「ルパン最後の事件」

「カリオストロの復讐」以後の作品です。ですのでほとんど50歳のルパンが出てきます。

原題は「アルセーヌ・ルパンの大財産」、つまり本作に出てくるお宝はルパン本人の財産のこと。
長年かけて貯め込んだお金が狙われてしまうというお話で、初期の作品と比べるとかなり現代風というか隔世の感があります。

事件はなんかわかりにくくて、物語としてもイマイチなんだけど、一つ読みながら「へえ」と感心したのが、ルパンが普通に年を取っていること。見かけじゃなくて、精神的に。

ありゃおじいさんになったら相当偏屈な頑固ジジイになるでしょうね。独善的な性格がかなりやっかいなことになりそうです。
笑ってしまったのは本人が年を取ることをかなり気にしているところ。
あれはビックリしました。
ヴィクトワールに当たらなくたっていいじゃん、ヴィクトワールこそもういい年なんだから労わってあげろよー、と言いたくなるような場面があるのですが、あそこはかなり驚きます。相手が気の置けないヴィクトワールだし、あれって素のルパンなんだろうしね。


物語の舞台が冒頭アメリカだったり、マフィアが出てきたり、かなりそれまでの作品と趣が違うのですが、その一方で前述のヴィクトワールだったり、なんとベシューまで再登場します。
懐かしいですねえ。でも彼は昔の彼ならず。いや、ベシューはやっぱりベシューか。

警察とルパンの関係はこれまでも追いつ追われつ、時に協力しつつ妥協しつつ、年月と共に変わってきているのですが、本作でも大変興味深い一件を起こしています。特にその際の警察側の言い分は一般市民からみれば「そりゃそうだよな」と思われるもので、非常に真っ当であります。今までその手のことで歯噛みした時もあったろうし、警察にしてみれば「今こそチャンス」といったところだったのでしょう。

というわけでルパン、警察に囲まれて万事休すとなってしまうのですが、驚くのはその切り抜け方で、もう既にそれは「怪盗紳士ルパン」ではないというか「なんじゃこりゃ」と呆気にとられてしまうというか、まあ読んでみてのお楽しみとしか言いようがないのですが、ありゃ一体どういうことなんでしょうね。いつまでたっても釈然としないものが残ったままですよ、私(苦笑)。


いろいろと問題の多い作品ですが、女たらしぶりだけは健在で、最後まで恋多き男なのは変わらないようです。
いつまでも精力的な人ですねえ……。


最後だと思われていたこの作品が実はそうではなく、遺作「ルパン最後の恋」が近年発見されたのですが、彼の最後の恋愛が最後の冒険になるのなら、それこそ彼にふさわしいのではなかろうかと思います。
彼の偏屈につきあってあげられる優しい女性だったら老後もまあまあ安泰だろうし、こっちも夢見ながら終われるんですけどね。
(本音言うと孫娘あたりと暮らすのが老人ルパンには一番幸せだと思う。)


早く「ルパン最後の恋」が発表されて翻訳されてほしいものですね。
どんな女性なのかなあ、最後のお相手は。
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by teri-kan | 2009-05-25 10:42 | アルセーヌ・ルパン | Comments(0)
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