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「緑の目の令嬢」

パリの大通りをプラプラ散歩してたら怪しいポマード男に尾行される青い目の美女を発見。
彼らの後をつけ、同じようにカフェに入ってさりげなく観察していると、その美女の他にもう一人、なんとも美しい緑の目をした魅力的な女性が目に飛びこんできたのです。
どっちの美人がいいかな、カフェを出たら青と緑、どっちの後をついて行こうかなー。
そんなヨコシマな考えを持ったところから変な事件に巻き込まれてしまうというアルセーヌ・ルパンのお話です。

こんなスタートだからというわけでもありませんが、このお話は一貫してこんな調子。ルパンの足が1㎝くらい地から浮いてるような、そんなフットワークの軽さと洒落と妙味がある。
粋な伊達男ルパンの本領発揮ともいうべき作品の一つです。


本作は現在ではルパン三世の映画「カリオストロの城」の元ネタとしての知名度の方が高いのかもしれません。有名な例のお宝のことです。
でもそれ以外でも本作のルパンと似てるなあと思われるところがあるので、その辺をちょっと整理してみます。







・女で失敗する

女に弱いのはもうどうしようもないのですが、「緑の目の令嬢」で一番「アホだなールパン」と思うのは、彼が列車で眠りにつく場面。
瞼を閉じると澄み渡った青と深い緑をたたえた幸福な世界に彼は誘われます。ようするに出会った美人二人の瞳を思い浮かべてウットリしているわけですが、そのために用心を怠り、なんと強盗にグルグル巻きにされてお財布を取られてしまうのですよ。
さすがあの孫の祖父。妄想が孫よりも上品なだけでやられるパターンは同じです。

・容赦ない敵へのおちょくり

警察をからかう台詞はさすがです。この台詞の使い方にはルブラン上手いなーと感心するのですが、特にお気に入りなのは列車の中での置き手紙っぽく書いたやつ。シャレと皮肉のセンスが最高です。

・無報酬での人助け

陰謀の渦中にあって苦しむ女性と、彼女をとことん助ける男性、という構図はそもそも一緒。特に本作の湖での一件なんてルパンすごすぎカッコよすぎ。それまでは終始軽かったのに、ここだけはハードな男の世界です。(うー、詳しく書けないのがもどかしい。)


で、例のお宝ですが、初めて本作を読んだ時、実はそのすごさはあまりわかりせんでした。
当時はせいぜい石造りの建物がちょっと出てきた、くらいのイメージしか思い浮かべることができなかったのです。

それを初めて正しく理解できたのがTVで観た「カリオストロの城」。
水がひいていく様子もその後に現れた光景も、どれも想像を遥かに超えたスケールで、最初は何が何だかわからなかったくらいでした。
クラリスの台詞でやっとこれが何なのか理解できた有様で、その時になって初めて「ん?これは読んだことがあるぞ」と思い出したのです。

「これがあのことか」と合点がいった時の感動はすごかったです。
プロがビジュアル化したものはさすがですねえ。あんな素晴らしいものを見せてくれて大感謝。

でもそのせいで今読んだらその場面で「カリオストロの城」の風景が音楽付で頭の中を流れます。お宝の風景はともかく、音楽が流れてくるのがちょっと困る。
よく読んだら両者は微妙に違うんですけどね、映画のインパクトはやはり強いです。
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by teri-kan | 2009-04-17 09:58 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)

本や映画、もろもろについて思った事。ネタバレ有。


by teri-kan
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