと暮らすのが老人ルパンには一番幸せだと思う。)


早く「ルパン最後の恋」が発表されて翻訳されてほしいものですね。
どんな女性なのかなあ、最後のお相手は。
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by teri-kan | 2009-05-25 10:42 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「天使と悪魔」

只今映画が公開中のダン・ブラウンの原作本。
映画を観にいくにあたって急遽原作を読みました。

本屋に置いてあったアンケート結果があざとくて、あれのせいでどうしても「ダ・ヴィンチ・コード」と比較して読まざるをえなかったのですが、一体あのアンケートは何だったんですかねえ。ああまでして「ダ・ヴィンチ・コード」を貶めないと「天使と悪魔」の映画を見に来てくれそうな人がいなかったんでしょうか。
「ダ・ヴィンチ・コード」の映画は確かにつまらなかったけど、あのアンケートはないわ。商売根性が見え透いていて不愉快の方が勝る。

で、結局本作の感想も比較した感想になってしまうのです。





ほんのりネタバレあり
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by teri-kan | 2009-05-23 23:24 | | Comments(0)

「謎の家」の序文とエピローグ その2・エピローグ

(昨日の続き)

犯罪者ルパンと恋愛か、変装した真っ当な男と恋愛か、という意味で考えると、アルレットの場合は非常に微妙です。
さあ、障害はなくなってこれから自分の心に素直に、と思った時にジャン・デンヌリ=ルパンってこと知っちゃって、エピローグのアルレットの逡巡は、まさしく怪盗ルパンと向きあっている女性の悩ましさなのです。
彼が宝石を盗んだことは知ってるし、それは絶対受け入れられない。愛して許してズルズルいけばお先真っ暗なのは目に見えている。好きになったのはジャン・デンヌリのはずなのに実はルパンだったなんて、どうすりゃいいんだ?の世界の中で、悩みに悩んでいるのです。

あんなに世間に騒がれて、今更「ジャン・デンヌリでっす」といったツラはできないもんだから、実はここのルパンは甘えてるんですよね。「僕、ルパンでもいい?」みたいな感じで。
デンヌリなら自信満々なくせに、ルパンだと堅気のお嬢さんの前で震える少年みたいになってしまうのがこの人の面白いところなんですが、この辺あんまり昔と変わっていないんですね。すごくグズグズしてて、恐々とアルレットに決定権を委ねている。

そんな彼に対してアルレットが賢いなと思うのは、断固として宝石を返させたことと、「デンヌリでもない、あなたはあなた」といった風に肩書き外しちゃって、なおかつ「お友達でいましょう」と宣言したこと。

それでいながら三ヶ月間一緒に旅行したいという、なんかルパンにとっては蛇の生殺し状態になってしまうわけだけど、でもアルセーヌ・ルパンに愛されて、なおかつ彼を好きになってしまった普通の女の子の、それが精一杯の振る舞いなんだろうと思うと、なんか可愛いじゃないですか。
深入りしたくないんですよ、絶対傷つくに決まってるし、傷つく覚悟が出来てるわけでもないし。
でも好きなんですよ。一緒にいたい。だからお友達(笑)。

ルパンもその辺わかっているから、彼女の言うこと全て受け入れて、お友達として旅行に出掛ける。
大人ですねえー、優しいですねえー、さすが紳士!


でも、絶対それで済むはずないだろうとも思うわけで、となるとここで意味を持つのが例の序文の最後の一文、「アルレットの心を征服するため」の戦い。

これってさ、恋敵ファジュローとの闘いだけを指すんじゃなくて、その後の船旅の道中のことも含んでいるんじゃないですかね。

だってまだ征服しきれてないし。
絶対征服するつもりだろうし。
んで、多分征服したと思うんだ。
だってルパンだし。

実際「友達友達、絶対友達!」と主張するアルレットを見ながら、彼女の心の奥を探るルパンの描写もあって、あんなの見てるとなんだかんだでアルレットはルパンの手の内のような気がするのです。見た目下手に出てるのはルパンだけど、やっぱり彼は恋愛の手錬(てだれ)なわけで。

それでも最後まで友達でいられたらアルレットすごいなあ。ていうか、友達のままでいたいなら逃げるしかないと思うんだけどなあ。



ジャン・デンヌリはルパン自身もお気に入りのキャラで、晩年に振り返ってもいい思い出に浸れるみたいだから、どちらにしろいい旅が送れたのは間違いない。
「謎の家」の序文とエピローグは、そんな想像がもくもくと膨らむ内容で非常に楽しい。

ルパンは奥が深いですねえ。いくらでも話が尽きない。
でもやっぱり惚れっぽすぎるよね。「曲がり角を曲がるたびに一目惚れを繰り返してる」っていうのはあながち間違いじゃなくて、こうして冒険談として本になった以外でも山のように恋愛してるんだろうなと思います。
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by teri-kan | 2009-05-22 10:17 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「謎の家」の序文とエピローグ その1・序文

「謎の家」の冒険を世間に発表するにあたって、ルパン本人が序文でいろいろ語っているのですが、あの底知れない恋愛パワーの謎は、本人曰くそれぞれ別人格で恋しているからなんですね。
例えば「ルパンの冒険」のシャルムラース公爵は後にも先にもソニアしか愛してないし、「緑の目の令嬢」のラウール・ド・リメジーもオーレリーしか愛してない。
彼らはアルセーヌ・ルパンではなく、あくまで彼らなんだそうで、だからその魂の全てをかけたような恋愛を連続して何度も行えるんです。

へえーなるほどーって感じです。
だからオーレリーのために一緒に死のうとか考えることができたのかあ。


となると、アルセーヌ・ルパン名義の恋は、実は思っていたよりもかなり少なそうです。
だってドロレスでさえポール・セルニーヌ公爵名義の恋なんだそうで、そうなるとフロランスの相手だってルパンじゃなくてドン・ルイス・ペレンナなんですよ。

と考えると、大体次の方達にしぼられるのです、アルセーヌ・ルパン本人と恋愛した女性達。

「ルパン対ホームズ」のクロティルド、「ルパンの冒険」終盤以降のソニア、「奇岩城」のレイモンド、後はうんと晩年のフォスチーヌ・コルチナとパトリシア。

晩年のお二人は置いておくとして、前期の彼女らに共通しているのは、ルパン本人とつき合ったばかりに彼の泥棒稼業にどっぷり自分自身も浸かってしまったこと。平たくいえば共犯者だったということです。そのため末路が皆悲惨。

ソニアはまあいいでしょう。彼女はある意味ルパンと同類。
気の毒なのはクロティルドで、泣きながらルパンに協力してたってのが哀れ。やりたくないことを嫌々やらされてるわけじゃないってところが女の業深さで、彼女はかなり悲しい。

最も特殊なのはレイモンド。彼女だけが最初からアルセーヌ・ルパンとしての彼と出会ってる。
だからでしょう、ルパンに「泥棒やめてくれ」と強く言えたのは。最初から正体を知っていた者の強みというか、唯一彼女だけがルパンの表と裏の顔の違いに振り回されることがなかった。


というように、他の誰でもないルパンそのものと恋愛してきた方達を振り返ったところで、「謎の家」のエピローグに移ります。
「謎の家」のアルレットは、あの時期のヒロインとしては珍しく“ルパン”に出会ってしまった女性で、彼女の言動はなかなか面白いのです。


(続く)
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by teri-kan | 2009-05-21 10:24 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)

過酷なスラムの現実と、現実ではありえない夢物語が混然一体となった物語。
ある意味今のインドを象徴するような作品なんだと思います。あそこにはそういった諸々全てが存在しているのでしょう。それがパワーを生んでいる。

子役がとにかく可愛い。イキイキしてたなあ。
そして最後はやっぱり踊るんですね(笑)。さすがインドが舞台の映画だ。

ネタバレあり
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by teri-kan | 2009-05-20 10:27 | イギリス映画 | Comments(0)